呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#製作国:日本

氾濫

2015/1/8鑑賞 監督:増村保造 好色で金にがめついのに、見え見えの嘘をつき、悪人らしく笑い、基本的にあっさりと浅ましい内面を正直に告白する、ある意味、とても好感の持てる人間ばかり出てくる。 「君には娘は養えないだろ(要約)」「まるで不可能です!」

抱きしめたい -真実の物語-

2014/12/27鑑賞 監督: 塩田明彦 いわゆる難病もの。 演出、省略、反復の映画であることは確かで、例えばラストで錦戸に日本語で「愛してる」と言わせるために、他の場面では中国語や英語を使わせている。 他にも例えば血の繋がりを示すために、北川景子とそ…

早春

2018/8/23鑑賞 監督:小津安二郎 凄かった。あの蓮實重彦の「映画は見つめ合う瞳を映せない」とか何とやらといった言葉と、小津の真正面からの切り返しの関係性を初めて心から体感した。 終盤、浮気騒動で仲たがいした夫婦が地方にやって来て和解する場面。…

武士道シックスティーン

2016/10/19鑑賞 監督:古厩智之 映画見たーって感じ! その瞬間、その場限りの光とピント、そして当時まだ10代だった役者たちの生々しい記録。これこそ青春映画だ。 古厩監督の傑作と名高い『まぶだち』も見たいけど、VHSしかないのかよ。 二人で一緒に…

マチネの終わりに

2020/06/18 鑑賞 監督:西谷弘 悪い意味で文学臭過ぎるセリフ、金持ちのスノッブ趣味、常に鳴るギターの劇伴、などがあまりに耐えがたく、映画を完全に破壊しているように思えた。一時間で見るのをやめた。 照明、編集など、随所に力量の高さが見えるものの…

大菩薩峠

2014/6/9鑑賞 監督:三隅研次 繰り返し映画化されているが、これはいわゆる「大映版」。 闇討ちの場面で、市川雷蔵が刀を抜くと身体はシルエットになり、代わりに刀が光る。見たとおりの邪剣。 また、霧とセットが物凄いが、セットを見せるための広い構図や…

リミッツ・オブ・コントロール

2013/12/17鑑賞 監督:ジム・ジャームッシュ 『コズモポリス』と似ているが、静かだ。そして赤い。 最後に余計なメッセージを入れてこちらを白けさせなければジャームッシュ最高傑作だと思ったのに。 とはいえ、それでも痺れてしまう。悔しい。 色んな人間と…

真夏の方程式

2014/2/22鑑賞 監督:西谷弘 こんなに複雑で過去への引力に満ちた題材を映画として何とか成立させてしまえる西谷弘はすげえなあと思いながら観ていた。 マルチタスクばかりやる福山雅治のキャラクターや、情報機器の発達を、物語上複数ある題材の同時処理と…

座頭市血煙り街道

2014/6/4鑑賞 監督:三隅研次 勝新の殺陣の荒唐無稽さがよくわかる一本。段差に転げながら斬る、柵越しに斬る。 ラストの近衛十四郎との殺陣の途中に、木の骨組みに引っ掛かって一回転後ろにひっくり返ったかと思えば、刀の先から血が流れてきて、近衛十四郎…

足にさわった女

2016/2/5鑑賞 監督:増村保造 なんなんだろうな、この出鱈目な脚本。原作は何回も映像化されているらしい。あえて言うなら刑事と掏摸のスクリューボールコメディかな。 足にこだわるのは最初と最後だけ。両足に手錠をかけたりする、最後のかけあいなんかはと…

寄生獣

2018/08/07鑑賞 監督:山崎貴 よく出来ているし楽しんだ。 母親との感情の繋がりは手のクローズアップに収める。寄生生物には協調性がないから会話中も互いを見ないで別々の方向を向いている。どちらも映画的な美点だ。 水族館にて「一クラス3秒で皆殺しに…

忠臣蔵外伝 四谷怪談

2017/1/21鑑賞 監督:深作欣二 見た人がみんな高岡早紀のおっぱいにばかり言及する怪作だが……絵作りはされていて、狭い構図で役者をとにかく動かすので面白い。首はごろごろ転がっていく。吉良家討ち入りのところで、お岩さんが特殊効果でバーンっと大活躍し…

新選組始末記

2017/1/13鑑賞 監督:三隅研次 まことに贅沢ながら、三隅のベストラインから比較すると陰影や人工性など、ショットが弱いと感じてしまう。けど、面白かった。三隅で実録ものって新鮮だな。 容易に男女を見つめ合わせたくないという演出方針が見える。最初の…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 見ていると異様な感覚になってくる。姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開される。脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』を思…

