拾った女
2022/1/15鑑賞
- 監督:サミュエル・フラー
- 前科3犯のスリ、スキップ・マッコイはNYの地下鉄でキャンディという娘から金入れをくすねるが、実はそれは赤色スパイの依頼で運ばれていた機密フィルムで、張り込んでいた警察と、知らずに運び屋になっていたキャンディ経由で事実を知った雇い主の双方から、マッコイは狙われることとなる。
- スキップ・マッコイをリチャード・ウィドマークが、キャンディをジーン・ピータースが演じている。
- 薄着でうろつきハスキーボイス(というか酒焼けした声?)で喋るジーン・ピータースと、つるっとした悪役顔のリチャード・ウィドマークとが、お互いの腹をさぐりあいながら恋に落ちていく・・・というと分かりやすいが、そもそも隠れ家で出会った時点で既に恋に落ちている。その後は、駆け引きを続けながら殴ったり、殴られたりと忙しいが、別に病的なDVカップルだというわけではなく、紆余曲折あるなか、流れでお互いに暴力を振るうという具合だ。
- マッコイは海沿いで、海上に建てられた小屋のような場所をアジトにしている。普段からビールの入った箱を海中に落として冷やしつつ、それをロープでたぐり上げて飲むのだが、実はフィルムもそこに隠されている。このアジトは本作で頻出の舞台。
- 元女スリで、警察の情報屋もやりつつ、貯めた金で自分の墓を買おうといる老女モウをセルマ・リッターが印象的に演じている。動機が老後の年金ですらなく、墓代というのがなかなかすごい。
- スリ稼業同士のシンパシーからか、マッコイとモウの間には奇妙な信頼関係が残っていて、お互いのことを何か知った風に語るのだが、それに対置されるのがキャンディの雇い主である赤色スパイたちで、スリよりも忌み嫌われた存在として終始描写される。赤色スパイとも取引をしようとするマッコイを、モウが窘めるのである。
- 一方、警察も前科3犯のマッコイとは知った中で、4犯になれば終身刑になるところを、赤色スパイ逮捕に協力すればチャラにしてやると取引を持ち掛けるのだ。ここでも、どこか腐れ縁や悪友的な立ち位置の警察とスリらに対して、赤色スパイという部外者が対置される。
- とはいえ、スリにも愛国心はある……といった盛り上げ方にいまいちピンとこず、アクションシーンも意外と少ないので、評判ほど楽しめなかった。
- 二度あるスリのシーンや、終盤の過剰な殴り合い(というか一方的な殴り)が見どころだった。