呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#さ行

ザ・テキサス・レンジャーズ

2019/04/15鑑賞 監督:ジョン・リー・ハンコック いわゆるボニーとクライドものだが、視点が犯罪者側ではなくそれを追う警察側にある点でやや珍しい。有名な元テキサス・レンジャーの捜査官フランク・ハマーをケビン・コスナーが、その相棒メイニーをウディ…

それでも夜は明ける

2014/4/6鑑賞 監督:スティーブ・マックイーン 自由黒人だったのに誘拐され、南部の農園に売られて黒人奴隷にさせられたソロモン・ノーサップの伝記に基づいた映画。 牧歌的光景と地獄が交互に(そして同時に)現れては、それが音楽や絵作りによって繰り返し…

ジャンゴ 繋がれざる者

2013/3/1鑑賞 監督:クェンティン・タランティーノ 「ジャンゴ」とあるからにはマカロニ・ウエスタンなのだろうと思って見ると、実際にはそこまで関係がなく、むしろサム・ペキンパーとの共通点の方が多くある。 また蓮實重彦がどこかで「西部劇だと思わなけ…

ゾディアック

2016/09/16鑑賞 監督:デヴィッド・フィンチャー 1960年代終わりから1970年代に実際に起きた「ゾディアック事件」の関係者の顛末を年代記的に語った実録犯罪映画で、ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニーJrが出演する。 要するに、…

空飛ぶ生首

2015/12/4鑑賞 監督:バート・I・ゴードン 主演女優がどちらも下品で、特に最初に死ぬほうが巨乳で怪しいので、なんというか序盤が一番B級映画としては艶があったな。この女優が死んでからは子役の女の子が頑張ります。 ちなみに、生首は空を飛ばないし、主…

スリーピング ビューティー 禁断の悦び

2016/12/22鑑賞 監督:ジュリア・リー 光がいい。エミリー・ブラウニングの肌がまばゆいほど白い。そのためか美術・調度品の贅沢さも無駄にならない。 時折現れる和風要素に困惑しながら見ていたが、原作が川端康成「眠れる美女」らしい。

ザ・ベビーシッター ~キラークイーン~

2020/09/12鑑賞 監督:マックG いい部分もないではないけど、前作から20分ほど増えた上映時間が脚本の贅肉を増やしており、代わりに意味不明なテンションが増幅されて大変きつい。 ロケーションが街中から野外に移ったことも展開をだらしなく発散させている…

最後の追跡

2019/01/08鑑賞 監督:デヴィッド・マッケンジー 「44年働いているがステーキとポテト以外を頼んだ客はいない」というセリフが出てくるが、まさにそういう映画だった。定食屋で出てくるいつもの定食。 こういう話がまだ通用しそうなテキサスっていったいど…

世界の終り

2013/9/26鑑賞 監督:ジョン・カーペンター 見た人間を発狂させる幻のフィルムを追うというストーリー。 とても面白かったが、どうしてなのかが分からない。とんでもないことが起こっており、しかもそれが映画の嘘だということは分かりきっているにも関わら…

サイレントヒル

2013/5/19鑑賞 監督:クリストフ・ガンズ ゴシックアート博覧会とでも言うべき美術の映画。ロングショットの多さとか、空間構造を見せようという気概もこれが美術の映画だからに過ぎず、説話的な部分、特に視点制御に関心が薄いように見えた。 例えば、「室…

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

2020/06/28鑑賞 監督:グレタ・ガーウィグ 素晴らしかった。画面の感情や表情がころころと変わり、編集で驚きを作っていく手法はそのままだが、原作ものの制約からか少しだけ抑えめ(実際、かなり忠実な内容)。その代わり、時系列を入れ替えた語りが採用さ…

THE GREY 凍える太陽

2013/8/17鑑賞 監督:ジョー・カーナハン 飛行機事故でアラスカに不時着陸し、遭難したリーアム・ニーソンがサバイバルする映画。 自然の脅威が厳しくリーアム・ニーソンを襲い、救いがないので、過去の思い出やら言葉に縋る心理的な展開になってしまう。打…

スプリング・ブレイカーズ

2018/8/16鑑賞 監督:ハーモニー・コリン 2013年にも一度見ていたが、その時はピンとこなかった。 久々に見ると非常によかった。敵役の造形が弱い(とってつけたような)ところ以外は、完璧に最高だった。 『拳銃魔』のようなダイナー強盗長回しがあって、建…

ジュラシック・ワールド 炎の王国

2018/7/18鑑賞 監督: J・A・バヨナ 狭い屋敷内を恐竜が動き回り、地下のオークションではパキケファロサウルスが人々を頭突きで飛ばしまくる、恐竜版ゴシックホラーが展開される後半(カーテンもゆらゆらと揺れる)。 また、レイ・ブラッドベリ「霧笛」的な…

その夜の妻

2016/10/27鑑賞 監督:小津安二郎 サイレント映画。アメリカ映画っぽいことをやっていた頃の小津。 病気の子供のために強盗を働く夫と、それを捕まえに来た刑事に拳銃を向ける妻。一晩、家で子供の看病をし、刑事に拳銃突きつけたまま寝ずの番をする。この展…

