呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#2000年代

誘拐犯

2021/2/19鑑賞 監督:クリストファー・マッカリー 若い無法者二人組が、代理母を誘拐して金持ちから身代金を強請ろうと画策するのだが、実はその代理母の依頼主は裏稼業とも通じている大物で、二人の計画は狂い始める。 代理母がまず心変わりして子を自分の…

裏切り者

2013/5/12鑑賞 監督:ジェームズ・グレイ 刑務所帰りの男(マーク・ウォールバーグ)が叔父の経営する会社に就職するが、そこには悪友(ホアキン・フェニックス)の姿があり、やがて男は入札に係る汚職や談合に巻き込まれていく。 マーク・ウォールバーグと…

引き裂かれた女

2013/4/5鑑賞 監督:クロード・シャブロル 美男美女揃いでゴージャスな色使い、小道具、衣装、建築で飾られる退廃のメロドラマ。 ちょっと筋を追えなくなるくらいに編集でバシバシ場面を切っていくのがすごい。洗練というのとはまた違う奇妙な説話だ。 それ…

石の微笑

2016/2/20鑑賞 監督:クロード・シャブロル ネタバレしてます。 冷たい傑作。冒頭の白くて被写体がよく見えないショットから冷たい。 青い屋根の色が映画全体のテーマカラーになっていて、殺された女のソックスやドレスにまで通底する。 人生を完全にするた…

ブラックブック

2013/8/18鑑賞 監督:ポール・バーホーベン バーホーべンの即物性が強烈にはまった題材で震える。善悪というものがなく、抽象にも抒情にも落ちない。つまりはユダヤ人の女の肉体の魔力に負けてしまうナチ将校であるとか、そのナチ将校の死に泣くと言うよりも…

リカウント

2018/8/13鑑賞 監督:ジェイ・ローチ あの「ブッシュ対ゴア事件」の前後を含めた、2000年米合衆国大統領選における投票の”数え直し”に関するドキュメンタリー風映画。 大統領選という大きな題材が、パンチカードに穴をあけられなかったくぼみ投票をどう…

県庁の星

2015/4/7鑑賞 監督:西谷弘 メッセージにまったく共感できないので終盤ちょっと萎えたけど、横顔の見事な撮影や、感情の視覚化など、映画としては見どころたっぷり。 大筋がシンプルなので、卓越した情報処理能力は脇役に回していた。丁寧に顔を拾っていく。…

アイデンティティー

2013/12/26鑑賞 監督:ジェームズ・マンゴールド 深刻なネタバレをしている感想なので注意されたい。 クレジットを除けば86分という短さ。 雨だが誰も傘を差さない(女優は携帯電話を濡らさないためにビニールを使ったが、あれも傘では無かった)。運転手…

狼の死刑宣告

2013/12/15鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 傑作。まず台詞が少ない。 最初の14分で復讐のお膳立てを済ませる手際の良さにもう「あ、巧い」と呟いてしまう。 ギャングの乗る車のショットがかっこよくて、それだけでもう「たぶん傑作だな」と思ってしまう。 冒…

ソウ

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン パッケージの印象で勝手に「白い」映画だと思っていたが、バスルームは念入りに汚されており不快なほどだ。さらに、写真家の作業場や、医者が浚われる駐車場もまた徹底的に汚されている。 21世紀にあんなスイッチで照…

デッド・サイレンス

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 父の館だの、人形劇の劇場だのがカメラに真正面から捉えられて「どーん」と出てくる場面に、これは怪奇映画だということを強く印象付けられる。 人間人形といい、湖上の劇場といい、朽ち果てた劇場の内装といい、100…

イーグル・アイ

2013/12/22鑑賞 監督: D・J・カルーソー (今回は製作総指揮だが)スピルバーグの大好きなヒッチコック流巻き込まれ映画。この監督は『ディスタービア』でもヒッチコックをやっていた。 荒唐無稽なマクガフィンを撒き散らして、ミッドポイントで謎を明かし…

TAKESHIS'

2015/6/25鑑賞 監督:北野武 劇中劇の銃撃戦に見られるように、静から動に移る居合じみた編集は相変わらずカッコいい。 『去年マリエンバートで』みたいに違う時間軸の映像が現在を貫いて出てくるような編集も最初はよかった。 美輪明宏とすれ違うところの複…

ティアーズ・オブ・ザ・サン

2017/2/2鑑賞 監督:アントワーン・フークア 虐殺の続くナイジェリアで、アメリカ人女医を救出するミッションを受けたネイビーシールズの部隊が、倫理的に正しいことをしようとするために地獄を見ることになる映画。贅沢でよかった。『虐殺器官』的風景が見…

アマルフィ 女神の報酬

2014/12/18鑑賞 監督:西谷弘 海外ロケの観光映画として作られておきながら、観光映画であることを至る所で皮肉る作品になっている。それは、タイトルになっているアマルフィの扱いを見るだけでもわかる。 映画自体はヒッチコック的な映画の最良の部類(ただ…

ディファイアンス

2014/12/10鑑賞 監督:エドワード・ズウィック ほどよく細部と挿話を入れながら枝葉を広げ、渡河と騎兵隊到着でクライマックスを作るあたりのバランス感覚が流石だ。河を前にして立ち止まってしまい震えるリーダーに、一人の女と若者が力を与え、再び歩き続…