散歩する侵略者

2017/9/9鑑賞 監督:黒沢清 つまらない。 タイトルが出るまでは最高だった。女子高生の制服を血で汚して、車道のど真ん中を歩かせるだけですごい効果がある。奥行きがつぶれて平面的なのもいいし、音楽も景気がいい。 思うに、宇宙人のとる特異な行動が「概…

高速ばぁば

2017/10/29鑑賞 監督:内藤瑛亮 登場人物はアイドルグループで、出てくる怪奇はターボばばあという、一度見かけたら忘れられないインパクトの企画。 こんな題材なのに照明のレベルが、ヨーロッパの芸術映画か何かのように高い。 ばぁばにご飯を食べさせてい…

乱れ雲

2018/3/26鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の遺作。 『ひき逃げ』と同じく、交通事故がひとつのキーになっている。 葬式で司葉子と初めて会ったあと、出ていこうとする加山雄三に追いすがり睨み付ける司葉子。あるいは、夫との関係は続けられないということでカー…

ひき逃げ

2018/3/11鑑賞 監督:成瀬巳喜男 子供をひき逃げしたが、夫に説得されてその事実を隠蔽した女性(司葉子)と、それを暴くために家政婦として潜入する子供の母親(高峰秀子)の対決?を描いた映画。 高峰秀子が 酔っぱらって踊る場面での大きく揺れるカメラ。…

木霊

2018/3/27鑑賞 監督:黒沢清 90年代黒沢清の才気が感じられる一品。短編だと「花子さん」の次に好き。 運命へと一直線に向かうプロットは「花子さん」同様。いじめられっ子による復讐という点も同様。過去の因縁は「花子さん」の方がより複雑に捻ってあって…

野火

2016/11/21鑑賞 監督:塚本晋也 最初はあまりに安いデジタルの画面とスーパーインポーズの多用に心配になったが、途中で気にならなくなり、安さ特有の不安定さがあってか、なかなか面白かった。 空からの機関銃射撃の表現(誰も銃撃を避けないので異様なシー…

清作の妻

2016/9/6鑑賞 監督:増村保造 増村は大好きな映画監督だし、世評の高い映画ではあるけど、これは嫌い。 抑揚・間のある増村らしくない演技が頻発し、常に辛気臭い音楽が鳴り続けている。白と黒のコントラストは微妙だが、構図はそれなりの水準。 増村の映画…

リズと青い鳥

2018/4/21鑑賞 監督:山田尚子 凄いんだけど、ひとつのものを突き詰めた作品で、この先は袋小路なのではないかと思った。内省的過ぎるというか、繊細過ぎるというか。 そういう意味では泥臭く世俗を転がりまわる『響け!ユーフォニアム』本編のほうが自分は…

秋津温泉

2016/2/28鑑賞 監督:吉田喜重 音楽と演技への頼り方が通俗的だし、好みから言えばくどいんだけど、この男女のなにも生産的なものを重ねずにただ歳だけとっていくことの苦しみは確かにリアルである。 男女が文字通り追ったり追われたりするのをひたすら繰り…

御用牙

2016.10.25鑑賞 監督:三隅研次 オープニングはスプリットスクリーンから始まる。実験好きな人なのでこういうことをやるのに違和感はないけど、初めて見るような気がする。他でやったことはあるのだろうか。 オープニングのつづき。画面右から左へざっざっと…

眠狂四郎無頼剣

2017.3.10鑑賞 監督:三隅研次 シリーズ第8作目。市川雷蔵VS天知茂で、かつ円月殺法VS円月殺法という豪華な仕立てだけど、いかんせんシナリオが複雑すぎてついて行く気が失せる。画面で起きてないことをセリフに詰め込んでる場面が多過ぎないか? 刀は宙を…

座頭市喧嘩太鼓

2015.3.17鑑賞 監督:三隅研次 大映最後の座頭市であり、実験的な演出が連発される、正真正銘の傑作。 戸口を踏み越えて屋内に入る瞬間、段々と暗くなっていった勝新の身体が、完全にシルエットになると同時に居合斬りをする場面が凄かった。ちゃんと抜刀の…

奈緒子

2016.12.26鑑賞 監督:古厩智之 大傑作。すーっと動く船と並行して走る少年にカメラが寄っていく冒頭に心掴まれ、曇天模様のなかで上野樹里や三浦春馬が走る姿をとてもいい光、風、ピントが捉えていく。特に最初の給水シーンのスローモーションが素晴らしい!…