呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

春の劇

2016/11/21鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ パンフレットによれば「16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリャで上演されるキリスト受難劇の記録」らしい。延々と毎年毎年、復活祭にこの劇が演じられてきたというのは正直信じられない思い。…

ルルドの泉で

2017/8/29鑑賞 監督:ジェシカ・ハウスナー 病気のせいで車椅子生活をしており、世話をしてもらわなければ食事をすることも、ベッドに寝ることも一人ではできないクリスティーヌという女性が、聖地ルルドにやってきて聖地巡礼ツアーに参加する。それほど熱心…

カニバイシュ

2016/11/23 鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ 特集上映「永遠のオリヴェイラ」で見た。原題は”Os Canibais”とのこと。 非常に変な映画である。舞台は、時代も場所も不明などこかの上流貴族の舞踏会。黒塗りの高級車に乗った貴族が続々と現れ、晩餐会が…

Um Século de Energia

2019/06/16 鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ あんな妖怪爺みたいな人がこんなに叙情的な遺作を撮るなんてちょっとズルいんじゃないか? 四重奏を真正面から撮った画から右に流れるようにパンをして、上演されている白黒フィルムの中に入っていく。そ…

フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち

2021/1/24鑑賞 監督:マーティン・ユベルティ 大まかに、アルジェリア戦争中の1960年から、反ドゴール反乱が失敗するところまでをフランス外人部隊に入隊した一人のイギリス人兵士の視点から扱った映画。ポール・フォックスが主演で、その戦友をトム・ハーデ…

大菩薩峠

2014/6/9鑑賞 監督:三隅研次 繰り返し映画化されているが、これはいわゆる「大映版」。 闇討ちの場面で、市川雷蔵が刀を抜くと身体はシルエットになり、代わりに刀が光る。見たとおりの邪剣。 また、霧とセットが物凄いが、セットを見せるための広い構図や…

飛行士の妻

2020/04/22鑑賞 監督:エリック・ロメール ロメールの映画は大体のところ、①人工的でよくできた脚本を、②生っぽい撮影によって崩していくという手法で撮られていると思しいのだが、これもそんな感じ。 その場の作り話や嘘で話を転がしていくことや、都合のい…

海辺のポーリーヌ

2014/12/22鑑賞 監督:エリック・ロメール アマンダ・ラングレの肉々しい後ろ姿がものすごくエロかった。ロメールはエロさを恩寵か何かだと思っている節がある。 人物配置を転がしていくだけで観客を引っ張り続ける脚本の巧さも目についた。

リミッツ・オブ・コントロール

2013/12/17鑑賞 監督:ジム・ジャームッシュ 『コズモポリス』と似ているが、静かだ。そして赤い。 最後に余計なメッセージを入れてこちらを白けさせなければジャームッシュ最高傑作だと思ったのに。 とはいえ、それでも痺れてしまう。悔しい。 色んな人間と…

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

2014/2/20鑑賞 監督:ジョー・ジョンストン 面白い。MCUフェーズ1で一番いい映画だと思うし、全フェーズを通じても一番かもしれない。 フィクションであること、プロパガンダであることを自覚的に作品に取り込んでいて、キャップが国債集めに駆り出される場…

真夏の方程式

2014/2/22鑑賞 監督:西谷弘 こんなに複雑で過去への引力に満ちた題材を映画として何とか成立させてしまえる西谷弘はすげえなあと思いながら観ていた。 マルチタスクばかりやる福山雅治のキャラクターや、情報機器の発達を、物語上複数ある題材の同時処理と…

ストロンボリ

2014/6/3鑑賞 監督:ロバート・ロッセリーニ スペクタクルに感じたのはバーグマンでも火山でもなく、マグロ漁だった。船の上に密集して並び立つ男たちが引き揚げ始めても中々姿を見せないマグロは、まず水飛沫と不気味な音として現れ、しばらくして水飛沫が…

座頭市血煙り街道

2014/6/4鑑賞 監督:三隅研次 勝新の殺陣の荒唐無稽さがよくわかる一本。段差に転げながら斬る、柵越しに斬る。 ラストの近衛十四郎との殺陣の途中に、木の骨組みに引っ掛かって一回転後ろにひっくり返ったかと思えば、刀の先から血が流れてきて、近衛十四郎…

ヴァン・ヘルシング

2014/7/21鑑賞 監督:スティーヴン・ソマーズ 劇場以来、2回目。大好きなんだよなこれ。 謎の回転ブレード、二丁拳銃、高圧ガス式連射ボウガン、閃光爆弾、銀の杭といった数々の武器が出てくるのが楽しいし、ジキルとハイド、吸血鬼、ハーピィ(?)、狼男…

赤ちゃん教育

2013/9/5鑑賞 監督:ハワード・ホークス 軽い気持ちで見始めたら、いつの間にか最後まで見てしまっている。ホークスはクラシック映画の中でも一番見やすいし、誰でも楽しめると思う。 ハントを軸にとことんホークス的な要素が入り乱れる圧巻のコメディ。その…

