呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#1950年代

拾った女

2022/1/15鑑賞 監督:サミュエル・フラー 前科3犯のスリ、スキップ・マッコイはNYの地下鉄でキャンディという娘から金入れをくすねるが、実はそれは赤色スパイの依頼で運ばれていた機密フィルムで、張り込んでいた警察と、知らずに運び屋になっていたキャン…

最前線

2016/10/2鑑賞 監督:アンソニー・マン 独特の斜面に、歩兵たちがへばりついて動かないところをゆっくり白煙だけが移動していって、カメラがそれについていく。わくわくするオープニングである。 歩兵ものの有名作ということで、実際、視線はとても低くて全…

雷鳴の湾

2017/1/8鑑賞 監督:アンソニー・マン 石油採掘事業の話で、出資をとりつけるところから始まるので実質ベンチャー企業物語なところはある。石油採掘よりも、むしろ沿岸でエビ漁をやっている住民との確執や、その町娘とのメロドラマにスポットが当たり、スト…

泥棒成金

2014/3/4鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック ブルーレイで見たら、驚異的な画質にびっくりした。 50年代のカラー映画がこんなにくっきり見えることなんて経験したことがなかったので、そういう意味でもびっくりなのだが、それ以上に映画自体がくっきり…

恐怖の土曜日

2017/4/6鑑賞 監督:リチャード・フライシャー とても視覚的な映画で素晴らしかった。 フランス版ではフリードキンがこの映画について語っているらしい。今回はポニーキャニオンから販売されたブルーレイで見たのだが、ものすごく解像度が高くてディティール…

あに いもうと

2017/7/25鑑賞 監督:成瀬巳喜男 これが映画史に残る兄妹喧嘩というやつか。それにしても面白かった。 妹のほうが寝転がって猪木アリ状態になるんだけど、それ以前もこの兄妹はどっちかが寝転がっていて、どっちかが立っているという場面がほとんどで……そう…

紳士は金髪がお好き

2014/8/11鑑賞 監督:ハワード・ホークス ただひたすらダイヤモンドとお金持ちが好きなマリリン・モンローがハワード・ホークス流に狂っている。 本作のマリリン・モンローは本当にダイヤモンドとお金持ちが好きなので、他人の奥さんのものだと知っていても…

すっ飛び駕

2013/9/7鑑賞 監督:マキノ雅弘 傑作。これは必見。 撮影は宮川一夫。状態が悪かったのか音声の聞き取りにかなり難があり、正直あらすじがよく分からないまま観終わったのだが、画面は素晴らしい出来。 何度も出てくる家屋と橋の距離感であるとか、茶室とか…

西部の人

2013/12/29鑑賞 監督:アンソニー・マン 大傑作。美しい。シネマスコープを存分に生かした空間造形に痺れた。 手前になめるように人物を配置し、奥からロングショットで人物を出現させる、というシネマスコープではむしろ基本的なショットを高頻度で使い、適…

陽のあたる場所

2016/10/22鑑賞 監督:ジョージ・スティーヴンス ホテルのボーイだったジョージ(モンゴメリー・クリフト)は、アンジェラ(エリザベス・テイラー)という女性との身分違いの恋を諦め、叔父の紹介で働くことになった工場で同僚のアリス(シェリー・ウィンタ…

くちづけ

2016/11/15鑑賞 監督:増村保造 川口浩がひねくれた正直者で、野添ひとみが素直な正直者。親が牢にぶちこまれているのだが、それでも湿っぽくならないキャラクターである。一本調子でドライな演出がこの頃からすでにあった。 お冷を貰うために川口の方にコッ…

美貌に罪あり

2016/8/5鑑賞 監督:増村保造 杉村春子、山本富士子、若尾文子、川口浩、野添ひとみが出演している大映のオールスターキャスト映画で、美術、衣装、照明、俳優、構図、編集がどれも高い水準でまとまった超傑作。 いい映画だ~文句のつけようがない。 杉村春…

僕の彼女はどこ?

2016/5/10鑑賞 監督:ダグラス・サーク 自分が初めて見たサークはこれ。多幸的なテクニカラーに目を奪われた。 独身のまま晩年を迎えた億万長者が、かつて自分をフった女性の家族に10万ドルを上げたうえに、そこに下宿人として居座ることで、大金を突然手…

草原の追跡

2017/1/8鑑賞 監督:ジャック・ターナー アルゼンチンの草原を舞台にした一種の西部劇で、ロケ地もアルゼンチンらしい。この映画の驚異的な点は、ドラマをひたすら背景で描写・演出する、、、ということをロケ撮影でやってのけてしまっているところだろう。 …

宇宙戦争

2015/10/5鑑賞 監督:バイロン・ハスキン 50年代のアメリカ映画なので(?)、セットやミニチュアが頻出し、画面の隅々までコントロールされている箱庭のような可愛らしさを感じた。一方で、ピコピコ音的なSEと怪光線、点滅しながら消えていく人間といっ…

