呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

泥棒成金

2014/3/4鑑賞

  • 監督:アルフレッド・ヒッチコック
  • ブルーレイで見たら、驚異的な画質にびっくりした。
  • 50年代のカラー映画がこんなにくっきり見えることなんて経験したことがなかったので、そういう意味でもびっくりなのだが、それ以上に映画自体がくっきり隅々まで見ることを許してくれていることが大きい。
  • 本作はヒッチコックとしても初のワイドスクリーン(スタンダードサイズより横長の画面)であり、新開発のビスタビジョンで撮影されているわけで、画質も依然より向上し、画面も大きくなったということで存分に「見る快楽」に奉仕する映画を撮ってくれたような趣がある。
  • ケーリー・グランドとグレース・ケリーという美男美女(歳の差はあるが)が、リヴィエラの高級リゾート街で泳いだり、ドライブしたり、キスしたり、花火をバックにまたキスしたりというバカンス映画なのでもうこの時点で観客の見る快楽に全奉仕という感じだが、加えてパンフォーカスを連発。近景も遠景も隅々までフォーカスが当たってくっきり見える。序盤のカーチェイスでも、超ロングの空撮で、豆粒のような車の追いかけっこをくっきり隅々まで見える映像で見せてくれるし、なんだかとてつもなく贅沢である。
  • 贅沢と言えばグレース・ケリーのお色直し。青いドレスに、白いドレス、ピンクのスカーフ姿や、水着姿。果てにはパジャマ姿まである。サスペンス的な筋立てもちゃんと用意されているのだが、基本的にこのグレース・ケリーの衣装替えをリズムにして映画を作っている節がある。フェードアウトによる場面転換の多さも踏まえると、この映画はジム・ジャームッシュ『リミッツ・オブ・コントロール』の先祖の一つなのかもしれない(あれも着替えの映画だった)。
  • 花火を背景にしたラブシーンで、グレース・ケリーが背後に下がって顔が真っ黒になり首筋の宝石だけが怪しく光るところが、緑の光も相まって『めまい』を髣髴とさせた。
  • 猫顔のブリジット・オーベールダブルヒロイン制の常として、グレース・ケリーの他に配置されており、「水着姿で横になったところを横長の画面で撮る」という当時最新の技術を利用したサービスシーンもちゃんと用意されている。ヒッチコックはエロい。
  • というわけで、「巨匠は小品から入るべし!」がモットーの自分としては、このヒッチコックはオススメだし、是非ブルーレイで見て欲しい。

  • 以上は本体ブログの記事を一部修正のうえ再掲載したもの。 clementiae.hatenablog.com