呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

呪怨 黒い少女

2022/2/13鑑賞

  • 監督:安里麻里
  • 時系列や視点をバラバラにして、怪奇現象に襲われる短い挿話を束ねたような形式(これ自体は呪怨シリーズ共通)や、デジタル撮影の画面のきつさ(黒の多いカラー映画)、そもそも低予算であること、救いのない展開、などなどがあいまってフィルムの雰囲気が荒々しく、殺伐としていて楽しめた。
  • 壁やドアを一定のリズムで叩く音が繰り返し出てくるが、これは同監督の「影男」でも使われていた手法だ。
  • 一番完成度が高いと思ったのは、冒頭の学校の場面と、クライマックスの屋上の場面(ジェームズ・グレイ『リトル・オデッサ』みたいじゃないか?)。
  • 霊能力者の妹に除霊を頼むパートがそれに次いで映像面で頑張っていた。除霊対象のいる部屋にいく際に、「密室だから」とエレベーターを避けさせた上で、階段前でオーラを感じて立ち止まらせるという演出がごく普通の場所を、決戦地に変えるのだ。
  • 肝心の幽霊はどれも出てくると怖くないのが傷だけど、最後、黒い少女が路地を歩くところを捉えた横顔のショットは異物感があってカッコいい。
  • 冒頭の学校の場面は、監督が影響を受けたというアルジェント『サスペリア2』の場面を彷彿とさせる。

そのなかで一番大好きなシーンが冒頭にあるのですが、主人公の男が夜道を歩いていると「ギャー!!!」という女の叫び声を聞いて振り返る。見ると、遠くのビルの窓のひとつに女がはりついている。女は助けを求めるように懸命に叫んでいるようだけど、ガラス越しで何も聞こえず、口がパクパクしているだけ。と、その女の背後に斧を持った殺人鬼が現れて女の頭に斧を振り下ろす。ガラスごとバリーンと割れて女が窓外にダラリとなるのを、主人公が目撃するというところです。 ダリオ・アルジェントお得意のショッキング・シーンなんですけど、これは初めて観たとき驚きました。その音の使い方に。女の叫び声で振り返らせておきながら、振り返ったらガラスの向こうの女の声は無音という、こんな都合のいい音のつけ方があるか?!って。でも、この音のつけ方がショックを生み出しているんだと思うんです。叫び声で振り返ったあとに、無音で口をパクパクさせている緊張感があって、ついに犯人に襲われた瞬間、衝撃音が戻る。