呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

『ゴジラS.P』第4話「まだみぬみらいは」

2021/4/15鑑賞

  • 監督:高橋敦史
  • 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔
  • 当然ネタバレです。
  • アーキタイプと呼ばれる「存在しない物質」の説明をして、必要なキャラクターを残り全部まとめて出す、繋ぎ的な回だがやはりとても面白い。李博士に呼ばれてドバイまで行く神野銘と、連れ去られたラドンの死体を追っていくうちに胡散臭いジャーナリストと遭遇する有川ユン。二人はメッセージアプリで連絡を取り合っている。
  • 前回、有川ユンから出されたクイズはハッシュ関数の一つであるMD5によって出力されたハッシュ値であることがわかる。MD5で計算されたハッシュ値は、仮に元のメッセージがどんな長さであったとしても128ビットになり、同じ入力値からは必ず同じ値が得られる一方で、少しでも異なる入力値からは全く違う値が得られる。また、暗号化と違って、ハッシュ値から元のメッセージを復元することは(基本的には)できない(よって一方向性ハッシュ関数などと呼ばれるらしい)。
  • ハッシュ値の元のメッセージを見つけるために、ドバイへの移動中そこらにあるものをひたすら挙げ続ける神野と、それに「違います」と答え続けるペロ2の様子が楽しげに活写される。このシーンによって「MD5を総当たりで解くのはまず不可能」ということを観客に納得させ、また総当たりの一つに「ドバイ国際空港」を入れることで、ドバイに行っているということを自然に説明している。移動シーンとしてもあまり見たことがない趣向なので面白い。
  • 実は正解は最初から有川ユンが送っていたメッセージにあった、ということがわかるのだが、これをヒントとして、作中ガジェットである「アーキタイプ」とMD5の関連性が説明されるのだ。どんな分子とも似ていないアーキタイプを見つけるには、可能な分子の配置を総当たりで試す必要がある。それこそMD5ハッシュ値を総当たりで探すように。よって不可能なのだが、実際にアーキタイプは発見されている。なぜか、、、と言うのが新たな謎である。理由は「ものすごい計算機があるから」なのか、それとも「見つけた奴がすごい天才だから」なのか、「ものすごい強運の持ち主だから」なのか、あるいは「最初から答えを知っていたから」なのか。あらかじめ答えを知っていないと解けない問題。
  • ラドンが、世代交代をせずにどんどん進化している可能性についても言及されている。
  • 有川ユンがアーキタイプを見つける確率の低さに語る際に、「猿がタイプライターを叩いて偶然シェイクスピアの『マクベス』を打ち出すくらい(うろ覚え)」という例を出している。そして、ウィキペディアによればリチャード・ドーキンスが、著作『盲目の時計職人』において「自然淘汰にはランダムな突然変異から生物学的な複雑性を生み出す能力がある」ということを説明する際にこの話を持ち出しているらしい。よって、有川ユンのMD5アーキタイプの類似性についての話は、ついでに進化についても同様のことがいえると仄めかしていると読んでもいいだろう。
  • 進化も総当たりで問題を解いているとも言えるし、結果は未来にならないとわからない。しかし、未来をあらかじめ知っていれば、どのような形態になるべきかもあらかじめ分かるはずだ。
  • 最後はアンギラスが出てきてヒキ。
  • 今回の話を読んで、タイトルも何かの変換なのか?と思ったが果たして。