呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

2021-02-05から1日間の記事一覧

トールマン

2013/12/9鑑賞 監督:パスカル・ロジェ 面白い。ジェシカ・ビールが冒頭でお岩さんのように傷だらけになっていて、作中でもやっぱり傷を負うんだけど、何度傷を負っても冒頭の怪我になかなかたどり着かないという焦らしで引っ張る。工夫されたシナリオでも引…

暗黒街の顔役

2013/12/9鑑賞 監督:ハワード・ホークス ちょっとサイレント映画を引き摺っているようなオーバーアクトが目につくものの、すこぶるかっこいい。 妹と喧嘩する場面でのレースカーテン越しの斑の陰影、襲撃されて床屋で電話する際の真っ黒に塗りつぶされた身…

死霊のはらわた

2013/11/7鑑賞 監督:サム・ライミ ロバート・キャンベルの濃い顔が本作を支えている(と言えば多分サム・ライミの多くの映画がその過剰さに見合った顔の俳優に支えられているのかもしれないが)。 ただ本作の過剰な多視点と妙な構図からは、映画小僧として…

しとやかな獣

2013/9/15鑑賞 監督: 川島雄三 (ほぼ)全員悪人。守銭奴一家の住まう団地で繰り広げられる、金と性との暗黒喜劇。 尋常ではない構図、尋常ではないパンフォーカス、尋常ではないフィルムの発色。 どうして面白い構図になるかと言えば、基本的に手狭な中で…

民衆の敵

2013/9/4鑑賞 監督:ウィリアム・A・ウェルマン 現代劇としてのギャング映画というものをどういう気分で当時の観客が見たのか気になる。 野獣的な怒りと女性的な美を一身に宿しているキャグニーは稀有な俳優だ。拳で相手の頭に触れる仕草が癖になる。仇敵を…

崖っぷちの男

2013/8/15鑑賞 監督:アスガー・レス 発想の勝利と言うべきか、脚本の勝利と言うべきか、これはどう撮っても面白くなるだろう。ワンシチュエーションもので、リアリティやもっともらしさについてはある程度割り切っていて、それが功を奏しているように見える…

エンジェル ウォーズ

2013/6/6鑑賞 監督:ザック・スナイダー 冒頭5分の導入部は申し分無かった。しかしそれ以降は、良くも悪くもエミリー・ブラウニングという役者を好きになれるかどうかにかかっていると思う。 彼女はアビー・コーニッシュと役柄を変わるべきだったんじゃない…

リング

2013/6/6鑑賞 監督:中田秀夫 脚本の高橋洋本人も認めている通り、最後の貞子登場シーンは完全に失敗している。あれは照明がダメだろう。なにより怖くない。あれなら冒頭で死んでいた女の子の方が怖いんじゃないか。 一方で、ビデオの方は成功していると思っ…

女優霊

2013/1/10鑑賞 監督:中田秀夫 とにかく、ラッシュを観る場面が悉く怖い。霊の来歴を調べても、そもそも出自からして架空の存在で、いるはずのない女だというのが怖いし、未現像フィルムの映像は彼が最後に観る光景だったという凄まじさ。 あとは、ホラー映…

L.A.ギャングストーリー

2013/12/108鑑賞 監督:ルーベン・フライシャー 一夜漬けのギャング映画知識で撮ったかのような軽さ。ライアン・ゴズリングの軽薄さ。コミックキャラのようにペラペラなキャラクターたち。あのスローモーションは、スタイリッシュではない。重力から解放され…

イーグル・アイ

2013/12/22鑑賞 監督: D・J・カルーソー (今回は製作総指揮だが)スピルバーグの大好きなヒッチコック流巻き込まれ映画。この監督は『ディスタービア』でもヒッチコックをやっていた。 荒唐無稽なマクガフィンを撒き散らして、ミッドポイントで謎を明かし…

恐喝(ゆすり)

2014/1/22鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック アニー・オンドラがヒッチコック女優の中でもトップクラスに美しい。 ヒッチコックはサイレント時代から音に溢れているが、トーキー第一作だけあって音に対する目配せが至る所にある。 ピアノ、口笛、鼻歌、…

男の敵

2014/2/11鑑賞 監督:ジョン・フォード 霧の街で繰り広げられる一夜の映画として、まずは単純に美しかった。 マーゴット・グラハムがブロンドの髪を露わにする瞬間とか、その髪が風に揺れる様とか、その彼女の顔にタバコの煙が吹きかけられるところとか。 ウ…

2014/4/9鑑賞 監督:ルイス・マイルストン 鮮烈。のっけから凄い。雨中の行軍シーンに至るまでの執拗な畳みかけ。雨雲と砂浜、井戸、葉に叩き付けられる雨粒がモンタージュされる。 南国の家屋の奥から子供が走り出してくるだけで心躍らずにいられないのはな…

去年マリエンバートで

2014/3/24鑑賞 監督:アラン・レネ ある男が、ある女に「去年会いませんでしたか」と持ちかける。それが捏造されたものなのか、見たくない過去だから忘却しただけなのか、あるいはその両方なのか。 モブや、時には主演の二人さえ自動人形のように見えるのは…