ヒズ・ガール・フライデー

2012/10/15鑑賞 監督:ハワード・ホークス ホークスらしいハント(狩り)のお話。好きな女を捕まえるという目的に、手段を選ばないという制限解除を与えただけで、ここまで何でもないお話が転がりに転がり、面白くなるというのは感動的だ。そして、弾丸のよ…

犯罪河岸

2015/10/24鑑賞 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 野心家で好色そうに見えるが実は夫一筋のシュジ・ドレール、前頭ハゲで冴えないからか嫉妬に狂うベルナール・ブリエ。実はその前頭ハゲに思いを寄せている幼馴染シモーヌ・ルナン。この三角関係に、と…

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ

2015/12/26鑑賞 監督:アキ・カウリスマキ スーツで決めたカウボーイズの全員が、ポンパドゥールとサングラスと先のとんがった靴で揃えながらすごい編成でダサい音楽を演奏する、というファーストシーンから出オチ。しかも次のシーンではトラクターを運転し…

エクソダス:神と王

2016/2/28鑑賞 監督:リドリー・スコット モダンな『十戒』。カメラの解像度が高いせいか、画面のルックは硬質かつクリアで現代的だ。 神話はほどよく合理化されており、ラムセス王とモーセの戦いは対テロ戦争の諸相を示しているし、イスラエルの神のもたら…

オデッセイ

2016/2/13 監督:リドリー・スコット いい映画だった。少なくとも2010年代リドリー・スコットの最高作だと思う。 やっぱり宇宙飛行士帰還ものの基本はハードボイルドに徹することにある。一人火星に取り残されて、恐らくは酷いことになっていたはずのワトニ…

アンデッド・ソルジャーズ

2016/1/28鑑賞 監督:マーク・ナトール 『ファーゴ』のように「実話に基づいた物語」というテロップが出されるが、そのくせ実話を装う気がさらさらなく、ナチスドイツ×オカルトホラーをやり始めてラストも収集はつけるつもりがない。 ヒムラーの指令書を持っ…

足にさわった女

2016/2/5鑑賞 監督:増村保造 なんなんだろうな、この出鱈目な脚本。原作は何回も映像化されているらしい。あえて言うなら刑事と掏摸のスクリューボールコメディかな。 足にこだわるのは最初と最後だけ。両足に手錠をかけたりする、最後のかけあいなんかはと…

イコライザー

2014/11/7鑑賞 監督:アントワーン・フークア なんといってもホームセンターで繰り広げられる日用品版『ペイルライダー』が見物。デンゼルが真顔でアイテムを取り出す度に笑えるのだが、ライティングは決め決めだし、有刺鉄線と高枝切りバサミに殺された部下…

BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界

2018/3/7鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン 面白かった。 公演以外が面白いので、やっぱり映画と小説は少し似ていると思った。逆に公演の場面は、カメラの視点の制約が大きすぎるので、映画の利点をほとんど捨ててしまっている。 バレエシューズを並べる…

ウォー・ドッグス

2018/1/22鑑賞 監督:トッド・フィリップス 米国防総省に武器を売る20代のアメリカ人が、流れるように詐欺を働き流れるように逮捕される。アコギな商売ものとして、最初から最後まで一定の水準を保っていて楽しめた。ここにもジョナ・ヒルがいる。 人生訓と…

ジェーン・ドウの解剖

2017/12/6鑑賞 監督:アンドレ・ウーヴレダル 死体を解剖していくだけで段々と只事ではなくなっていくあたりのネタは面白い。またラジオの使い方が上手い。 ただ、肝心な場面で細かくカメラの視点を変え過ぎており、また切り返し過ぎているので、怖くなくな…

ワールド・ウォーZ

2017/8/15鑑賞 監督:マーク・フォースター マックス・ブルックスの小説『WORLD WAR Z』の映画化だが、世界規模のゾンビものという以外に共通点はほとんどなく、まったくの別物だと思った方がいい。 非常に移動の多い映画で、しかも世界規模だし、移動のきっ…

ハッピーニート~おちこぼれ兄弟の小さな奇跡

2017/9/13鑑賞 監督: ジェイ・デュプラス、マーク・デュプラス シャマランの映画『サイン』のことが好き過ぎる主人公が、『サイン』への愛を語るところから始まるので期待したが、顔の切り返しばっかりだし、カメラは無意味に揺れているし、無意味にズーム…

縞模様のパジャマの少年

2017/8/2鑑賞 監督:マーク・ハーマン 美しかった。冒頭から目を惹きつける映像だ。飛行機ごっこをして遊ぶ少年たちを捉えた躍動的な移動撮影から、きっちりと真横から撮られた絨毯を畳む仕事風景、そしてピカピカに磨き上げられた食器を整然と並べるショッ…

サイド・エフェクト

2017/09/25鑑賞 監督:スティーヴン・ソダーバーグ 精神科医と弱者女性という二人が、手段を選ばず持てるカード全てを使って殴りあうというのは楽しい。 ずり上げの多用と白昼夢っぽい映像のさらさら感。何もつかみどころがなく流れていく。唯一、鏡に映った…