ロスト・フライト
2024/6/30鑑賞
あらすじ
落雷を受けてしまい、ゲリラ組織が支配する島に不時着した飛行機の機長が、殺人犯と手を組みながら窮地を乗り越えていく姿を描いたサバイバルアクション。
感想
- マジで素晴らしい。80 - 90年代にはまだ生き残っていた、しかし現代では絶滅危惧種のジェットコースター映画がここにある。簡潔で、的を得ていて、面白い。
- 100分間まるで無駄がない。フライトに遅れそうな機長が空港を走る。新年を前にして、小型機に登場する客が一人、また一人搭乗口にやってくる。愛想が悪いビジネスマン。アジア系のカップル。その中には護送中の殺人犯と見張り役の刑事もいる。ワクワクする舞台設定だ。
- ジェラルド・バトラー扮する機長はどうやら3年前に妻を亡くしたらしいが、それを回想することはなく、悲しそうな表情を(感傷的なクローズアップだが)一枚入れて済ませるし、殺人犯のガスバールの背景を掘り下げることもない。100分間のプログラムピクチャーにそんなことをしている時間はないのだから。
- ジェラルド・バトラーの映画の常として、当然のように航空機の機長は職務を全うして乗客のために反政府ゲリラに立ち向かうし、元軍人の殺人犯は機長の示した信頼に応えてその力を貸すことになる。
- 機長と殺人犯の信頼を示すアクションが必要だ。機長は手錠を外し、殺人犯は鹵獲した小銃を手渡す。どちらも信頼を示す、簡潔で要領を得た動作に違いない。そしてそのアクションを挟んだのなら、もう過去の詮索は必要が無いはずだ。
- 航空機が消失したことを察知した航空会社が立ち上げた対策会議の様子がカットバックされるが、この現場と会議室をカメラが行き来するのも熱い。いい映画には会議室が必要だ。遠く離れた場所で、窮地に陥った主人公たちのために保身に走るお偉いさんを叱責する人間が必要なのだ。
- 恐らく民間の軍事(警備?)会社の協力者が、五十口径の対物ライフルを持ち出して、車体越しにゲリラをぶっ飛ばしていく場面もスカッとする。
- 新規性はどこにもない。どこかで見たような凡庸な映画かもしれない。しかし、贅肉が無い2時間未満のプログラムピクチャー、アカデミー賞を取るつもりのないアクション映画こそアメリカ映画の核心的価値なのだから、本来これは毎月シネコンにかかっていないといけない映画なのだし、毎日プライムビデオやネットフリックスで新作映画としてピックアップされないといけない類の映画なのだ。