呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#製作国:日本

仁義の墓場

監督:深作欣二 すごい映画だった。 この世に何一つ良いことをもたらしていなさそうなヤクザ男が、触れるもの全てを(主に不幸にもこの男に関わってしまったヤクザ達を)傷つけていく。 人の家(というかヤクザの家に)に上がり込んできて、背中まげて俯いて…

君たちはどう生きるか

2023/7/23鑑賞 監督:宮崎駿 戦時中、火災で母親を亡くした少年(牧眞人)が田舎に疎開するとそこには父の再婚相手(死んだ母親の妹で瓜二つ)がいて、転校先で早々に喧嘩をした上に自傷行為までしたので臥せっていると何やら怪しげなアオサギに誘われ、つい…

ケイコ 目を澄ませて

2022/12/26鑑賞 監督:三宅唱 音から入ってくる映画で、映画館で見ることを前提にした映画を久々に見たような気がする。 『LOFT ロフト』を思わせるような、冒頭の鏡に顔を映したショット。そして『ボクシング・ジム』を思わせる導入部。 ケイコ(岸井ゆきの…

ドライブ・マイ・カー

2022/10/15鑑賞 監督:濱口竜介 車の運転は運転でも、毎日の通勤の運転にともなうドライブの快楽にフォーカスが当たっていた。 異なる要素の同時成立という濱口映画のシステムが、演技の質の違いさえも取り込んで消化しており、非常にしみじみとスリリングだ…

フレフレ少女

2022/6/30鑑賞 監督:渡部謙作 毒にも薬にもならない青春映画です、という顔をしていながら実は凝った映画だったということはままあるが(例:『奈緒子』)、これもそういう一作。 小説の中の恋に憧れる高校生、百山桃子はあるとき野球ボールを頭部に受けて…

呪怨 黒い少女

2022/2/13鑑賞 監督:安里麻里 時系列や視点をバラバラにして、怪奇現象に襲われる短い挿話を束ねたような形式(これ自体は呪怨シリーズ共通)や、デジタル撮影の画面のきつさ(黒の多いカラー映画)、そもそも低予算であること、救いのない展開、などなどが…

ザ・ファブル

2021/7/25鑑賞 監督:江口カン 冒頭の殺人シーンのエフェクト効果の必要性は全く分からなかったが、その後はそれなりに堅実な捌き方をしていた。柳楽優弥は演技過剰で映画を壊しかけだけど、コスプレ感があまりなく本当にヤバい人の雰囲気があっていいね。 …

赤い女(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:大畑創 黒沢清「花子さん」に似た赤い女が出てくるのだが、まったくの別物に仕上がっている。 赤い女の都市伝説を話したら、その話に出てくる「赤い女」が本当に現れる・・・というそれ自体はよくある構造の怪談なんだけど、その「赤い…

尾けてくる(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:安里麻里 女子高生が帰宅中、公園の林のなかに作業着で立っている不審な男を見かける。 必要なのかどうか分からない寄りのカットもあり、全体的にラフな感じ。男の幽霊顔は絶妙なのだが、あまり印象に残らなかった。

影男(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:安里麻里 何かが出てきそうな窓越しの景色がゆっくり暗くなっていく。男が「ガン、ガン」と外から窓を殴りつけている様子がナチュラルに怖い。 寝落ちの導入もよかったし、編集にも緊張感があって怖かった。無駄がなく、スキルフルな印…

ディストラクション・ベイビーズ

2016/6/2鑑賞 監督:真利子哲也 松山の港町から繁華街に出てきた凶暴な男、芦原泰良(柳楽優弥)が、道行く人間に次々と喧嘩を仕掛けていくと、高校生の北原裕也(菅田将暉)が泰良に興味を持ち、彼と行動を共にするようになる。泰良の喧嘩は段々と有名にな…

宮本から君へ

2021/6/29鑑賞 監督:真利子哲也 営業マンの宮本浩は、前歯と腕を折り、顔面が腫れ上がるまで喧嘩したことで勤め先から叱責を受けるのだが、その喧嘩の内容については詳しく話そうとしないでいる。一方、中野靖子との結婚を報告しにお互いの両親を訪ねるのだ…

『ゴジラS.P』第11話「りふじんながくふ」

2021/6/2鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 前2話とは少し雰囲気が変わって、過去に出た要素の回収というよりも、新しい要素を出して最終回に向けての準備を進めていくような話だった。恐らくこれが最後の繋ぎ回だろう。 冒頭、胡散…

『ゴジラS.P』第10話「りきがくのげんり」

2021/5/28鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 第9話で命の危機に瀕したはずの李博士と、マキタ、神野銘がどこかの風変わりなレストランで食事をとっているシーンから始まる。いささか唐突なこの場面は、おそらくは回想シーンであるの…

