呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#は行

フランシス・ハ

2016/5/24鑑賞 監督:ノア・バームバック フランシス、女、27歳、大柄、ダンサー実習生、親友とは喧嘩、住所不確定、金なし、彼氏ナシ、職なし、みたいな映画であった。モノクロ映画でジャンプカットを使い、都市部の野性的な男女の日常風景撮るのでいかに…

パリのランデブー

2015/12/16鑑賞 監督:エリック・ロメール パリでの野外デートをオムニバス形式で三話分まとめたのが本作。ドキュメンタリーに近い撮り方をしている。隠し撮りはしてないらしいけど(ロメール談)、わざとコントロールが難しいような雑踏を選んで撮ったりして…

引き裂かれた女

2013/4/5鑑賞 監督:クロード・シャブロル 美男美女揃いでゴージャスな色使い、小道具、衣装、建築で飾られる退廃のメロドラマ。 ちょっと筋を追えなくなるくらいに編集でバシバシ場面を切っていくのがすごい。洗練というのとはまた違う奇妙な説話だ。 それ…

フォードvsフェラーリ

2014/2/10鑑賞 監督: ジェームズ・マンゴールド マイケル・マンの降板は残念だが、いかにも彼が撮りそうな官僚的な男VS流れ者という映画だった。よく言われているように、実際はタイトルに反して『フォードVSフォード』とでも言うべき内容。 チャンベールは…

ブラックブック

2013/8/18鑑賞 監督:ポール・バーホーベン バーホーべンの即物性が強烈にはまった題材で震える。善悪というものがなく、抽象にも抒情にも落ちない。つまりはユダヤ人の女の肉体の魔力に負けてしまうナチ将校であるとか、そのナチ将校の死に泣くと言うよりも…

パシフィック・リム:アップライジング

2018/4/15鑑賞 監督:スティーヴン・S・デナイト まだまだ多いとはいえ、登場人物とサブプロットが減ったので映画として若干スマートになった。上映時間も減った。それでも、やっぱり怪獣が出るまでが長いと思わざるを得ない。 前作同様、一枚絵のアイデアは…

昼顔

2016/11/6鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 傑作。光に対する感覚が素晴らしい。例えば、わずかに陽光を浴びて黄金色をまとう雪の白さ、その美しさ。 若く美しい人妻(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、淫靡な妄想を繰り返し、やがて娼婦になるという話。画面外から…

昼顔

2017/06/10鑑賞 監督:西谷弘 公開初日に見に行った。 海が出てきても、快晴でも、最初から黒沢清みたいに不自然に灰色な映画だからきっと陰惨なことになるだろうと思っていたらあんなことに...。 西谷弘なのに横顔のショットがない、ない、と思っていたら最…

ヘイル、シーザー!

2016/5/25鑑賞 監督:コーエン兄弟 ウェス・アンダーソン一歩手前の、本当らしくない人工的な造形で、共産主義もキリスト教も映画愛もみな同じ麻疹みたいなものという構図の中、疲れた職業意識から僅かに映画を擁護するというコメディ。 笑いどころの劇中作…

犯罪王ディリンジャー

2017/4/20鑑賞 監督:マックス・ノセック なんでデリンジャーがガスを使うんだ? めっちゃフリッツ・ラングっぽい画面だなと思っていたら『暗黒街の弾痕』からのフィルムの流用だった。 デリンジャー役のローレンス・ティアニーはベン・アフレックに似ている…

不能犯

2018/2/3鑑賞 監督:白石晃士 すごく言語的でつまらなかった。見た範囲では白石晃士のワースト作。

ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ

2014/10/8鑑賞 監督:フリッツ・ラング ラングの職人技が振るわれた一品。 グロリア・グレアムの隠された半分の顔は、彼女の二面性を示すと同時に、視覚的なインパクトをズラすことによって、復讐の手段になってもいる。つまり最初コーヒーをかけられた時に…

フューリー

2014/12/1鑑賞 監督:デビッド・エアー エアーが脚本を担当した『トレーニング デイ』と比較すると、一人の人物(本作ではブラッド・ピット)に善悪の両方を統合させるというキャラクター造形が、あまり上手くいっていないように見える。 お話は古典的。メッ…

花子さん

2015/1/18鑑賞 監督:黒沢清 「学校の怪談」のスペシャルドラマシリーズに含まれる短編で第4話。 幼少期に見てトラウマを負ってから何度も見ているが、見る度に黒沢清の最高傑作なのではないかと思ってしまう(映像は貧相な感じで、とてもそうは見えないか…

氾濫

2015/1/8鑑賞 監督:増村保造 好色で金にがめついのに、見え見えの嘘をつき、悪人らしく笑い、基本的にあっさりと浅ましい内面を正直に告白する、ある意味、とても好感の持てる人間ばかり出てくる。 「君には娘は養えないだろ(要約)」「まるで不可能です!」

