呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

レディ・アサシン

2013/5/4鑑賞

  • 監督:オリヴィエ・アサイヤス
  • 傑作。原題は"Boarding Gate"。
  • 元娼婦のサンドラ(アーシア・アルジェント)が、やや不本意な形で人殺しになる。
  • 映画冒頭、金属のドアがひしぐ音を聞いた瞬間に気づいたのは、画面のフレーム内全てにピントが合わずボケているのは、私達観客の視覚を奪い、聴覚を奮い立たせるためである、ということだ。それくらい、音がいい。ほとんど音の映画だ。ちなみに音楽はブライアン・イーノが担当しており、したがって本作のBGMは全編、環境音によって響いている。
  • 例えばこの作品は、誰も乗っていないエレベーターの稼働音さえクリアに入れるし、段々それが単なる稼働音に聞こえなくなってくる。人が歩けば必ず足音が聞こえるというのは当然のことだろう。
  • アーシアが初めて人を殺す場面、手錠が現れた瞬間、これから起こる殺人を期待して興奮してしまう。この場面あってこその、あのじれったいラストシーンが輝くのだろう。
  • 人間一人を隠すためにもはや暗闇は必要なく、匿名的な風景があればいい。『デーモンラヴァー』、『レディ・アサシン』、『アウトレイジ』シリーズ、『ドラッグ・ウォー 毒戦』に同時代的な共鳴を感じる。