呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#1960年代

サムライ

2017/3/18鑑賞 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル 冒頭のシークエンスを始めとして、(照明による)アラン・ドロンの身体に常にくっきりとした輪郭が出ている点が見事だった。 しかし劇伴と、ズームの活用が古びていて残念だ。 金を手渡すのか?という場面…

セックス・チェック 第二の性

2017/3/7鑑賞 監督:増村保造 一流のスプリンターにするために、お前を男にしてやる。明日から髭を剃れ!そしたら生えてくる! ⇒ セックスチェックに引っかかっただと。なら、お前を女にしてやる!毎晩お前を抱いてやる! こんな滅茶苦茶な話を極めて真面目…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開されるので、見ていると異様な感覚になってくる。 脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』…

女体

2016/11/12鑑賞 監督:増村保造 スーパーメンヘラ劇場だった。浅丘ルリ子がファーストショットでいきなり机に爪を立ててガリガリ! 角をかじってガジガジ! 人工的でポップな役者たちがいい。マジで目先の欲望にしか関心がなくて、徹底的に自分の欲望のまま…

2016/2/7鑑賞 監督:三隅研次 原作が三島由紀夫で、主演が市川雷蔵。三島らしく実よりも美学を取るストーリーと、どんな脚本でも美にこだわる三隈研次という感じで相性が良さそう。 一言でいえば、日本の狂った体育会系(剣道部)がひたすらに怖いという映画…

華氏451度

2012/7/22鑑賞 監督:フランソワ・トリュフォー 自分が初めて見たトリュフォーだけど、なんだこのヒッチコックは、というぐらいヒッチコックの模倣ばかりで出来ていて吃驚した記憶がある。 撮影監督にニコラス・ローグ。 スピルバーグが『マイノリティ・リポ…

斬る

2014/2/12鑑賞 監督:三隅研次 人間が縦に真っ二つになる場面がある。 1時間ちょっとで男の一生を語っているためか、説話がとても奇妙なものに感じられる。 三隅研次らしい前衛的なオープニングで始まったかと思いきや、前半は馬鹿みたいなホームコメディが…

殺しの烙印

2018/1/19鑑賞 監督:鈴木清順 映画前半は、ラフに撮られたカットと、人工的にきっちり決めたカットが混在していて楽しい。同じようなカットを使わないためにひたすらアイデアを尽くしているところもいい。次のカットがとにかく読めなくて、例えば、スピンし…

ワン、ツー、スリー/ラブハント作戦

2019/01/27鑑賞 監督:ビリー・ワイルダー コカ・コーラ西ベルリン支社長(ジェームズ・キャグニー)は驚愕する。社長から預かったアバズレ娘が東ドイツのコミュニストと結婚していたことが判明したからである。しかもコカコーラ社長夫妻がそこにやってくる…

空飛ぶ生首

2015/12/4鑑賞 監督:バート・I・ゴードン 主演女優がどちらも下品で、特に最初に死ぬほうが巨乳で怪しいので、なんというか序盤が一番B級映画としては艶があったな。この女優が死んでからは子役の女の子が頑張ります。 ちなみに、生首は空を飛ばないし、主…

召使

2016/9/11鑑賞 監督:ジョセフ・ロージー すごいな。狭いはずの室内で、フレーム内フレームを駆使し、人間の顔をカメラ近くに置き、階段や鏡を使って、バロック的に豪華絢爛で広大な空間を造形している。 召使と主人のパワーバランスの変化が見どころ。最後…

昼顔

2016/11/6鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 傑作。光に対する感覚が素晴らしい。例えば、わずかに陽光を浴びて黄金色をまとう雪の白さ、その美しさ。 若く美しい人妻(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、淫靡な妄想を繰り返し、やがて娼婦になるという話。画面外から…

赤い天使

2014/7/6鑑賞 監督:増村保造 優しいがために股が緩くなってしまう若尾文子による変態プレイ集。 川津祐介は腕がなく、芦田伸介は縛られる。足を股に挟み、軍服を着てブーツを履かせる。男女が逆転すると、腕ではなく足がメインになるということか。この映画…

高校

2018/8/14鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン クローズアップがかなり多くて、教師と生徒の肉体的な差を観察・対比させるような映画だった。教師の禿げ頭のあとに、音楽に合わせて体操する女生徒の下半身をなめるように撮ったり、醜い眼鏡の女教師と対比し…

女の中にいる他人

2016/6/29鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の撮った人殺しの映画。 ぽつんと都市部の車道沿いを歩くスーツ姿の男がタバコをくわえると、カッティングインアクションでどこかのダイナーに飛んで環境音が消えるが、男はまったく同じように生気がない。つまり、外部…

