呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#た行

ドライブ・マイ・カー

2022/10/15鑑賞 監督:濱口竜介 車の運転は運転でも、毎日の通勤の運転にともなうドライブの快楽にフォーカスが当たっていた。 異なる要素の同時成立という濱口映画のシステムが、演技の質の違いさえも取り込んで消化しており、非常にしみじみとスリリングだ…

尾けてくる(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:安里麻里 女子高生が帰宅中、公園の林のなかに作業着で立っている不審な男を見かける。 必要なのかどうか分からない寄りのカットもあり、全体的にラフな感じ。男の幽霊顔は絶妙なのだが、あまり印象に残らなかった。

ディストラクション・ベイビーズ

2016/6/2鑑賞 監督:真利子哲也 松山の港町から繁華街に出てきた凶暴な男、芦原泰良(柳楽優弥)が、道行く人間に次々と喧嘩を仕掛けていくと、高校生の北原裕也(菅田将暉)が泰良に興味を持ち、彼と行動を共にするようになる。泰良の喧嘩は段々と有名にな…

泥棒成金

2014/3/4鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック ブルーレイで見たら、驚異的な画質にびっくりした。 50年代のカラー映画がこんなにくっきり見えることなんて経験したことがなかったので、そういう意味でもびっくりなのだが、それ以上に映画自体がくっきり…

友だちのうちはどこ?

2020/1/9鑑賞 監督:アッバス・キアロスタミ 宿題のために絶対に必要な、友達のノートを間違えて持って帰ってきてしまったので、離れた友達の家まで届けに行くという話。主人公が小学生くらいの子供なので、『はじめてのおつかい』に近いハラハラ感がある。…

テラー・ビジョン

2016/3/27鑑賞 監督:テッド・ニコラウ とある一家が新しく購入した家庭用の衛星放送アンテナに雷が落ちたかと思いきや、そのアンテナを通じて遺棄された宇宙怪物が侵入し、一家を恐怖に陥れるのだった。 クリーチャーのデザインが良いのと、被害者一家が概…

共喰い

2013/9/20鑑賞 監督:青山真治 これは流石にデジタル撮影と題材との相性に疑問を感じた。 血の呪いが、殆ど物理法則のように機能している。「密告者は密告する」ように「男は女を殴る」ので、田中裕子は刺し、篠原友希子は妊娠をし、木下美咲は手を縛る、と…

天才マックスの世界

2021/4/29鑑賞 監督:ウェス・アンダーソン 19のクラブを掛け持ちしているせいで落第を繰り返している15歳の天才少年マックスは、ラシュモア学園のネルソン・グッケンハイム校長にとって「史上最悪の生徒」で、ついに退学処分をちらつかされてしまう。そんな…

天国はまだ遠い

2018/05/22 鑑賞 監督:濱口竜介 38分ほどの小品。 女子高生の幽霊(三月)と同棲するAVのモザイク付け職人が、ふとしたことで、亡くなった姉に捧げるドキュメンタリーを作っているという三月の妹・五月からインタビューを受けることになる。 面白かった。実…

ダイアナ

2016/5/26鑑賞 監督:オリヴァー・ヒルシュピーゲル ウェールズ公妃ダイアナの最後の2年間を描いた伝記映画で、ダイアナ役はナオミ・ワッツ。 15年程度しか経っていない事件に対して企画を立てるというのもどうかと思うが、素材としても意外に難しい題材…

ダメ男に復讐する方法

2016/5/15鑑賞 監督:ニック・カサヴェテス キャメロン・ディアスのラブコメだから見たんだけど、なんというか掴みどころがない……ディアスはツッコミ役で、むしろ彼女の浮気相手の妻(レスリー・マン)の方がクレイジーだし、音楽ないし、テンポもゆっくりし…

突然の花婿

2016/5/18鑑賞 監督:ダグラス・サーク なんというバカ結婚喜劇! 『ぼくの彼女はどこ?』のママをパワーアップさせて、図々しい居候を15倍に増やしたら『突然の花婿』になると思う。軍隊から休暇を貰ったら、新妻と暮らすはずの実家が妻のママとその15人…

翼に賭ける命

2017/2/28鑑賞 監督:ダグラス・サーク 完璧なアメリカ映画だった。増村のようなモダンな使い方とはまた違った、古典的なシネマスコープのモノクロ映画ってこういう風にやればいいのか。増村の『爛』でも思ったが、シネスコにおける仰角ショットの水準がここ…

地下に潜む怪人

2016/11/07 鑑賞 監督:ジョン・エリック・ドゥードル パリの地下深くにあるカタコンベに潜り込んだ研究者の一団が、その迷路のような空間に迷い、踏み込んではいけない領域に入り込んでしまう......という内容を全編フェイクドキュメンタリーで撮影している…

魂のゆくえ

2020/02/26鑑賞 監督:ポール・シュレイダー 自暴自棄になる環境保護活動家を救うことに失敗した牧師が、やはり自暴自棄になっていく話。ほぼ自殺についての映画という感じだが... 厳格でシンプルなレイアウトを用いて、役者のアドリブを許さない、抑制され…

チェイサー

2020/9/15鑑賞 監督:ナ・ホンジン 基本的にやっていることはミッドポイントを通常よりも前倒しにして、2回作ること。これを学習して『ファイアパンチ』と『チェンソーマン』を描いた藤本タツキの応用力の高さに驚く。 2回目のミッドポイント(?)がちょ…

突破口!