TAKESHIS'

2015/6/25鑑賞 監督:北野武 劇中劇の銃撃戦に見られるように、静から動に移る居合じみた編集は相変わらずカッコいい。 『去年マリエンバートで』みたいに違う時間軸の映像が現在を貫いて出てくるような編集も最初はよかった。 美輪明宏とすれ違うところの複…

アポロ13

2016/1/30鑑賞 監督:ロン・ハワード バストショットばかりだが、ハードボイルドに徹する宇宙飛行士とNASA職員たちの描写、そしてフィクションならではの価値観の反転を備えていることで名作足りえている。 注目されないフライトであることは、発射成功…

ミラーズ・クロッシング

2015/1/3鑑賞 監督:コーエン兄弟 『血の収穫』的な物語をコーエン兄弟流の偶然に委ねている。望遠ショット多め、ギャグ少な目の硬質な作りが、逆にこのジャンルの分厚さに負けてしまうのではないか。もっとコーエン兄弟の領分で戦った方がいいのではないか…

ヘイル、シーザー!

2016/5/25鑑賞 監督:コーエン兄弟 ウェス・アンダーソン一歩手前の、本当らしくない人工的な造形で、共産主義もキリスト教も映画愛もみな同じ麻疹みたいなものという構図の中、疲れた職業意識から僅かに映画を擁護するというコメディ。 笑いどころの劇中作…

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2017/4/4鑑賞 監督:モルテン・ティルドゥム タイトルはそのまんまアラン・チューリングのimitation gameから採られている。idiot savantもので、いい素材を見つけてきて、よく組織している。WWⅡ、英国、情報部、暗号解読、アラン・チューリングというネタ…

ダーリン・イン・ザ・フランキス

鑑賞日不明 監督: 錦織敦史 設定的には、ATフィールドのないエヴァという感じで、最初の方はエヴァ第9話「瞬間、心、重ねて」を反復し、掘り下げていくようなシリーズになるのかなと思った。実際序盤は概ねそういう感じだった。 面白いと思ったのはパー…

大列車作戦

2014/11/21鑑賞 監督:ジョン・フランケンハイマー 画面に奥行を持たせ、そこに様々な人間を歩かせ、作業させて画面を豪華にしようという思想が垣間見え、室内にも大きな窓を配置する。 空爆シーンを大俯瞰で見せてくれるし、その際にも野外セットを豪快に粉…

ドロメ 女子編

2016/11/16鑑賞 監督:内藤瑛亮 全体としては【女子編】のほうが単体の作品としてよくまとまっていて、【女子編】に残った謎が、【男子編】で解かれる内容になっているので、【女子編】→【男子編】という順番で見ていくのがいいと思われる。 まず、全体の感…

続きをしよう(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:内藤瑛亮 墓場で子供が鬼ごっこをしていたら、次々と怪我をしてしまうというストーリー。 怪我をした子が、まるで嫌な飲み会から抜けるかのようにいい笑顔で「じゃ、これで」と去っていくのでコメディのような雰囲気が漂う。そして、怪…

救済

2016/11/8鑑賞 監督:内藤瑛亮 青山シアターのウェブサイトで有料で見た。 いじめられていて家庭環境も最悪な少女が拳銃を拾う、という話。 物凄く禍々しい自然光と銃撃が見られる。川に投げ込まれたものを服を着たまま取りに行く行動を撮ることで執着を示す…

ライチ☆光クラブ

2016/11/8鑑賞 監督:内藤瑛亮 原作漫画は既読だが、こんなの映画になるのか?という内容だったので不安だった。そして、不安が的中してしまった感じ。演劇やミュージカルなら映えそうな内容だが。 この人はロケ撮影をした方が絶対にいいと思う。

犯罪王ディリンジャー

2017/4/20鑑賞 監督:マックス・ノセック なんでデリンジャーがガスを使うんだ? めっちゃフリッツ・ラングっぽい画面だなと思っていたら『暗黒街の弾痕』からのフィルムの流用だった。 デリンジャー役のローレンス・ティアニーはベン・アフレックに似ている…

ティアーズ・オブ・ザ・サン

2017/2/2鑑賞 監督:アントワーン・フークア 虐殺の続くナイジェリアで、アメリカ人女医を救出するミッションを受けたネイビーシールズの部隊が、倫理的に正しいことをしようとするために地獄を見ることになる映画。贅沢でよかった。『虐殺器官』的風景が見…

不能犯

2018/2/3鑑賞 監督:白石晃士 すごく言語的でつまらなかった。見た範囲では白石晃士のワースト作。

ミッション:インポッシブル/フォールアウト

2018/8/3鑑賞 監督:クリストファー・マッカリー 単純にアクションの造形を見ているだけでも、非常に面白かった。ワンシーンワンカットのHALO降下は『トゥモロー・ワールド』の長回しの応用としては最も馬鹿馬鹿しく面白いアイデアではないだろうか。耳鳴り…