呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

Um Século de Energia

2019/06/16 鑑賞

  • 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
  • あんな妖怪爺みたいな人がこんなに叙情的な遺作を撮るなんてちょっとズルいんじゃないか?
  • 四重奏を真正面から撮った画から右に流れるようにパンをして、上演されている白黒フィルムの中に入っていく。そこでは過去と現在の水力発電施設(?)が被写体になっており、過去の施設=モノクロ、現在の施設=カラーというわかりやすい規則で対比的に編集されていくのだが、、、(水面を映すショットは過去作を思わせる)いよいよ水門を開くという劇的な場面で音楽も劇的になり、やがてカメラは再びフィルムの外側へ戻ってくる。そこでは赤い衣装を着た3人の女性が踊っている。画面と音のスペクタクルに留まらず、フレームの外に戻ってくるというサプライズが用意されている。
  • モチーフとなるエネルギーは水に留まらず、次は風力発電のプロペラが官能的に映されていき、見る側としても飽きない。
  • 自然風土をただ映すと叙情的になり過ぎると考えたのか、エネルギー技術を口実に自然風土を映すという展開になっていて、生っぽい素材がしばしば混在する。水力発電から水が、風力発電から風が、そしてソーラーパネルから太陽が被写体になるというロジックがある。
  • そしてラストショットでは、夕陽のさす屋内で3人の女性が踊っているなか、カメラはゆっくりと後退移動をしていく。ここでは、単にフィルム内で示されているだけだった時間という叙情的なテーマが上演の外側にも広がっており、涙を誘う。