2013/7/24鑑賞 監督:ドン・シーゲル 傑作。冒頭の銀行強盗シーンでいきなり引き込まれる。 何やら牧歌的で、太陽の逆光を多用する審美的なショットから始まったかと思えば、看板を映すカメラがクレーン移動して、自動車が入って来るなり銀行強盗シーンが始…

テレフォン

2013/5/31鑑賞 監督:ドン・シーゲル 電話で怪しげな詩を聞かされた一般市民が、催眠術にかけられたように軍事施設に攻撃をしかける事件が連続する。調査すると彼らはソ連に留学した経験があった......という冷戦時代らしい内容のアクション、サスペンス映画…

トレイン・ミッション

2018/3/31鑑賞 監督:ジャウム・コレット=セラ コレット=セラとリーアム・ニーソンのタッグ4作目で、面白かった。特に最初に出てくる死体にはびっくりした。 列車という物体を扱う際、ポン・ジュノだったら縦に細長い空間を縦に動くのだが(その例外とし…

タイピスト!

2014/5/15鑑賞 監督:レジス・ロワンサル お見事なスポ根ラブコメ映画。 タイプライター早打ちの世界大会で優勝することを目指すために、ヒロインと保険代理店の経営者が二人三脚で特訓をする。その過程で二人に愛が芽生えるという王道のストーリー。 横溢す…

第7鉱区

2013/6/3鑑賞 監督:キム・ジフン 東シナ海に浮かぶ石油ボーリング船を舞台に、閉鎖空間での怪獣との戦いを1時間40分ほどの映画にしている。 面白い。照明が明る過ぎるとか、演技がテレビ的だとか、ケチのつけようは色々とあるが面白い。 一本道を逃げながら…

大砂塵

2018/8/5鑑賞 監督:ニコラス・レイ 西部劇に出演しても『何がジェーンに起ったか?』をやるジョーン・クロフォードという感じで、女と女の決闘があり、男たちは「誰かとめろよ」と何か遠慮がちに事態に絡んでいる。 評価の高い作品だが、自分には面白さがわ…

ドレミファ娘の血は騒ぐ

2017/2/7鑑賞 監督:黒沢清 脈絡なく強いショットが並ぶので興奮するけど、作品の制作背景にもなっている当時の時代背景や80年代のノリが古びてしまっていて、こういう時代があったんだなという感慨に耽ってしまう。ゴダールの影響を受けたシネフィルっぽい…

デッド・サイレンス

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 父の館だの、人形劇の劇場だのがカメラに真正面から捉えられて「どーん」と出てくる場面に、これは怪奇映画だということを強く印象付けられる。 人間人形といい、湖上の劇場といい、朽ち果てた劇場の内装といい、100…

トールマン

2013/12/9鑑賞 監督:パスカル・ロジェ 面白い。ジェシカ・ビールが冒頭でお岩さんのように傷だらけになっていて、作中でもやっぱり傷を負うんだけど、何度傷を負っても冒頭の怪我になかなかたどり着かないという焦らしで引っ張る。工夫されたシナリオでも引…

TAKESHIS'

2015/6/25鑑賞 監督:北野武 劇中劇の銃撃戦に見られるように、静から動に移る居合じみた編集は相変わらずカッコいい。 『去年マリエンバートで』みたいに違う時間軸の映像が現在を貫いて出てくるような編集も最初はよかった。 美輪明宏とすれ違うところの複…

ダーリン・イン・ザ・フランキス

鑑賞日不明 監督: 錦織敦史 設定的には、ATフィールドのないエヴァという感じで、最初の方はエヴァ第9話「瞬間、心、重ねて」を反復し、掘り下げていくようなシリーズになるのかなと思った。実際序盤は概ねそういう感じだった。 面白いと思ったのはパー…

大列車作戦

2014/11/21鑑賞 監督:ジョン・フランケンハイマー 画面に奥行を持たせ、そこに様々な人間を歩かせ、作業させて画面を豪華にしようという思想が垣間見え、室内にも大きな窓を配置する。 空爆シーンを大俯瞰で見せてくれるし、その際にも野外セットを豪快に粉…

ドロメ 女子編

2016/11/16鑑賞 監督:内藤瑛亮 全体としては【女子編】のほうが単体の作品としてよくまとまっていて、【女子編】に残った謎が、【男子編】で解かれる内容になっているので、【女子編】→【男子編】という順番で見ていくのがいいと思われる。 まず、全体の感…

続きをしよう(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:内藤瑛亮 墓場で子供が鬼ごっこをしていたら、次々と怪我をしてしまうというストーリー。 怪我をした子が、まるで嫌な飲み会から抜けるかのようにいい笑顔で「じゃ、これで」と去っていくのでコメディのような雰囲気が漂う。そして、怪…