呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

2021-02-18から1日間の記事一覧

幸福の設計

2016/4/9鑑賞 監督:ジャック・ベッケル いわゆる宝くじ映画なんだけど、ほんとに大したことはなにも起こらない。若い夫婦が宝くじに当たる→なくす→落ち込む→見つかる→ハッピーエンド。あとは妻に言い寄る男との筋くらい。本筋が弱いから脇役がプロットに大…

フランシス・ハ

2016/5/24鑑賞 監督:ノア・バームバック フランシス、女、27歳、大柄、ダンサー実習生、親友とは喧嘩、住所不確定、金なし、彼氏ナシ、職なし、みたいな映画であった。モノクロ映画でジャンプカットを使い、都市部の野性的な男女の日常風景撮るのでいかに…

パリのランデブー

2015/12/16鑑賞 監督:エリック・ロメール パリでの野外デートをオムニバス形式で三話分まとめたのが本作。ドキュメンタリーに近い撮り方をしている。隠し撮りはしてないらしいけど(ロメール談)、わざとコントロールが難しいような雑踏を選んで撮ったりして…

裏切り者

2013/5/12鑑賞 監督:ジェームズ・グレイ 刑務所帰りの男(マーク・ウォールバーグ)が叔父の経営する会社に就職するが、そこには悪友(ホアキン・フェニックス)の姿があり、やがて男は入札に係る汚職や談合に巻き込まれていく。 マーク・ウォールバーグと…

引き裂かれた女

2013/4/5鑑賞 監督:クロード・シャブロル 美男美女揃いでゴージャスな色使い、小道具、衣装、建築で飾られる退廃のメロドラマ。 ちょっと筋を追えなくなるくらいに編集でバシバシ場面を切っていくのがすごい。洗練というのとはまた違う奇妙な説話だ。 それ…

石の微笑

2016/2/20鑑賞 監督:クロード・シャブロル ネタバレしてます。 冷たい傑作。冒頭の白くて被写体がよく見えないショットから冷たい。 青い屋根の色が映画全体のテーマカラーになっていて、殺された女のソックスやドレスにまで通底する。 人生を完全にするた…

見えない恐怖

2016/2/3鑑賞 監督:リチャード・フライシャー 叔父一家で暮らす盲の少女がある日帰ると、一家が惨殺されているのだが、盲なので気がつかないというアイデアで撮られた映画。 ちなみに殺人犯はブーツを履いた足だけが映される。足だから表情はない。 発見さ…

タイピスト!

2014/5/15鑑賞 監督:レジス・ロワンサル お見事なスポ根ラブコメ映画。 タイプライター早打ちの世界大会で優勝することを目指すために、ヒロインと保険代理店の経営者が二人三脚で特訓をする。その過程で二人に愛が芽生えるという王道のストーリー。 横溢す…

レディ・バード

2019/03/31鑑賞 監督:グレタ・ガーウィグ 一つの一つの場面が単一の感情に支配されないよう努力して脚本を練ってある。ギャグのあとには湿っぽい場面を、湿っぽい場面のあとにはギャグをという具合に。 こういうのがアメリカ式ドラマの美点。そして編集がそ…

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

2020/06/28鑑賞 監督:グレタ・ガーウィグ 素晴らしかった。画面の感情や表情がころころと変わり、編集で驚きを作っていく手法はそのままだが、原作ものの制約からか少しだけ抑えめ(実際、かなり忠実な内容)。その代わり、時系列を入れ替えた語りが採用さ…

フォードvsフェラーリ

2014/2/10鑑賞 監督: ジェームズ・マンゴールド マイケル・マンの降板は残念だが、いかにも彼が撮りそうな官僚的な男VS流れ者という映画だった。よく言われているように、実際はタイトルに反して『フォードVSフォード』とでも言うべき内容。 チャンベールは…

ラッシュ/プライドと友情

2014/2/10鑑賞 監督:ロン・ハワード ロン・ハワードが本気で映画を撮るとこうなるのか、という凝りよう。 陽炎、雨、ピントボケ、の視界不良にイライラ、ハラハラするが、それが正しくF1レーサーのストレスへと貢献する作りになってる。 アレクサンドラ・…

ブラックブック

2013/8/18鑑賞 監督:ポール・バーホーベン バーホーべンの即物性が強烈にはまった題材で震える。善悪というものがなく、抽象にも抒情にも落ちない。つまりはユダヤ人の女の肉体の魔力に負けてしまうナチ将校であるとか、そのナチ将校の死に泣くと言うよりも…

THE GREY 凍える太陽

2013/8/17鑑賞 監督:ジョー・カーナハン 飛行機事故でアラスカに不時着陸し、遭難したリーアム・ニーソンがサバイバルする映画。 自然の脅威が厳しくリーアム・ニーソンを襲い、救いがないので、過去の思い出やら言葉に縋る心理的な展開になってしまう。打…

