呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

ゾディアック

2016/09/16鑑賞

  • 監督:デヴィッド・フィンチャー
  • 1960年代終わりから1970年代に実際に起きた「ゾディアック事件」の関係者の顛末を年代記的に語った実録犯罪映画で、ジェイク・ギレンホールマーク・ラファロ、ロバート・ダウニーJrが出演する。
  • 要するに、謎解きや資料調べにはまっている時のあのランナーズハイ的な心地よい弛緩した時間についての映画なんだと思う。調べものし過ぎて陰謀論にはまっていく感じというか、色々と身につまされた。最後にとうとう上手く辻褄の合う解釈を見つけてしまった時の爽快感に覚えのある人は多いはず。「落ち着けよダーティハリー」というセリフには感動してしまった。
  • 主人公は仕事でゾディアックを追っていたわけではなく、趣味だったのが功を奏したので、2度目に見たときには存外爽やかな映画だという印象を受けた。
  • 160分近い上映時間ながら、意外に無駄なカットは見当たらない。あるとすれば、サスペンスシーンのために無意味に引き延ばされる時間だが、ここはフィンチャーらしい弛緩した時間経過の雰囲気がよい。例えば、冒頭の殺しの場面で一度通り過ぎたあと引き返してくる車であるとか。
  • 思うにこの映画や、『ブラック・ダリア』(原作の方)のように、事件そのものというよりは、その事件に関わった人間がいかなる影響を受けるのかを長い時間経過の中で語る年代記的な作品については、上映時間を2時間で納めるのが困難なのだ。実際、映画版『ブラック・ダリア』は2時間程度の作品になっているが、原作の年代記的な記述を大幅に割引いている。
  • 美術は丁寧に当時の時代を再現しているが、わかりやすく70年代的な意匠はあまり使っていないように見えた。当時公開されていた『ダーティハリー』の使い方も渋い。
  • 撮影はハリス・サヴィデスで、印象的な冒頭の夜間の殺人シーンからもうライティングが見事で引き込まれる。