呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#1970年代

仁義の墓場

監督:深作欣二 すごい映画だった。 この世に何一つ良いことをもたらしていなさそうなヤクザ男が、触れるもの全てを(主に不幸にもこの男に関わってしまったヤクザ達を)傷つけていく。 人の家(というかヤクザの家に)に上がり込んできて、背中まげて俯いて…

砂漠の流れ者

2016/8/26鑑賞 監督:サム・ペキンパー 仲間に裏切られて水を奪われ、砂漠を放浪したケーブル・ホーグという男がたまたま水源を見つけて救われ、そのままその水源の土地を買い、それを足掛かりにして家を建て、ビジネスを始め、娼婦を妻にしようとする。胡散…

ルドガー・ハウアー/危険な愛

2016/3/24鑑賞 監督:ポール・バーホーベン セックス狂いの男エリックは、外に出るなり女にちょっかいを出し、すぐに自宅に連れて帰っているハメるという毎日を繰り返していたが、ある日赤毛のモデルと出会い、彼女とのカーセックス及び事故に至る運命的な出…

霊長類

2016/9/21鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン 動物実験を扱ったドキュメンタリー映画。 亜人種に感情移入するのは簡単なので、猿の脳に電極埋めて電気信号で交尾させたり、解体したりするのを見ているとヤバい。猿の鳴き声がだんだんと悲鳴とか怒号のよう…

メイク・アップ 狂気の3P

2017/7/4鑑賞 監督:ピーター・S・トレイナー 『ノック・ノック』の元ネタと聞いて。 『ファニーゲーム』とか『ある戦慄』みたいな、突然現れた二人組に市民がひたすら凌辱される趣向の映画で、その二人組がどちらも若い美女だという点が本作の、強いて言え…

サンゲリア

2016/7/26鑑賞 監督:ルチオ・フルチ めっちゃくちゃかっこいい。 あの薄ぼんやりとした日中にぬけぬけと出てくる灰をかぶったようなゾンビたち! 水中でサメと戦うゾンビ! 眼球をえぐられる女性! ゆっくりとゾンビたちが村に湧き出てくるところ! この名…

ザ•ブルード/怒りのメタファー

2015/10/23 監督:デヴィッド・クローネンバーグ そういう鑑賞方法は品がないと思うが、妻と離婚訴訟中+子の親権争い中というクローネンバーグのプライベートな事情がモロに出ているので、作中に出てくるラグラン先生の「怒らせるなよ」が大変笑える。ただ…

10番街の殺人

2016/1/8鑑賞 監督:リチャード・フライシャー リチャード・アッテンボロー扮する「絞殺魔」と、その犠牲となった若夫婦のお話が基本的な本筋。『絞殺魔』とか『静かについて来い』とか、こういうの好きよねフライシャーって。 なお、女性を横たえようとする…

こわれゆく女

2014/12/4鑑賞 監督:ジョン・カサヴェテス 言わずと知れた傑作で、すごかった。舞台劇を間近で見ている感じがあり、被写体に遅れてピントが合うところなどが猶更そういった印象を強めている。 フレーミングと役者の動きがともに自由だが、ジーナ・ローラン…

ハロウィン

2014/2/26鑑賞 監督:ジョン・カーペンター 人がよく歩き、電話がよく鳴る映画。殺しの場面はどちらかと言えば女優を見せるためのサービスシーンという趣きだ。 ブギーマンは『悪魔のいけにえ』のレザ―フェイスと違って、幼少時の1回と、マスクを剥がされて…

恐怖女子高校 女暴力教室

2016/09/29鑑賞 監督:鈴木則文 OPからかっこいい。めいめいが異なる不良を働いている教室のカタログ的な場面、放課後に狭い縦構図の公衆トイレで着替える女子高生たち、そこにかぶさる赤いクレジット。 起きていることは下品そのものだが、音楽は途中で断…

ノスフェラトゥ

2013/9/26鑑賞 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 人間の顔を白く浮かび上がらせる極端な照明が、古典映画の表現への懐古というだけでなく審美的に、長回しの中でも崩れることなく映画を支え切っている。 イザベル・アジャーニは鏡に映らず入ってきた吸血鬼を…

突破口!

