呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#あ行

エル ELLE

2017/8/26鑑賞 監督:ポール・バーホーベン いつにも増してブニュエルみたいだ。 暴力的なところは暴力的に、猥雑なところは猥雑に。 誰もいないところで年増女が犯されて、ただ猫だけがそれを見ているという鮮烈な冒頭シーンに引き込まれる。 キリスト教は…

アイデンティティー

2013/12/26鑑賞 監督:ジェームズ・マンゴールド 深刻なネタバレをしている感想なので注意されたい。 クレジットを除けば86分という短さ。 雨だが誰も傘を差さない(女優は携帯電話を濡らさないためにビニールを使ったが、あれも傘では無かった)。運転手…

女の中にいる他人

2016/6/29鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の撮った人殺しの映画。 ぽつんと都市部の車道沿いを歩くスーツ姿の男がタバコをくわえると、カッティングインアクションでどこかのダイナーに飛んで環境音が消えるが、男はまったく同じように生気がない。つまり、外部…

アナベル 死霊館の人形

2015/3/1鑑賞 監督:ジョン・R・レオネッティ アナベル人形はそこにいるだけで怖いし、アナベルという名前の女優が出てるところとか嫌だなと思ったけど、演出や映像というよりは効果音で驚かされたという鑑賞感が残った。怖いけど面白くはない。 ホラーは手…

インシディアス 第2章

2014/1/13鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 糸電話の使い方には感動した。 解決編のせいか脚本がやや理屈っぽく、前作ほど面白くはない。 アクションはある。もっとも、ヤカン投げたりとアクション自体は地味だが、建物の構造は事前にそれなりに提示されるし、動…

インシディアス

2014/1/13鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 初見時には、アメリカンホラーが上手くJホラーの成果を飲み込んだのだと感じた(具体的にはどこが?と訊かれてもわからないが)。 いずれにせよ、ジェームズ・ワンなしに2010年代のホラー映画は考えられない。 音…

狼の死刑宣告

2013/12/15鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 傑作。まず台詞が少ない。 最初の14分で復讐のお膳立てを済ませる手際の良さにもう「あ、巧い」と呟いてしまう。 ギャングの乗る車のショットがかっこよくて、それだけでもう「たぶん傑作だな」と思ってしまう。 冒…

暗黒街の顔役

2013/12/9鑑賞 監督:ハワード・ホークス ちょっとサイレント映画を引き摺っているようなオーバーアクトが目につくものの、すこぶるかっこいい。 妹と喧嘩する場面でのレースカーテン越しの斑の陰影、襲撃されて床屋で電話する際の真っ黒に塗りつぶされた身…

エンジェル ウォーズ

2013/6/6鑑賞 監督:ザック・スナイダー 冒頭5分の導入部は申し分無かった。しかしそれ以降は、良くも悪くもエミリー・ブラウニングという役者を好きになれるかどうかにかかっていると思う。 彼女はアビー・コーニッシュと役柄を変わるべきだったんじゃない…

L.A.ギャングストーリー

2013/12/108鑑賞 監督:ルーベン・フライシャー 一夜漬けのギャング映画知識で撮ったかのような軽さ。ライアン・ゴズリングの軽薄さ。コミックキャラのようにペラペラなキャラクターたち。あのスローモーションは、スタイリッシュではない。重力から解放され…

イーグル・アイ

2013/12/22鑑賞 監督: D・J・カルーソー (今回は製作総指揮だが)スピルバーグの大好きなヒッチコック流巻き込まれ映画。この監督は『ディスタービア』でもヒッチコックをやっていた。 荒唐無稽なマクガフィンを撒き散らして、ミッドポイントで謎を明かし…

男の敵

2014/2/11鑑賞 監督:ジョン・フォード 霧の街で繰り広げられる一夜の映画として、まずは単純に美しかった。 マーゴット・グラハムがブロンドの髪を露わにする瞬間とか、その髪が風に揺れる様とか、その彼女の顔にタバコの煙が吹きかけられるところとか。 ウ…

2014/4/9鑑賞 監督:ルイス・マイルストン 鮮烈。のっけから凄い。雨中の行軍シーンに至るまでの執拗な畳みかけ。雨雲と砂浜、井戸、葉に叩き付けられる雨粒がモンタージュされる。 南国の家屋の奥から子供が走り出してくるだけで心躍らずにいられないのはな…

アポロ13

2016/1/30鑑賞 監督:ロン・ハワード バストショットばかりだが、ハードボイルドに徹する宇宙飛行士とNASA職員たちの描写、そしてフィクションならではの価値観の反転を備えていることで名作足りえている。 注目されないフライトであることは、発射成功…

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2017/4/4鑑賞 監督:モルテン・ティルドゥム タイトルはそのまんまアラン・チューリングのimitation gameから採られている。idiot savantもので、いい素材を見つけてきて、よく組織している。WWⅡ、英国、情報部、暗号解読、アラン・チューリングというネタ…