突然の花婿

2016/5/18鑑賞 監督:ダグラス・サーク なんというバカ結婚喜劇! 『ぼくの彼女はどこ?』のママをパワーアップさせて、図々しい居候を15倍に増やしたら『突然の花婿』になると思う。軍隊から休暇を貰ったら、新妻と暮らすはずの実家が妻のママとその15人…

翼に賭ける命

2017/2/28鑑賞 監督:ダグラス・サーク 完璧なアメリカ映画だった。増村のようなモダンな使い方とはまた違った、古典的なシネマスコープのモノクロ映画ってこういう風にやればいいのか。増村の『爛』でも思ったが、シネスコにおける仰角ショットの水準がここ…

アメリカの影

2014/1/14鑑賞 監督:ジョン・カサヴェテス 即興的な作品には見えるものの、後年のような前衛的な作風ではなく、普通に滑らかに見られる。 マンハッタンを舞台にした映画で、とんでもなく瑞々しく、そして面白かった。役者の顔だけで目が奪われる。 とにかく…

幌馬車

2013/5/20鑑賞 監督:ジョン・フォード ジョン・フォードの中でも非常に好きな映画のひとつ。 二人いる主人公が二人とも、落下してくる女性を受け止め、その娘と恋に落ちる。 子供が老人から譲り受けた拳銃一丁で、最後瞬く間に数的不利を挽回する銃撃戦もお…

大砂塵

2018/8/5鑑賞 監督:ニコラス・レイ 西部劇に出演しても『何がジェーンに起ったか?』をやるジョーン・クロフォードという感じで、女と女の決闘があり、男たちは「誰かとめろよ」と何か遠慮がちに事態に絡んでいる。 評価の高い作品だが、自分には面白さがわ…

闇を横切れ

2016/9/4鑑賞 監督:増村保造 新聞記者がストリッパー殺しをきっかけに政治家と街のボスの汚職を挙げる社会派エンタメ。熱血漢の新人ブン屋を川口浩、秘密を握る女を叶順子、一見理想の上司に見えるが何か裏がありそうな人物を山村聰がやっている。かなりベ…

驟雨

2021/2/6鑑賞 監督:成瀬巳喜男 『めし』同様、子供のいない倦怠期の夫婦(しかも貧しい)のながーい夫婦喧嘩を、近所付き合いなどを交えてドラマにしたという感じ。妻が原節子で、夫が佐野周二。タイトルは、途中で一度、突然の大雨が降って場面転換が起き…

ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ

2014/10/8鑑賞 監督:フリッツ・ラング ラングの職人技が振るわれた一品。 グロリア・グレアムの隠された半分の顔は、彼女の二面性を示すと同時に、視覚的なインパクトをズラすことによって、復讐の手段になってもいる。つまり最初コーヒーをかけられた時に…

氾濫

2015/1/8鑑賞 監督:増村保造 好色で金にがめついのに、見え見えの嘘をつき、悪人らしく笑い、基本的にあっさりと浅ましい内面を正直に告白する、ある意味、とても好感の持てる人間ばかり出てくる。 「君には娘は養えないだろ(要約)」「まるで不可能です!」

早春

2018/8/23鑑賞 監督:小津安二郎 凄かった。あの蓮實重彦の「映画は見つめ合う瞳を映せない」とか何とやらといった言葉と、小津の真正面からの切り返しの関係性を初めて心から体感した。 終盤、浮気騒動で仲たがいした夫婦が地方にやって来て和解する場面。…

この庭に死す

2016/12/26鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 前半は、ダイヤの鉱山での採掘者と警察のつばぜり合い。後半はジャングルでのサバイバル。 虫にたかられている蛇の死骸ショットから凱旋門の雑踏にカットが飛び、あとでそれが写真だとわかる場面の現実感覚の喪失が…

心のともしび

2017/02/13鑑賞 監督:ダグラス・サーク めちゃくちゃよかった。ラストシーンでは、単純な切り返しが、視力を取り戻した彼女のPOVショットにしか見えなくなる。 メロドラマといっても画面が深刻になるところは少なく、基本的に享楽的な明るい画面作りがなさ…

ストロンボリ

2014/6/3鑑賞 監督:ロバート・ロッセリーニ スペクタクルに感じたのはバーグマンでも火山でもなく、マグロ漁だった。船の上に密集して並び立つ男たちが引き揚げ始めても中々姿を見せないマグロは、まず水飛沫と不気味な音として現れ、しばらくして水飛沫が…

自由の旋風

2017/2/19鑑賞 監督:ダグラス・サーク アイルランド独立運動を題材にとった歴史コスプレエンタメ映画で、クオリティは高いと思うけど、いきなり殴り合いをはじめるようなアイルランドの牧歌的な粗暴さがサークの資質にあっていないように思えてアクション全…

黒い絨毯

2017/5/11鑑賞 監督:バイロン・ハスキン 軍隊アリのパニック映画だが、エリノア・パーカーとチャールトン・ヘストンの恋愛がストーリーの大きい位置を占める。 女優を美しく撮ることについては、当時のスタジオの底力を感じた。 ダムを破壊したあとの濁流は…