花子さん

2015/1/18鑑賞 監督:黒沢清 「学校の怪談」のスペシャルドラマシリーズに含まれる短編で第4話。 幼少期に見てトラウマを負ってから何度も見ているが、見る度に黒沢清の最高傑作なのではないかと思ってしまう(映像は貧相な感じで、とてもそうは見えないか…

ウェンディ&ルーシー

2017/11/09鑑賞 監督:ケリー・ライヒャルト 久方ぶりに映画を見たという感慨を覚えた。 ルーシーを追いかけて焚火の集まりを発見するところは、暗闇に輪郭の溶けたミシェル・ウィリアムズの顔と緑の葉が浮かび上がるビジュアルが新鮮だった。 また、犬の後…

ルルドの泉で

2017/8/29鑑賞 監督:ジェシカ・ハウスナー 病気のせいで車椅子生活をしており、世話をしてもらわなければ食事をすることも、ベッドに寝ることも一人ではできないクリスティーヌという女性が、聖地ルルドにやってきて聖地巡礼ツアーに参加する。それほど熱心…

フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち

2021/1/24鑑賞 監督:マーティン・ユベルティ 大まかに、アルジェリア戦争中の1960年から、反ドゴール反乱が失敗するところまでをフランス外人部隊に入隊した一人のイギリス人兵士の視点から扱った映画。ポール・フォックスが主演で、その戦友をトム・ハーデ…

リミッツ・オブ・コントロール

2013/12/17鑑賞 監督:ジム・ジャームッシュ 『コズモポリス』と似ているが、静かだ。そして赤い。 最後に余計なメッセージを入れてこちらを白けさせなければジャームッシュ最高傑作だと思ったのに。 とはいえ、それでも痺れてしまう。悔しい。 色んな人間と…

ヴァン・ヘルシング

2014/7/21鑑賞 監督:スティーヴン・ソマーズ 劇場以来、2回目。大好きなんだよなこれ。 謎の回転ブレード、二丁拳銃、高圧ガス式連射ボウガン、閃光爆弾、銀の杭といった数々の武器が出てくるのが楽しいし、ジキルとハイド、吸血鬼、ハーピィ(?)、狼男…

縞模様のパジャマの少年

2017/8/2鑑賞 監督:マーク・ハーマン 美しかった。冒頭から目を惹きつける映像だ。飛行機ごっこをして遊ぶ少年たちを捉えた躍動的な移動撮影から、きっちりと真横から撮られた絨毯を畳む仕事風景、そしてピカピカに磨き上げられた食器を整然と並べるショッ…

マイレージ、マイライフ

2016/7/11鑑賞 監督:ジェイソン・ライトマン 家族愛のハッピーエンドを用意してもまるで信じていなさそうだった『サンキュー・スモーキング』の冷笑的態度からは離れ、今回は孤独の色が強く出ている。そのせいで、ちょっと内省的になって平凡に寄ったと思う…

イン・マイ・カントリー

2018/4/17鑑賞 監督:ジョン・ブアマン ジョン・ブアマンの仕事は知的かつ上品で、余裕たっぷり。情報の開示の仕方などは極めて親切だ。 同軸のカッティング・イン・アクションを活用した感情表現は繊細で教育的にうつった。踊るジュリエット・ビノシュの下…

ア・ダーティ・シェイム

2016/8/1鑑賞 監督:ジョン・ウォーターズ 堅物の主婦シルビアは、豊胸手術で超巨乳ストリッパーになった娘に悩んでいたが、頭を打ったせいで本人もセックス狂いになってしまう。 超巨乳のストリップダンサーが出てくるからそいつが主人公かと思いきや、その…

サンキュー・スモーキング

2016/6/14鑑賞 監督:ジェイソン・ライトマン アーロン・エッカートが胡散臭いたばこ業界のロビイストを演じており、銃器業界のロビイスト、アルコール業界のロビイストなどが友達として出てくる。 面白かった。プロットだけ王道のまま、主人公としてタバコ…

ワルキューレ

2012/12/19鑑賞 監督:ブライアン・シンガー 傑作クーデター映画。クーデターそのものをサスペンスフルに描くことに関して極めて真面目であり、序盤から最後まで緊張感を駆り立てる演出が適切に配置されている。 サスペンスに必要なのは、キーアイテムのクロ…

ナポレオン・ダイナマイト

2015/12/13鑑賞 監督:ジャレッド・ヘス 皮肉でもなんでもなく、本当に涙なしには見られない名作。 かつては『バス男』という悲惨な邦題をつけられていたが、いまは原題に沿ったものに変更されている。 冴えないオタクの青年を主人公に据えた青春映画で、し…

奈緒子

2016.12.26鑑賞 監督:古厩智之 大傑作。すーっと動く船と並行して走る少年にカメラが寄っていく冒頭に心掴まれ、曇天模様のなかで上野樹里や三浦春馬が走る姿をとてもいい光、風、ピントが捉えていく。特に最初の給水シーンのスローモーションが素晴らしい!…