マリリン 七日間の恋

2013/8/3鑑賞 監督:サイモン・カーティス 素晴しい。川で泳いだデートの後の、疲労感を湛えた車内に差しこんでくる夕方の日の光に目を奪われた。あそこが飛び抜けて凄い。 基本的に主人公は「覗く人」であり、誰もがマリリン・モンロー(ミシェル・ウィリア…

第7鉱区

2013/6/3鑑賞 監督:キム・ジフン 東シナ海に浮かぶ石油ボーリング船を舞台に、閉鎖空間での怪獣との戦いを1時間40分ほどの映画にしている。 面白い。照明が明る過ぎるとか、演技がテレビ的だとか、ケチのつけようは色々とあるが面白い。 一本道を逃げながら…

キャリー(1976年)

2013/5/26鑑賞 監督:ブライアン・デ・パルマ デ・パルマのことは好きではないが、これは楽しめた。 こんなに大味で、下品で、本当にいいのだろうかと思いながらも何故か楽しめるのは、この人の演出の持ついかがわしさがこの映画では魅力になっているからだ…

ネイビーシールズ

2013/7/7鑑賞 監督:スコット・ウォー、マイク・マッコイ あんまりカメラを揺らすなよと思うけど、結構良い。特定の誰かに焦点を当てるというよりは、ミッション総体を描こうとしている節があって、そのためではないかと思われる。 無人機のカメラとの連携で…

スプリング・ブレイカーズ

2018/8/16鑑賞 監督:ハーモニー・コリン 2013年にも一度見ていたが、その時はピンとこなかった。 久々に見ると非常によかった。敵役の造形が弱い(とってつけたような)ところ以外は、完璧に最高だった。 『拳銃魔』のようなダイナー強盗長回しがあって、建…

ウィジャ ビギニング ~呪い襲い殺す~

2018/8/16鑑賞 監督:マイク・フラナガン インチキ霊媒師の娘がウィジャ盤で遊んでいたら、どうやら娘には才能があったらしく本物の霊に憑かれる。 ストーリーとしては悪魔憑きの映画なんだけど、ホラー映画のジャンル的な部分だけではなく、その前置きのド…

大砂塵

2018/8/5鑑賞 監督:ニコラス・レイ 西部劇に出演しても『何がジェーンに起ったか?』をやるジョーン・クロフォードという感じで、女と女の決闘があり、男たちは「誰かとめろよ」と何か遠慮がちに事態に絡んでいる。 評価の高い作品だが、自分には面白さがわ…

ランペイジ 巨獣大乱闘

2018/5/22鑑賞 監督:ブラッド・ペイトン 宇宙ステーションで行われていた実験用の遺伝子サンプルが地球に落下し、その影響を受けたゴリラ、オオカミ、ワニが巨大化するという怪獣映画。昨今、次々と製作されているドウェイン・ジョンソン主演映画の一角でも…

パシフィック・リム:アップライジング

2018/4/15鑑賞 監督:スティーヴン・S・デナイト まだまだ多いとはいえ、登場人物とサブプロットが減ったので映画として若干スマートになった。上映時間も減った。それでも、やっぱり怪獣が出るまでが長いと思わざるを得ない。 前作同様、一枚絵のアイデアは…

リカウント

2018/8/13鑑賞 監督:ジェイ・ローチ あの「ブッシュ対ゴア事件」の前後を含めた、2000年米合衆国大統領選における投票の”数え直し”に関するドキュメンタリー風映画。 大統領選という大きな題材が、パンチカードに穴をあけられなかったくぼみ投票をどう…

ジュラシック・ワールド 炎の王国

2018/7/18鑑賞 監督: J・A・バヨナ 狭い屋敷内を恐竜が動き回り、地下のオークションではパキケファロサウルスが人々を頭突きで飛ばしまくる、恐竜版ゴシックホラーが展開される後半(カーテンもゆらゆらと揺れる)。 また、レイ・ブラッドベリ「霧笛」的な…

湖のランスロ

2016/10/31鑑賞 監督:ロベール・ブレッソン めちゃくちゃ面白かった。アーサー王伝説の話なんだけど、いきなり騎士の首がチョンパして切断面が見えるわ、血がドバドバ出るわ、で即物的な中世残酷絵巻になっている。また、史劇という大きなものを、小さな形…

その夜の妻

2016/10/27鑑賞 監督:小津安二郎 サイレント映画。アメリカ映画っぽいことをやっていた頃の小津。 病気の子供のために強盗を働く夫と、それを捕まえに来た刑事に拳銃を向ける妻。一晩、家で子供の看病をし、刑事に拳銃突きつけたまま寝ずの番をする。この展…

召使

2016/9/11鑑賞 監督:ジョセフ・ロージー すごいな。狭いはずの室内で、フレーム内フレームを駆使し、人間の顔をカメラ近くに置き、階段や鏡を使って、バロック的に豪華絢爛で広大な空間を造形している。 召使と主人のパワーバランスの変化が見どころ。最後…