驟雨

2021/2/6鑑賞 監督:成瀬巳喜男 『めし』同様、子供のいない倦怠期の夫婦(しかも貧しい)のながーい夫婦喧嘩を、近所付き合いなどを交えてドラマにしたという感じ。妻が原節子で、夫が佐野周二。タイトルは、途中で一度、突然の大雨が降って場面転換が起き…

死霊館

2013/10/20鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 前半はよくある古風なホラーかと思っていたら、後半から二つの家族が結束して悪魔と戦うアメリカ映画お得意の流れに乗っかってきて、ホラーというよりは家族の映画、チームの映画として燃える展開になる。 最初バラバ…

ソウ

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン パッケージの印象で勝手に「白い」映画だと思っていたが、バスルームは念入りに汚されており不快なほどだ。さらに、写真家の作業場や、医者が浚われる駐車場もまた徹底的に汚されている。 21世紀にあんなスイッチで照…

死霊のはらわた

2013/11/7鑑賞 監督:サム・ライミ ロバート・キャンベルの濃い顔が本作を支えている(と言えば多分サム・ライミの多くの映画がその過剰さに見合った顔の俳優に支えられているのかもしれないが)。 ただ本作の過剰な多視点と妙な構図からは、映画小僧として…

しとやかな獣

2013/9/15鑑賞 監督: 川島雄三 (ほぼ)全員悪人。守銭奴一家の住まう団地で繰り広げられる、金と性との暗黒喜劇。 尋常ではない構図、尋常ではないパンフォーカス、尋常ではないフィルムの発色。 どうして面白い構図になるかと言えば、基本的に手狭な中で…

女優霊

2013/1/10鑑賞 監督:中田秀夫 とにかく、ラッシュを観る場面が悉く怖い。霊の来歴を調べても、そもそも出自からして架空の存在で、いるはずのない女だというのが怖いし、未現像フィルムの映像は彼が最後に観る光景だったという凄まじさ。 あとは、ホラー映…

素晴らしき休日

2014/6/19鑑賞 監督:ジョージ・キューカー 演劇っぽくあるけど、楽しい。キャサリン・へプバーンがクローズアップのカットを交えながら初めて父親に真っ向から反論する場面では思わず目頭が熱くなってしまった。あの「遊戯室」の多幸感。 リュー・エアーズ…

早春

2018/8/23鑑賞 監督:小津安二郎 凄かった。あの蓮實重彦の「映画は見つめ合う瞳を映せない」とか何とやらといった言葉と、小津の真正面からの切り返しの関係性を初めて心から体感した。 終盤、浮気騒動で仲たがいした夫婦が地方にやって来て和解する場面。…

ストロンボリ

2014/6/3鑑賞 監督:ロバート・ロッセリーニ スペクタクルに感じたのはバーグマンでも火山でもなく、マグロ漁だった。船の上に密集して並び立つ男たちが引き揚げ始めても中々姿を見せないマグロは、まず水飛沫と不気味な音として現れ、しばらくして水飛沫が…

座頭市血煙り街道

2014/6/4鑑賞 監督:三隅研次 勝新の殺陣の荒唐無稽さがよくわかる一本。段差に転げながら斬る、柵越しに斬る。 ラストの近衛十四郎との殺陣の途中に、木の骨組みに引っ掛かって一回転後ろにひっくり返ったかと思えば、刀の先から血が流れてきて、近衛十四郎…

ジェーン・ドウの解剖

2017/12/6鑑賞 監督:アンドレ・ウーヴレダル 死体を解剖していくだけで段々と只事ではなくなっていくあたりのネタは面白い。またラジオの使い方が上手い。 ただ、肝心な場面で細かくカメラの視点を変え過ぎており、また切り返し過ぎているので、怖くなくな…

縞模様のパジャマの少年

2017/8/2鑑賞 監督:マーク・ハーマン 美しかった。冒頭から目を惹きつける映像だ。飛行機ごっこをして遊ぶ少年たちを捉えた躍動的な移動撮影から、きっちりと真横から撮られた絨毯を畳む仕事風景、そしてピカピカに磨き上げられた食器を整然と並べるショッ…

サイド・エフェクト

2017/09/25鑑賞 監督:スティーヴン・ソダーバーグ 精神科医と弱者女性という二人が、手段を選ばず持てるカード全てを使って殴りあうというのは楽しい。 ずり上げの多用と白昼夢っぽい映像のさらさら感。何もつかみどころがなく流れていく。唯一、鏡に映った…

ザ・コンサルタント

2017/7/15鑑賞 監督:ギャビン・オコナー コミックヒーロー的なアクション映画と、自閉症のプレゼンテーションが混ざったような変な映画。自閉症=天才みたいな描き方はコミックの設定としてはいいけど、啓蒙的な意図があるなら不味いんじゃないだろうか。適…

新選組始末記

2017/1/13鑑賞 監督:三隅研次 まことに贅沢ながら、三隅のベストラインから比較すると陰影や人工性など、ショットが弱いと感じてしまう。けど、面白かった。三隅で実録ものって新鮮だな。 容易に男女を見つめ合わせたくないという演出方針が見える。最初の…