呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

フレフレ少女

2022/6/30鑑賞

  • 監督:渡部謙作
  • 毒にも薬にもならない青春映画です、という顔をしていながら実は凝った映画だったということはままあるが(例:『奈緒子』)、これもそういう一作。
  • 小説の中の恋に憧れる高校生、百山桃子はあるとき野球ボールを頭部に受けて昏倒してしまう。百山はボールを当てた張本人である大嶋に保健室で介抱され、平謝りされるうちに惚れてしまい、彼を応援するために応援団に入るのだが、その実力・士気は低く、せっかく団員を集めたものの応援はズタボロで野球部も惨敗し、当の野球部から「もう応援に来なくていい」と拒絶されてしまうのだった。
  • 百山桃子を演じるのは新垣結衣であり、しかも『恋空』の翌年なのでガッキーのアイドル映画という感がある。しかし、公開から15年以上が経過し、話題にしている人はあまり多くない。そういうところもアイドル映画っぽい。
  • 部員の一人に染谷将太がいる。
  • 新垣結衣が応援団に入団することになったきっかけである大嶋は、ストーリーの序盤に別の学校に転校してしまい、その後の恋の進展はむしろ応援団副団長の山本龍太郎にフォーカスされていく。
    • このように大嶋はマクガフィンであり、新垣結衣が応援団に入るきっかけでしかないのだが、一方で、恋愛ものでは初期の本命キャラと、ストーリー中で実際に恋愛描写が進んでいくキャラが違うというのはままあるテクニックだとも言える(すごく特異なこととも思えない)。
  • 窓をいっぱい活用して背景でモブを動かす意識があり、またカットが割られないことに驚きがある(撮影の一回性)。光にも気が遣われている。そういった諸要素から、2022年に見てもどこか、その場にしか流れていない「現在」が映っているような気がするのだ。
  • 屋上から聞こえてくる副団長の掛け声に百山が振り向く場面(カメラは上にパンする)、ここはカットを割って欲しくないと感じるショットで、事実割られない(これに対応する終盤の振りむきショットも同様に)。
  • 題材が応援団なので、多くの人が同じ方向を見ることや、同じ動作をするということの感動がある。またそんな演出の中で、新垣結衣と山本龍太郎だけが視線を交わすショットもあって、そこだけがプライベートな空間になっている(公・私の空間の使い分けこそが恋愛感情を演出する)。
  • 応援団OBの詰め込み合宿については今ならパワハラで問題になりかねない気もするが、まあ応援団なのに声が出てないことは詰められるべきだし、練習が足りてない(というか練習の描写がそれまではない)のは事実なのでそれほど不快感はなかった。
  • 公開当時20歳だったはず(撮影当時はもう少し下か?)の新垣結衣はまったく高校生に見えないし、声が細すぎて応援団にも向いていないけど、そういった点も含め当時の新垣結衣を収めたドキュメンタリー的な価値も感じる映画だ。ただ少し長い。
  • 監督の渡辺謙作鈴木清順の弟子らしい。(特に本作は清順っぽいわけではないが)