呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#か行

殺しの烙印

2018/1/19鑑賞 監督:鈴木清順 映画前半は、ラフに撮られたカットと、人工的にきっちり決めたカットが混在していて楽しい。同じようなカットを使わないためにひたすらアイデアを尽くしているところもいい。次のカットがとにかく読めなくて、例えば、スピンし…

こわれゆく女

2014/12/4鑑賞 監督:ジョン・カサヴェテス 言わずと知れた傑作で、すごかった。舞台劇を間近で見ている感じがあり、被写体に遅れてピントが合うところなどが猶更そういった印象を強めている。 フレーミングと役者の動きがともに自由だが、ジーナ・ローラン…

恋のゆくえ ~ファビュラス・ベイカー・ボーイズ~

2014/2/26鑑賞 監督:スティーブ・クローブス ピアニスト兄弟と女性ボーカルの三人組のどさ回り映画で、ピアニスト兄弟をジェフ・ブリッジスとボー・ブリッジスの兄弟が、そして女性ボーカリストをミシェル・ファイファーが演じている。何よりもミシェル・フ…

恐怖女子高校 女暴力教室

2016/09/29鑑賞 監督:鈴木則文 OPからかっこいい。めいめいが異なる不良を働いている教室のカタログ的な場面、放課後に狭い縦構図の公衆トイレで着替える女子高生たち、そこにかぶさる赤いクレジット。 起きていることは下品そのものだが、音楽は途中で断…

キュア ~禁断の隔離病棟~

2018/10/02鑑賞 監督:ゴア・ヴァービンスキー 金融マンとして働く野心家の若きエリート、ロックハート(デイン・デハーン)は、勤め先の社長ペンブロークがスイスの療養所に行ったまま帰ってこないため、彼を迎えに行くよう命じられた。単身スイスに向った…

ゲーム・ナイト

2020/04/05鑑賞 監督:ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタイン (アナログ)ゲーム好きがきっかけで結婚したマックス(ジェイソン・ベイトマン)とアニー(レイチェル・マクアダムス)が、マックスの兄の主催する殺人ミステリーゲーム…

カルロス 第2部

2013/11/24鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス オープニングの不協和音とノイズの嵐に、オリヴィエ・アサイヤスの映画を観ているという実感が得られる。 OPEC本部占拠・各国石油相人質事件をじっくり描いてくれる第二部は、いささか早足気味だった第一部に比…

カルロス 第1部

2013/5/8鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス 実在したイリイチ・ラミレス・サンチェスという極左テロリストの半生を題材にとったテレビ映画を劇場版に組みなおした、その第1部。 ひたむきな労働の映画、という印象がある。青春として撮っているかもしれない…

キル・ビル Vol.1

2013/8/21鑑賞 監督:クェンティン・タランティーノ 第一章の脚本の流れがタランティーノ流の引き伸ばし演出の典型例になっている。 後半に入るとちょっとその引き伸ばしぶりが無くなって単調。 階段を一段も飛ばさずに高速で駆け下りてくるクレイジー88が…

幸福の設計

2016/4/9鑑賞 監督:ジャック・ベッケル いわゆる宝くじ映画なんだけど、ほんとに大したことはなにも起こらない。若い夫婦が宝くじに当たる→なくす→落ち込む→見つかる→ハッピーエンド。あとは妻に言い寄る男との筋くらい。本筋が弱いから脇役がプロットに大…

キャリー(1976年)

2013/5/26鑑賞 監督:ブライアン・デ・パルマ デ・パルマのことは好きではないが、これは楽しめた。 こんなに大味で、下品で、本当にいいのだろうかと思いながらも何故か楽しめるのは、この人の演出の持ついかがわしさがこの映画では魅力になっているからだ…

完全なるチェックメイト

2016/8/21鑑賞 監督:エドワード・ズウィック 冷戦下の代理戦争としてのチェスの世界王者戦。陰謀論者でクレイジーな天才ボビー・フィッシャーと、サングラスかけてまるでスティーブン・セガールみたいなめっちゃガタイのいいスパスキーが戦う。 説話的には…

カンウォンドの恋

2017/6/18鑑賞 監督:ホン・サンス いかにも90年代のアジア映画という画調。 前半、特に話の省略がおもしろくて笑える。例えば、「既婚者に見えない」と女たちに言われて浮かれ、制服を脱いで私服になった警察官が、次のカットではその女性たち同士の重苦し…

県庁の星

2015/4/7鑑賞 監督:西谷弘 メッセージにまったく共感できないので終盤ちょっと萎えたけど、横顔の見事な撮影や、感情の視覚化など、映画としては見どころたっぷり。 大筋がシンプルなので、卓越した情報処理能力は脇役に回していた。丁寧に顔を拾っていく。…

高校

2018/8/14鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン クローズアップがかなり多くて、教師と生徒の肉体的な差を観察・対比させるような映画だった。教師の禿げ頭のあとに、音楽に合わせて体操する女生徒の下半身をなめるように撮ったり、醜い眼鏡の女教師と対比し…

