2017/06/10鑑賞
- 監督:西谷弘
- 公開初日に見に行った。
- 海が出てきても、快晴でも、最初から黒沢清みたいに不自然に灰色な映画だからきっと陰惨なことになるだろうと思っていたらあんなことに...。
- 西谷弘なのに横顔のショットがない、ない、と思っていたら最後に見事なものが見れたので満足した。
- 前半は視線が合うことをサスペンスとして撮っているけど(だから主演の二人は向き合わない)、中盤にそういう即物的なロジックがないからきつかった。
- クライマックスは流石に凄かったので持っていかれた。とはいえ、それ自体には意味のない視覚的な遊びが少なくて、すべてに文脈が乗っかってくるからとにかく疲れる。
- 序盤、斎藤工が伊藤歩から離れたくて、部屋から出ようとしてカーテン開けたら、窓ガラスに伊藤歩が映っているという演出にびびった。心の距離=身体の距離という演出のなかで、鏡像を即物的に扱っていて面白かった。
- 伊藤歩を車椅子に座らせたあと、エレベーターで立たせることが恐怖になっている(視線が合うことの怖さ)のも巧い。
- 自動車運転シーン、『曾根崎心中』(1978年、増村保造)の梶芽衣子のように、伊藤歩がもう完全に「死」しか見ておらず、それを強く印象づけるために運転をさせるという感覚がいい。
- ホテルでのやりとりのように、役者の身体的距離が近すぎると映画にならない。
- 傷口を鋭く(白く)光らせるというのは白黒映画の『赤い天使』(1966年、増村保造)でもあったけど、それをあんな風に使ってしまうとは驚きだ。とにかく、今時ここまでロジカルに演出で勝負する映画を撮れるのは日本では西谷弘くらいではないだろうか(あと濱口竜介か)。
- ドラマは視聴済。ブニュエルの『昼顔』はほぼ関係ない気がする。むしろ増村っぽさを感じた。