呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#制作国:フランス

LUCY/ルーシー

2016/10/15鑑賞 監督:リュック・ベッソン 脳機能の20パーセント以上を使えるようになると新しい世界が開けるという仮説をノーマン博士が披露していると、まったく別の場所にいてまったくの不幸から韓国マフィアの運び屋にされたルーシーというブロンド美…

あるメイドの密かな欲望

2021/7/22鑑賞 監督:ブノワ・ジャコー パリ暮らしをしていたメイドのセレスティーヌは、地方に暮らすランレール夫妻のもとで住み込みで働くことになるが、女主人は性悪でいじめ同然にメイドをこき使い、それに頭の上がらない旦那は好色でセレスティーヌに何…

サムライ

2017/3/18鑑賞 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル 冒頭のシークエンスを始めとして、(照明による)アラン・ドロンの身体に常にくっきりとした輪郭が出ている点が見事だった。 しかし劇伴と、ズームの活用が古びていて残念だ。 金を手渡すのか?という場面…

レディ・アサシン

2013/5/4鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス 傑作。原題は"Boarding Gate"。 元娼婦のサンドラ(アーシア・アルジェント)が、やや不本意な形で人殺しになる。 映画冒頭、金属のドアがひしぐ音を聞いた瞬間に気づいたのは、画面のフレーム内全てにピントが合…

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

2013/9/26鑑賞 監督:マルコ・ベロッキオ 邦題の通り、ムッソリーニの最初の妻になった女性の波乱万丈の人生(実話)を描く作品。 滅茶苦茶面白い。非現実的な画面作り楽しい。カメラ、演技、演出のテンションが異常に高くて、時折殆ど歌劇のようだ。 人物を…

ラ・ピラート

2016/10/27鑑賞 監督:ジャック・ドワイヨン ものすごいテンションで全力疾走する映画で、完全に置いてけぼりになってしまった。 人間たちが肉体を躍動させながら、性的に結び合ったり離れたりする映画というか、、、何とも内容を説明しがたい映画だけど、出…

フルスタリョフ、車を!

2016/9/6鑑賞 監督:アレクセイ・ゲルマン わけがわからない映像と音がわけがわからないまま流れていく。旧ソとロシアは物量作戦の国という印象が深まるのであった。 一応、ユダヤ人の家長であり医師であり将軍である男、視覚的にはスキンヘッドの大男ユーリ…

マップ・トゥ・ザ・スターズ

2015/1/18鑑賞 監督:デヴィッド・クローネンバーグ ハリウッドゴシップ話かと思えば割に古典的な悲喜劇へともつれこんでいく。クローネンバーグらしいと言えばらしいし、オチが優しいこと以外はむしろ初期の作風に戻ったのかもしれない。 報道などで聞こえ…

エレニの旅

2014/2/7鑑賞 監督:テオ・アンゲロプロス 壁抜けの撮影も一つのショットとして数えると、総ショット数は97だろうか。100前後なのは確かだ。170分の映画でこのカット数の少なさ。 大俯瞰を撮る時は、人をシルエット同然にするため黒い服を着せるべし、あるい…

カルロス 第2部

2013/11/24鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス オープニングの不協和音とノイズの嵐に、オリヴィエ・アサイヤスの映画を観ているという実感が得られる。 OPEC本部占拠・各国石油相人質事件をじっくり描いてくれる第二部は、いささか早足気味だった第一部に比…

カルロス 第1部

2013/5/8鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス 実在したイリイチ・ラミレス・サンチェスという極左テロリストの半生を題材にとったテレビ映画を劇場版に組みなおした、その第1部。 ひたむきな労働の映画、という印象がある。青春として撮っているかもしれない…

ノスフェラトゥ

2013/9/26鑑賞 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 人間の顔を白く浮かび上がらせる極端な照明が、古典映画の表現への懐古というだけでなく審美的に、長回しの中でも崩れることなく映画を支え切っている。 イザベル・アジャーニは鏡に映らず入ってきた吸血鬼を…

サイレントヒル

2013/5/19鑑賞 監督:クリストフ・ガンズ ゴシックアート博覧会とでも言うべき美術の映画。ロングショットの多さとか、空間構造を見せようという気概もこれが美術の映画だからに過ぎず、説話的な部分、特に視点制御に関心が薄いように見えた。 例えば、「室…

トレイン・ミッション

2018/3/31鑑賞 監督:ジャウム・コレット=セラ コレット=セラとリーアム・ニーソンのタッグ4作目で、面白かった。特に最初に出てくる死体にはびっくりした。 列車という物体を扱う際、ポン・ジュノだったら縦に細長い空間を縦に動くのだが(その例外とし…

幸福の設計

2016/4/9鑑賞 監督:ジャック・ベッケル いわゆる宝くじ映画なんだけど、ほんとに大したことはなにも起こらない。若い夫婦が宝くじに当たる→なくす→落ち込む→見つかる→ハッピーエンド。あとは妻に言い寄る男との筋くらい。本筋が弱いから脇役がプロットに大…