しとやかな獣

2013/9/15鑑賞 監督: 川島雄三 (ほぼ)全員悪人。守銭奴一家の住まう団地で繰り広げられる、金と性との暗黒喜劇。 尋常ではない構図、尋常ではないパンフォーカス、尋常ではないフィルムの発色。 どうして面白い構図になるかと言えば、基本的に手狭な中で…

去年マリエンバートで

2014/3/24鑑賞 監督:アラン・レネ ある男が、ある女に「去年会いませんでしたか」と持ちかける。それが捏造されたものなのか、見たくない過去だから忘却しただけなのか、あるいはその両方なのか。 モブや、時には主演の二人さえ自動人形のように見えるのは…

大列車作戦

2014/11/21鑑賞 監督:ジョン・フランケンハイマー 画面に奥行を持たせ、そこに様々な人間を歩かせ、作業させて画面を豪華にしようという思想が垣間見え、室内にも大きな窓を配置する。 空爆シーンを大俯瞰で見せてくれるし、その際にも野外セットを豪快に粉…

春の劇

2016/11/21鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ パンフレットによれば「16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリャで上演されるキリスト受難劇の記録」らしい。延々と毎年毎年、復活祭にこの劇が演じられてきたというのは正直信じられない思い。…

大菩薩峠

2014/6/9鑑賞 監督:三隅研次 繰り返し映画化されているが、これはいわゆる「大映版」。 闇討ちの場面で、市川雷蔵が刀を抜くと身体はシルエットになり、代わりに刀が光る。見たとおりの邪剣。 また、霧とセットが物凄いが、セットを見せるための広い構図や…

座頭市血煙り街道

2014/6/4鑑賞 監督:三隅研次 勝新の殺陣の荒唐無稽さがよくわかる一本。段差に転げながら斬る、柵越しに斬る。 ラストの近衛十四郎との殺陣の途中に、木の骨組みに引っ掛かって一回転後ろにひっくり返ったかと思えば、刀の先から血が流れてきて、近衛十四郎…

足にさわった女

2016/2/5鑑賞 監督:増村保造 なんなんだろうな、この出鱈目な脚本。原作は何回も映像化されているらしい。あえて言うなら刑事と掏摸のスクリューボールコメディかな。 足にこだわるのは最初と最後だけ。両足に手錠をかけたりする、最後のかけあいなんかはと…

できごと

2018/03/19鑑賞 監督:ジョセフ・ロージー 面白かった。 冒頭、事故で横転した自動車をガラス張りの箱として扱い、そこに動かない人間が詰め込まれているといった感触の撮り方。ショーウィンドウのマネキンを転がしたような独特の不気味さがあった。 トラウ…

新選組始末記

2017/1/13鑑賞 監督:三隅研次 まことに贅沢ながら、三隅のベストラインから比較すると陰影や人工性など、ショットが弱いと感じてしまう。けど、面白かった。三隅で実録ものって新鮮だな。 容易に男女を見つめ合わせたくないという演出方針が見える。最初の…

顔のない眼

2016/7/8鑑賞 監督:ジョルジュ・フランジュ 画面で起きていることもさほど多くなく、この脚本のテンポは辛かった。 詳細な皮膚移植手術をかなり直接的に映すところや、失敗した顔面が時間とともに崩壊していく記録写真の場面など趣味嗜好を表現するところは…

ビリディアナ

2016/10/6鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 俗っぽくて、見やすいブニュエル。 脚から見せるカットが続くなと思ったら、ちゃんとビリディアナが脱ぐ、脚フェチショットが入る。 聖と俗の対比があちこちにあって、祈りの場面と、家を改築する工事のドロドロぐち…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 見ていると異様な感覚になってくる。姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開される。脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』を思…

乱れ雲

2018/3/26鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の遺作。 『ひき逃げ』と同じく、交通事故がひとつのキーになっている。 葬式で司葉子と初めて会ったあと、出ていこうとする加山雄三に追いすがり睨み付ける司葉子。あるいは、夫との関係は続けられないということでカー…

ひき逃げ

2018/3/11鑑賞 監督:成瀬巳喜男 子供をひき逃げしたが、夫に説得されてその事実を隠蔽した女性(司葉子)と、それを暴くために家政婦として潜入する子供の母親(高峰秀子)の対決?を描いた映画。 高峰秀子が 酔っぱらって踊る場面での大きく揺れるカメラ。…

清作の妻

2016/9/6鑑賞 監督:増村保造 増村は大好きな映画監督だし、世評の高い映画ではあるけど、これは嫌い。 抑揚・間のある増村らしくない演技が頻発し、常に辛気臭い音楽が鳴り続けている。白と黒のコントラストは微妙だが、構図はそれなりの水準。 増村の映画…