武士道シックスティーン

2016/10/19鑑賞 監督:古厩智之 映画見たーって感じ! その瞬間、その場限りの光とピント、そして当時まだ10代だった役者たちの生々しい記録。これこそ青春映画だ。 古厩監督の傑作と名高い『まぶだち』も見たいけど、VHSしかないのかよ。 二人で一緒に…

ボーダーライン:ソルジャーズデイ

2018/11/16鑑賞 監督:ステファノ・ソッリマ 『ボーダーライン』の続編。今回は最初からルールがなく、金の流れも指揮系統もわかっていて、アメリカ政府をバックにつけたジョシュ・ブローリンとベニチオ・デル・トロが白昼堂々、市街地で、公然と暴力を行使…

春の劇

2016/11/21鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ パンフレットによれば「16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリャで上演されるキリスト受難劇の記録」らしい。延々と毎年毎年、復活祭にこの劇が演じられてきたというのは正直信じられない思い。…

フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち

2021/1/24鑑賞 監督:マーティン・ユベルティ 大まかに、アルジェリア戦争中の1960年から、反ドゴール反乱が失敗するところまでをフランス外人部隊に入隊した一人のイギリス人兵士の視点から扱った映画。ポール・フォックスが主演で、その戦友をトム・ハーデ…

飛行士の妻

2020/04/22鑑賞 監督:エリック・ロメール ロメールの映画は大体のところ、①人工的でよくできた脚本を、②生っぽい撮影によって崩していくという手法で撮られていると思しいのだが、これもそんな感じ。 その場の作り話や嘘で話を転がしていくことや、都合のい…

ヒズ・ガール・フライデー

2012/10/15鑑賞 監督:ハワード・ホークス ホークスらしいハント(狩り)のお話。好きな女を捕まえるという目的に、手段を選ばないという制限解除を与えただけで、ここまで何でもないお話が転がりに転がり、面白くなるというのは感動的だ。そして、弾丸のよ…

犯罪河岸

2015/10/24鑑賞 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 野心家で好色そうに見えるが実は夫一筋のシュジ・ドレール、前頭ハゲで冴えないからか嫉妬に狂うベルナール・ブリエ。実はその前頭ハゲに思いを寄せている幼馴染シモーヌ・ルナン。この三角関係に、と…

BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界

2018/3/7鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン 面白かった。 公演以外が面白いので、やっぱり映画と小説は少し似ていると思った。逆に公演の場面は、カメラの視点の制約が大きすぎるので、映画の利点をほとんど捨ててしまっている。 バレエシューズを並べる…

ハッピーニート~おちこぼれ兄弟の小さな奇跡

2017/9/13鑑賞 監督: ジェイ・デュプラス、マーク・デュプラス シャマランの映画『サイン』のことが好き過ぎる主人公が、『サイン』への愛を語るところから始まるので期待したが、顔の切り返しばっかりだし、カメラは無意味に揺れているし、無意味にズーム…

ファンタスティック・フォー

2016/9/4鑑賞 監督:ジョシュ・トランク 製作の過程でかなり作家性を殺されたんだろうが、完全に事故・トラウマとして描写されるオリジンエピソードを中心に、陰惨でグロテスクなイメージがところどころに残っている。特に、岩に閉じ込められて「助けてリー…

ビリディアナ

2016/10/6鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 俗っぽくて、見やすいブニュエル。 脚から見せるカットが続くなと思ったら、ちゃんとビリディアナが脱ぐ、脚フェチショットが入る。 聖と俗の対比があちこちにあって、祈りの場面と、家を改築する工事のドロドロぐち…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 見ていると異様な感覚になってくる。姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開される。脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』を思…

ベイビー・ドライバー

2017/8/21鑑賞 監督:エドガー・ライト 音楽との同期というより、最初に完璧な同期を見せておいて、それがズレていくことに主眼がある。あるいは音楽に夾雑物が入ってくるところを見せることによって段々と事態がコントロールから外れていっていることを演出…

ひき逃げ

2018/3/11鑑賞 監督:成瀬巳喜男 子供をひき逃げしたが、夫に説得されてその事実を隠蔽した女性(司葉子)と、それを暴くために家政婦として潜入する子供の母親(高峰秀子)の対決?を描いた映画。 高峰秀子が 酔っぱらって踊る場面での大きく揺れるカメラ。…

her/世界でひとつの彼女

2017/1/22鑑賞 監督:スパイク・ジョーンズ 上海の建築物、パステルカラーの色彩、レンズフレアといった、まるでAppleのCMの延長線上にあるような映像デザインで、現在から地続きの近未来世界を意識させつつ、同時にそれは、加工可能なデジタル撮影でロマン…