アマルフィ 女神の報酬

2014/12/18鑑賞 監督:西谷弘 海外ロケの観光映画として作られておきながら、観光映画であることを至る所で皮肉る作品になっている。それは、タイトルになっているアマルフィの扱いを見るだけでもわかる。 映画自体はヒッチコック的な映画の最良の部類(ただ…

ウェンディ&ルーシー

2017/11/09鑑賞 監督:ケリー・ライヒャルト 久方ぶりに映画を見たという感慨を覚えた。 ルーシーを追いかけて焚火の集まりを発見するところは、暗闇に輪郭の溶けたミシェル・ウィリアムズの顔と緑の葉が浮かび上がるビジュアルが新鮮だった。 また、犬の後…

暗黒街

2018/12/3鑑賞 監督:ステファノ・ソッリマ めちゃくちゃロマンチストな作り手によるマフィア抗争もので、挿入曲としてひたすらM83が流れている。 マイケル・マンみたい、というか絶対マイケル・マンのこと好きだろ……と思って監督のインタビューを読んだら、…

海辺のポーリーヌ

2014/12/22鑑賞 監督:エリック・ロメール アマンダ・ラングレの肉々しい後ろ姿がものすごくエロかった。ロメールはエロさを恩寵か何かだと思っている節がある。 人物配置を転がしていくだけで観客を引っ張り続ける脚本の巧さも目についた。

ヴァン・ヘルシング

2014/7/21鑑賞 監督:スティーヴン・ソマーズ 劇場以来、2回目。大好きなんだよなこれ。 謎の回転ブレード、二丁拳銃、高圧ガス式連射ボウガン、閃光爆弾、銀の杭といった数々の武器が出てくるのが楽しいし、ジキルとハイド、吸血鬼、ハーピィ(?)、狼男…

赤ちゃん教育

2013/9/5鑑賞 監督:ハワード・ホークス 軽い気持ちで見始めたら、いつの間にか最後まで見てしまっている。ホークスはクラシック映画の中でも一番見やすいし、誰でも楽しめると思う。 ハントを軸にとことんホークス的な要素が入り乱れる圧巻のコメディ。その…

エクソダス:神と王

2016/2/28鑑賞 監督:リドリー・スコット モダンな『十戒』。カメラの解像度が高いせいか、画面のルックは硬質かつクリアで現代的だ。 神話はほどよく合理化されており、ラムセス王とモーセの戦いは対テロ戦争の諸相を示しているし、イスラエルの神のもたら…

オデッセイ

2016/2/13 監督:リドリー・スコット いい映画だった。少なくとも2010年代リドリー・スコットの最高作だと思う。 やっぱり宇宙飛行士帰還ものの基本はハードボイルドに徹することにある。一人火星に取り残されて、恐らくは酷いことになっていたはずのワトニ…

アンデッド・ソルジャーズ

2016/1/28鑑賞 監督:マーク・ナトール 『ファーゴ』のように「実話に基づいた物語」というテロップが出されるが、そのくせ実話を装う気がさらさらなく、ナチスドイツ×オカルトホラーをやり始めてラストも収集はつけるつもりがない。 ヒムラーの指令書を持っ…

足にさわった女

2016/2/5鑑賞 監督:増村保造 なんなんだろうな、この出鱈目な脚本。原作は何回も映像化されているらしい。あえて言うなら刑事と掏摸のスクリューボールコメディかな。 足にこだわるのは最初と最後だけ。両足に手錠をかけたりする、最後のかけあいなんかはと…

イコライザー

2014/11/7鑑賞 監督:アントワーン・フークア なんといってもホームセンターで繰り広げられる日用品版『ペイルライダー』が見物。デンゼルが真顔でアイテムを取り出す度に笑えるのだが、ライティングは決め決めだし、有刺鉄線と高枝切りバサミに殺された部下…

ウォー・ドッグス

2018/1/22鑑賞 監督:トッド・フィリップス 米国防総省に武器を売る20代のアメリカ人が、流れるように詐欺を働き流れるように逮捕される。アコギな商売ものとして、最初から最後まで一定の水準を保っていて楽しめた。ここにもジョナ・ヒルがいる。 人生訓と…

青い青い海

2016/12/11鑑賞 監督:ボリス・バルネット 言わずと知れた傑作で、野外で撮影されたとは信じられないほど奇跡的に美しいショットばかり出てくる。 液体でできた鏡のごとき海。ほとばしる陽光。涙のようにこぼれる真珠。

インディアン渓谷

2016/12/4鑑賞 監督:ジャック・ターナー ドロドロとした人間関係、血みどろの喧嘩、人民法廷、インディアンの容赦のない襲撃、などが水辺や紅葉した森といった美しい風景の牧歌的な生活のなかで描かれていく。そして劇的な場面は省略する。ターナーらしい上…

悪魔の沼

2016/12/14鑑賞 監督:トビー・フーパー トビー・フーパー全開といった調子。展開にもうちょっとメリハリが欲しいけど、異様な質感の映像だった。ほぼセットでの撮影ということもあって、人工性が強く出ている。 妙な電子音楽が流れたり、悲鳴があちこちであ…