パリのランデブー

2015/12/16鑑賞 監督:エリック・ロメール パリでの野外デートをオムニバス形式で三話分まとめたのが本作。ドキュメンタリーに近い撮り方をしている。隠し撮りはしてないらしいけど(ロメール談)、わざとコントロールが難しいような雑踏を選んで撮ったりして…

引き裂かれた女

2013/4/5鑑賞 監督:クロード・シャブロル 美男美女揃いでゴージャスな色使い、小道具、衣装、建築で飾られる退廃のメロドラマ。 ちょっと筋を追えなくなるくらいに編集でバシバシ場面を切っていくのがすごい。洗練というのとはまた違う奇妙な説話だ。 それ…

石の微笑

2016/2/20鑑賞 監督:クロード・シャブロル ネタバレしてます。 冷たい傑作。冒頭の白くて被写体がよく見えないショットから冷たい。 青い屋根の色が映画全体のテーマカラーになっていて、殺された女のソックスやドレスにまで通底する。 人生を完全にするた…

タイピスト!

2014/5/15鑑賞 監督:レジス・ロワンサル お見事なスポ根ラブコメ映画。 タイプライター早打ちの世界大会で優勝することを目指すために、ヒロインと保険代理店の経営者が二人三脚で特訓をする。その過程で二人に愛が芽生えるという王道のストーリー。 横溢す…

湖のランスロ

2016/10/31鑑賞 監督:ロベール・ブレッソン めちゃくちゃ面白かった。アーサー王伝説の話なんだけど、いきなり騎士の首がチョンパして切断面が見えるわ、血がドバドバ出るわ、で即物的な中世残酷絵巻になっている。また、史劇という大きなものを、小さな形…

昼顔

2016/11/6鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 傑作。光に対する感覚が素晴らしい。例えば、わずかに陽光を浴びて黄金色をまとう雪の白さ、その美しさ。 若く美しい人妻(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、淫靡な妄想を繰り返し、やがて娼婦になるという話。画面外から…

エル ELLE

2017/8/26鑑賞 監督:ポール・バーホーベン いつにも増してブニュエルみたいだ。 暴力的なところは暴力的に、猥雑なところは猥雑に。 誰もいないところで年増女が犯されて、ただ猫だけがそれを見ているという鮮烈な冒頭シーンに引き込まれる。 キリスト教は…

トールマン

2013/12/9鑑賞 監督:パスカル・ロジェ 面白い。ジェシカ・ビールが冒頭でお岩さんのように傷だらけになっていて、作中でもやっぱり傷を負うんだけど、何度傷を負っても冒頭の怪我になかなかたどり着かないという焦らしで引っ張る。工夫されたシナリオでも引…

去年マリエンバートで

2014/3/24鑑賞 監督:アラン・レネ ある男が、ある女に「去年会いませんでしたか」と持ちかける。それが捏造されたものなのか、見たくない過去だから忘却しただけなのか、あるいはその両方なのか。 モブや、時には主演の二人さえ自動人形のように見えるのは…

大列車作戦

2014/11/21鑑賞 監督:ジョン・フランケンハイマー 画面に奥行を持たせ、そこに様々な人間を歩かせ、作業させて画面を豪華にしようという思想が垣間見え、室内にも大きな窓を配置する。 空爆シーンを大俯瞰で見せてくれるし、その際にも野外セットを豪快に粉…

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

2015/3/1鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン 面白かった。素直に、肉眼で絵画を見ることの不完全さ、不確かさについての三時間だと受け取った。 修復の不確かさ、X線や赤外線によって初めて見ることのできる下絵の存在。宗教画や物語絵画にしても、背景を…

友よ、さらばと言おう

2015/1/18鑑賞 監督:フレッド・カバイエ 現代ハリウッド的なアクション映画を撮ろうと頑張っているフランスという感じだろうか。 ヴァンサン・ランドンの再起を示すエピソードが上手くいってないように思える。過剰暴行でキャラ立ちをしたランドンが、息子…

この庭に死す

2016/12/26鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 前半は、ダイヤの鉱山での採掘者と警察のつばぜり合い。後半はジャングルでのサバイバル。 虫にたかられている蛇の死骸ショットから凱旋門の雑踏にカットが飛び、あとでそれが写真だとわかる場面の現実感覚の喪失が…

暗黒街

2018/12/3鑑賞 監督:ステファノ・ソッリマ めちゃくちゃロマンチストな作り手によるマフィア抗争もので、挿入曲としてひたすらM83が流れている。 マイケル・マンみたい、というか絶対マイケル・マンのこと好きだろ……と思って監督のインタビューを読んだら、…

ルルドの泉で

2017/8/29鑑賞 監督:ジェシカ・ハウスナー 病気のせいで車椅子生活をしており、世話をしてもらわなければ食事をすることも、ベッドに寝ることも一人ではできないクリスティーヌという女性が、聖地ルルドにやってきて聖地巡礼ツアーに参加する。それほど熱心…