呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

湖のランスロ

2016/10/31鑑賞

  • 監督:ロベール・ブレッソン
  • めちゃくちゃ面白かった。アーサー王伝説の話なんだけど、いきなり騎士の首がチョンパして切断面が見えるわ、血がドバドバ出るわ、で即物的な中世残酷絵巻になっている。また、史劇という大きなものを、小さな形式に押し込める面白さから発想されているように感じた。
  • それでも予算はかなりかかったようで、DVD付属のパンフレットによれば馬は買ったらしい。
  • 画面外(オフスクリーン)からくる音が「死」を意味することが冒頭で提示され、セリフでも示され、その後、オフからの音を使い倒すことで史劇を小さくする。
  • オフの音がサスペンスを駆り立てる、ということがうんざりするほど繰り返されるので、段々と「いつオフから音がくるか」というサスペンスに転倒していく。あの鳥のギエエって声(笑)
  • 甲冑で顔を隠すのも同様。コピペみたいな反復も同様。省略も同様。大きなものを小さくする。
  • 役者、動作、衣装、美術のどれもが完璧ではなく、とりあえず揃えましたという感のあるもので、しかし音だけは生々しく完璧である。ブレッソンが音にこだわるのは、音さえ生々しければ、他の要素の不完全さが、観客に想像力を働かせるトリガーになるのではないかという狙いがあるんじゃないかと思った。
  • いずれにせよ、こういう風に大きな映画を小さく撮ることができるのではないかと思わせる点が罪作りだ。実際は、小さくするための具体的な手立てを思いつくことができることこそ才能なんだろうな。雨が降ってきたところで杭を打つのだが、その細部を選択するのか、という驚きがある。