呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

ザ・シャウト/さまよえる幻響

2016/8/27鑑賞

  • 監督:イエジー・スコリモフスキ
  • ある精神病院にやってきた男が、患者たちのクリケットを見ながら、声で人を殺せると宣言する男の話を聞く。その話とはこうだ。とあるオルガン弾きの男のところに、18年間暮らしたオーストラリアで魔術を覚えたという謎の男がやってきて、妻を寝取られそうになる、危うし。
  • 「声で人を殺せる」という荒唐無稽な話は、精神病院の患者の語りというフレームに入れられて距離が取られているし、語りが終わったあと、豪雨に変わってクリケットをやめた患者たちが逃げ惑う中、その叫び声が炸裂して3人が死んだと思しきところも一応落雷で説明がつく。
  • 全体としては、語りの構造も、伏線回収もきちんと整理されていて解釈ができるはずなのに、意図不明だったり前後関係不明だったりするショットの挿入や、唐突なアクション(ものが壊れるとか)や、情緒のなさによって非常に不安定で暴力的な作品に映る。
  • 機材の問題なのか、金がないのか、天気がよくないのか、映像の質感が安っぽい。
  • フランシス・ベーコンの絵画を引用するところはなんだか直接的だと思った。ベーコン自体わかりやすい絵画だし、普通に読めば「叫び」の顔のイメージ源はここですよということになる。裸の妻を四つん這いにさせたところより、縦長の廊下に裸の妻が立っているところのが質感がベーコンっぽい。