『ゴジラS.P』第9話「たおれゆくひとの」

2021/5/13鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 当然ネタバレです。 前回に続き、今回も冒頭はゴジラと自衛隊の場面からはじまる。紅塵に包まれた東京で、硬化したゴジラに爆弾が投下される(前回のニュース映像によればレーザー誘導され…

『ゴジラS.P』第8話「まぼろしのすがた」

2021/5/13鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 当然ネタバレです。5~7話の記事がない?知らない子ですね。 冒頭では『シン・ゴジラ』的な、ゴジラと自衛隊との戦闘シーンがはじまる。戦車砲の集中砲火を受けてもゴジラはダメージがあ…

セックス・チェック 第二の性

2017/3/7鑑賞 監督:増村保造 一流のスプリンターにするために、お前を男にしてやる。明日から髭を剃れ!そしたら生えてくる! ⇒ セックスチェックに引っかかっただと。なら、お前を女にしてやる!毎晩お前を抱いてやる! こんな滅茶苦茶な話を極めて真面目…

あに いもうと

2017/7/25鑑賞 監督:成瀬巳喜男 これが映画史に残る兄妹喧嘩というやつか。それにしても面白かった。 妹のほうが寝転がって猪木アリ状態になるんだけど、それ以前もこの兄妹はどっちかが寝転がっていて、どっちかが立っているという場面がほとんどで……そう…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開されるので、見ていると異様な感覚になってくる。 脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』…

おとぎ話みたい

2016/12/27鑑賞 監督:山戸結希 きついモノローグと同じ切り返しカットを反復する冒頭にリタイア。ロングは結構よかった気がする。また気が向いたら挑戦してみたいです(行けたら行く構文)。

共喰い

2013/9/20鑑賞 監督:青山真治 これは流石にデジタル撮影と題材との相性に疑問を感じた。 血の呪いが、殆ど物理法則のように機能している。「密告者は密告する」ように「男は女を殴る」ので、田中裕子は刺し、篠原友希子は妊娠をし、木下美咲は手を縛る、と…

すっ飛び駕

2013/9/7鑑賞 監督:マキノ雅弘 傑作。これは必見。 撮影は宮川一夫。状態が悪かったのか音声の聞き取りにかなり難があり、正直あらすじがよく分からないまま観終わったのだが、画面は素晴らしい出来。 何度も出てくる家屋と橋の距離感であるとか、茶室とか…

女体

2016/11/12鑑賞 監督:増村保造 スーパーメンヘラ劇場だった。浅丘ルリ子がファーストショットでいきなり机に爪を立ててガリガリ! 角をかじってガジガジ! 人工的でポップな役者たちがいい。マジで目先の欲望にしか関心がなくて、徹底的に自分の欲望のまま…

くちづけ

2016/11/15鑑賞 監督:増村保造 川口浩がひねくれた正直者で、野添ひとみが素直な正直者。親が牢にぶちこまれているのだが、それでも湿っぽくならないキャラクターである。一本調子でドライな演出がこの頃からすでにあった。 お冷を貰うために川口の方にコッ…

『ゴジラS.P』第4話「まだみぬみらいは」

2021/4/15鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 当然ネタバレです。 アーキタイプと呼ばれる「存在しない物質」の説明をして、必要なキャラクターを残り全部まとめて出す、繋ぎ的な回だがやはりとても面白い。李博士に呼ばれてドバイまで…

『ゴジラS.P』第3話「のばえのきょうふ 」

2021/4/8鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 当然ネタバレです。 超たのしい。バス・室内に翼竜に侵入される恐怖という点で『ジュラシック・パーク』シリーズを、弓矢の使用という点では『グエムル』を連想したけど、「脚本;円城塔」…

天国はまだ遠い

2018/05/22 鑑賞 監督:濱口竜介 38分ほどの小品。 女子高生の幽霊(三月)と同棲するAVのモザイク付け職人が、ふとしたことで、亡くなった姉に捧げるドキュメンタリーを作っているという三月の妹・五月からインタビューを受けることになる。 面白かった。実…

2016/2/7鑑賞 監督:三隅研次 原作が三島由紀夫で、主演が市川雷蔵。三島らしく実よりも美学を取るストーリーと、どんな脚本でも美にこだわる三隈研次という感じで相性が良さそう。 一言でいえば、日本の狂った体育会系(剣道部)がひたすらに怖いという映画…

雪の断章 -情熱-

2021/4/7鑑賞 監督:相米慎二 舞台は北海道。2人の男性に囲まれて育ったみなし児の少女が、殺人事件の容疑者になることで人生を狂わされ、やがて大人になっていくまでの物語。 なのだがストーリーは大体どうでもよくて、意外性に意外性をぶつけるような圧倒…

美貌に罪あり

2016/8/5鑑賞 監督:増村保造 杉村春子、山本富士子、若尾文子、川口浩、野添ひとみが出演している大映のオールスターキャスト映画で、美術、衣装、照明、俳優、構図、編集がどれも高い水準でまとまった超傑作。 いい映画だ~文句のつけようがない。 杉村春…