呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

ドライブ・マイ・カー

2022/10/15鑑賞

  • 監督:濱口竜介
  • 車の運転は運転でも、毎日の通勤の運転にともなうドライブの快楽にフォーカスが当たっていた。
  • 異なる要素の同時成立という濱口映画のシステムが、演技の質の違いさえも取り込んで消化しており、非常にしみじみとスリリングだった。 つまり『寝ても覚めても』ではわりとゴロっと並置されていた演技の質の違い、が今回は劇中劇を通じて消化されていた、ということである。
  • 例えばそれは、三浦透子の実家跡を尋ねたあと西島秀俊が感情吐露する場面での、あからさまに陳腐な感情芝居と、対比的な劇中劇ラストでの手話と字幕で示されるチェーホフのテキストとかがそうだ。
  • 役者を、テキストを読む装置にすることで生まれてくる何かがある。メッセンジャーが、伝言の内容、意味を知らないことによって生じるエモーションのようなものが。
  • 子供が亡くなったあと長年子なしの夫婦の会話がある。2人目を産むべきだったかどうか。それは自分にとっては、答えがあるのかどうかさえわからず、想像することすら辛い人生の隘路のように思える。人生には未探索の領域が沢山あるのだと思った。探索したくはないけど。