呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#1930年代

暗黒街の弾痕

2013/11/11鑑賞 監督:フリッツ・ラング いわゆるボニーとクライドもののひとつ。アマンダ・サイフリッドは本作のシルヴィア・シドニーにそっくりだということを発見し、彼女がシネフィル気質の映画監督から愛される理由を知った気がする。 なんといっても二…

その夜の妻

2016/10/27鑑賞 監督:小津安二郎 サイレント映画。アメリカ映画っぽいことをやっていた頃の小津。 病気の子供のために強盗を働く夫と、それを捕まえに来た刑事に拳銃を向ける妻。一晩、家で子供の看病をし、刑事に拳銃突きつけたまま寝ずの番をする。この展…

暗黒街の顔役

2013/12/9鑑賞 監督:ハワード・ホークス ちょっとサイレント映画を引き摺っているようなオーバーアクトが目につくものの、すこぶるかっこいい。 妹と喧嘩する場面でのレースカーテン越しの斑の陰影、襲撃されて床屋で電話する際の真っ黒に塗りつぶされた身…

民衆の敵

2013/9/4鑑賞 監督:ウィリアム・A・ウェルマン 現代劇としてのギャング映画というものをどういう気分で当時の観客が見たのか気になる。 野獣的な怒りと女性的な美を一身に宿しているキャグニーは稀有な俳優だ。拳で相手の頭に触れる仕草が癖になる。仇敵を…

男の敵

2014/2/11鑑賞 監督:ジョン・フォード 霧の街で繰り広げられる一夜の映画として、まずは単純に美しかった。 マーゴット・グラハムがブロンドの髪を露わにする瞬間とか、その髪が風に揺れる様とか、その彼女の顔にタバコの煙が吹きかけられるところとか。 ウ…

2014/4/9鑑賞 監督:ルイス・マイルストン 鮮烈。のっけから凄い。雨中の行軍シーンに至るまでの執拗な畳みかけ。雨雲と砂浜、井戸、葉に叩き付けられる雨粒がモンタージュされる。 南国の家屋の奥から子供が走り出してくるだけで心躍らずにいられないのはな…

素晴らしき休日

2014/6/19鑑賞 監督:ジョージ・キューカー 演劇っぽくあるけど、楽しい。キャサリン・へプバーンがクローズアップのカットを交えながら初めて父親に真っ向から反論する場面では思わず目頭が熱くなってしまった。あの「遊戯室」の多幸感。 リュー・エアーズ…

狂恋・魔人ゴーゴル博士

2017/01/23鑑賞 監督:カール・フロイント 女優狂いの天才外科医が寝とるために頑張る話。30年代の映画だけど、説話に無駄はないし、視覚的な見どころも多くて評判通り面白い。 窓ガラスにクレジットが出たと思ったら、それを殴ってクレジットごと窓ガラスが…

赤ちゃん教育

2013/9/5鑑賞 監督:ハワード・ホークス 軽い気持ちで見始めたら、いつの間にか最後まで見てしまっている。ホークスはクラシック映画の中でも一番見やすいし、誰でも楽しめると思う。 ハントを軸にとことんホークス的な要素が入り乱れる圧巻のコメディ。その…

間諜X27

2017/11/17鑑賞 監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ 主演はマレーネ・ディートリヒ。 照明が、非常に凝っていて影がいたるところに落ちている。ディゾルブも多いが、これはあまり好きではない。 冒頭では、間諜の道を薦めてくる老いた男を追い出したあと…

青い青い海

2016/12/11鑑賞 監督:ボリス・バルネット 言わずと知れた傑作で、野外で撮影されたとは信じられないほど奇跡的に美しいショットばかり出てくる。 液体でできた鏡のごとき海。ほとばしる陽光。涙のようにこぼれる真珠。

坊やに下剤を

2013/12/16鑑賞 監督:ジャン・ルノワール ショット数が少なくフルショット主体であるところからも分かるように、当時のトーキー初期の戯曲映画化作品の一環という印象。 演劇・サイレント臭い演技(特に奥さん)がちょっとくどい。 ドアの活用や、カッティ…

三十九夜

2012/12/24鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック 傑作。 ヒッチコックお得意の巻き込まれ映画で、主人公が追われるためにありとあらゆる理不尽が逆算で配置されていく。その視点の制御の完璧さに息を呑んだ。サスペンスとは、窓を通して誰かを盗み視ること…

恐怖城/ホワイト・ゾンビ

2018.4.26鑑賞 監督:ヴィクター・ハルペリン 唐突に極端なクローズアップが挿入されたり、ひきのばされたような薄暗い光のなかゾンビが丘をくだる遠景が挿入されたりと、序盤に目を引くショットが詰まっている。前後のカットとまったく被写体のサイズも違う…