2013/7/24鑑賞 監督:ドン・シーゲル 傑作。冒頭の銀行強盗シーンでいきなり引き込まれる。 何やら牧歌的で、太陽の逆光を多用する審美的なショットから始まったかと思えば、看板を映すカメラがクレーン移動して、自動車が入って来るなり銀行強盗シーンが始…

テレフォン

2013/5/31鑑賞 監督:ドン・シーゲル 電話で怪しげな詩を聞かされた一般市民が、催眠術にかけられたように軍事施設に攻撃をしかける事件が連続する。調査すると彼らはソ連に留学した経験があった......という冷戦時代らしい内容のアクション、サスペンス映画…

見えない恐怖

2016/2/3鑑賞 監督:リチャード・フライシャー 叔父一家で暮らす盲の少女がある日帰ると、一家が惨殺されているのだが、盲なので気がつかないというアイデアで撮られた映画。 ちなみに殺人犯はブーツを履いた足だけが映される。足だから表情はない。 発見さ…

キャリー(1976年)

2013/5/26鑑賞 監督:ブライアン・デ・パルマ デ・パルマのことは好きではないが、これは楽しめた。 こんなに大味で、下品で、本当にいいのだろうかと思いながらも何故か楽しめるのは、この人の演出の持ついかがわしさがこの映画では魅力になっているからだ…

湖のランスロ

2016/10/31鑑賞 監督:ロベール・ブレッソン めちゃくちゃ面白かった。アーサー王伝説の話なんだけど、いきなり騎士の首がチョンパして切断面が見えるわ、血がドバドバ出るわ、で即物的な中世残酷絵巻になっている。また、史劇という大きなものを、小さな形…

悪魔の沼

2016/12/14鑑賞 監督:トビー・フーパー トビー・フーパー全開といった調子。展開にもうちょっとメリハリが欲しいけど、異様な質感の映像だった。ほぼセットでの撮影ということもあって、人工性が強く出ている。 妙な電子音楽が流れたり、悲鳴があちこちであ…

ザ・シャウト/さまよえる幻響

2016/8/27鑑賞 監督:イエジー・スコリモフスキ ある精神病院にやってきた男が、患者たちのクリケットを見ながら、声で人を殺せると宣言する男の話を聞く。その話とはこうだ。とあるオルガン弾きの男のところに、18年間暮らしたオーストラリアで魔術を覚え…

ファミリー・プロット

2013/12/4鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック インチキ霊媒師を演じるバーバラ・ハリスがとにかく可愛い。霊媒に、麻酔注射に、ダイヤ発見に、とにかく演技をする女で、猛禽めいた可愛さ。 ヒッチコックは拳銃を固定させて使い、役者に自由な取り回しを…

パララックス・ビュー

2016/3/17鑑賞 監督:アラン・J・パクラ パラノイア映画らしい細部のなさと、人工的なショットの数々(撮影がゴードン・ウィリスなので陰影バキバキのすごい画面が続く)、そこに粗野な刑事ものの雰囲気を混ぜたような印象。70年代アメリカ映画ってこうい…

御用牙

2016.10.25鑑賞 監督:三隅研次 オープニングはスプリットスクリーンから始まる。実験好きな人なのでこういうことをやるのに違和感はないけど、初めて見るような気がする。他でやったことはあるのだろうか。 オープニングのつづき。画面右から左へざっざっと…

女王陛下の戦士

2016.9.28鑑賞 監督:ポール・バーホーベン 148分版を見た。傑作『ブラックブック』の雛形ではあるが、どこか青春群像的なところがあり、ストーリー展開はバーホーベンにしてはややとっ散らかっていてあれほど面白くはない。単純に女王陛下という存在を据…