崖っぷちの男

2013/8/15鑑賞 監督:アスガー・レス 発想の勝利と言うべきか、脚本の勝利と言うべきか、これはどう撮っても面白くなるだろう。ワンシチュエーションもので、リアリティやもっともらしさについてはある程度割り切っていて、それが功を奏しているように見える…

恐喝(ゆすり)

2014/1/22鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック アニー・オンドラがヒッチコック女優の中でもトップクラスに美しい。 ヒッチコックはサイレント時代から音に溢れているが、トーキー第一作だけあって音に対する目配せが至る所にある。 ピアノ、口笛、鼻歌、…

去年マリエンバートで

2014/3/24鑑賞 監督:アラン・レネ ある男が、ある女に「去年会いませんでしたか」と持ちかける。それが捏造されたものなのか、見たくない過去だから忘却しただけなのか、あるいはその両方なのか。 モブや、時には主演の二人さえ自動人形のように見えるのは…

続きをしよう(『鬼談百景』所収)

2018/7/28鑑賞 監督:内藤瑛亮 墓場で子供が鬼ごっこをしていたら、次々と怪我をしてしまうというストーリー。 怪我をした子が、まるで嫌な飲み会から抜けるかのようにいい笑顔で「じゃ、これで」と去っていくのでコメディのような雰囲気が漂う。そして、怪…

救済

2016/11/8鑑賞 監督:内藤瑛亮 青山シアターのウェブサイトで有料で見た。 いじめられていて家庭環境も最悪な少女が拳銃を拾う、という話。 物凄く禍々しい自然光と銃撃が見られる。川に投げ込まれたものを服を着たまま取りに行く行動を撮ることで執着を示す…

この庭に死す

2016/12/26鑑賞 監督:ルイス・ブニュエル 前半は、ダイヤの鉱山での採掘者と警察のつばぜり合い。後半はジャングルでのサバイバル。 虫にたかられている蛇の死骸ショットから凱旋門の雑踏にカットが飛び、あとでそれが写真だとわかる場面の現実感覚の喪失が…

狂恋・魔人ゴーゴル博士

2017/01/23鑑賞 監督:カール・フロイント 女優狂いの天才外科医が寝とるために頑張る話。30年代の映画だけど、説話に無駄はないし、視覚的な見どころも多くて評判通り面白い。 窓ガラスにクレジットが出たと思ったら、それを殴ってクレジットごと窓ガラスが…

心のともしび

2017/02/13鑑賞 監督:ダグラス・サーク めちゃくちゃよかった。ラストシーンでは、単純な切り返しが、視力を取り戻した彼女のPOVショットにしか見えなくなる。 メロドラマといっても画面が深刻になるところは少なく、基本的に享楽的な明るい画面作りがなさ…

ゴッホ~最期の手紙~

2017/11/04鑑賞 監督:ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン 全編が動く油絵という驚くほど贅沢なアニメーションだけど、その殆どが役者の肉体・演技のトレースになっていて、内容もゴッホの死を巡る「藪の中」という趣向で、ほぼ聞き取り調査に終始する…

クロール ー凶暴領域ー

2019/11/10鑑賞 監督:アレクサンドル・アジャ ビーチのイメージがあるフロリダで、あえて色調を落とした黒沢清みたいな画面作りをしている点で西谷弘『昼顔』を思い出し、好印象の序盤。 閉鎖状況のサスペンスや父娘のドラマにはいまいちノレなかったが、終…

カニバイシュ

2016/11/23 鑑賞 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ 特集上映「永遠のオリヴェイラ」で見た。原題は”Os Canibais”とのこと。 非常に変な映画である。舞台は、時代も場所も不明などこかの上流貴族の舞踏会。黒塗りの高級車に乗った貴族が続々と現れ、晩餐会が…

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

2014/2/20鑑賞 監督:ジョー・ジョンストン 面白い。MCUフェーズ1で一番いい映画だと思うし、全フェーズを通じても一番かもしれない。 フィクションであること、プロパガンダであることを自覚的に作品に取り込んでいて、キャップが国債集めに駆り出される場…

寄生獣

2018/08/07鑑賞 監督:山崎貴 よく出来ているし楽しんだ。 母親との感情の繋がりは手のクローズアップに収める。寄生生物には協調性がないから会話中も互いを見ないで別々の方向を向いている。どちらも映画的な美点だ。 水族館にて「一クラス3秒で皆殺しに…

間諜X27

2017/11/17鑑賞 監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ 主演はマレーネ・ディートリヒ。 照明が、非常に凝っていて影がいたるところに落ちている。ディゾルブも多いが、これはあまり好きではない。 冒頭では、間諜の道を薦めてくる老いた男を追い出したあと…

恐怖のまわり道

2016/12/10鑑賞 監督:エドガー・G・ウルマー しかめっ面で激しいピアノを弾くトム・ニールに笑っていたら、いきなりの雨でヒッチハイクを断ち切り、天候も車もジャンルも変形する。冗談のように訪れる死。ダメ押しの悪女はまったく反論を許さない。 どう考…