呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

昼顔

2017/06/10鑑賞 監督:西谷弘 公開初日に見に行った。 海が出てきても、快晴でも、最初から黒沢清みたいに不自然に灰色な映画だからきっと陰惨なことになるだろうと思っていたらあんなことに...。 西谷弘なのに横顔のショットがない、ない、と思っていたら最…

県庁の星

2015/4/7鑑賞 監督:西谷弘 メッセージにまったく共感できないので終盤ちょっと萎えたけど、横顔の見事な撮影や、感情の視覚化など、映画としては見どころたっぷり。 大筋がシンプルなので、卓越した情報処理能力は脇役に回していた。丁寧に顔を拾っていく。…

高校

2018/8/14鑑賞 監督:フレデリック・ワイズマン クローズアップがかなり多くて、教師と生徒の肉体的な差を観察・対比させるような映画だった。教師の禿げ頭のあとに、音楽に合わせて体操する女生徒の下半身をなめるように撮ったり、醜い眼鏡の女教師と対比し…

エル ELLE

2017/8/26鑑賞 監督:ポール・バーホーベン いつにも増してブニュエルみたいだ。 暴力的なところは暴力的に、猥雑なところは猥雑に。 誰もいないところで年増女が犯されて、ただ猫だけがそれを見ているという鮮烈な冒頭シーンに引き込まれる。 キリスト教は…

アイデンティティー

2013/12/26鑑賞 監督:ジェームズ・マンゴールド 深刻なネタバレをしている感想なので注意されたい。 クレジットを除けば86分という短さ。 雨だが誰も傘を差さない(女優は携帯電話を濡らさないためにビニールを使ったが、あれも傘では無かった)。運転手…

女の中にいる他人

2016/6/29鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の撮った人殺しの映画。 ぽつんと都市部の車道沿いを歩くスーツ姿の男がタバコをくわえると、カッティングインアクションでどこかのダイナーに飛んで環境音が消えるが、男はまったく同じように生気がない。つまり、外部…

驟雨

2021/2/6鑑賞 監督:成瀬巳喜男 『めし』同様、子供のいない倦怠期の夫婦(しかも貧しい)のながーい夫婦喧嘩を、近所付き合いなどを交えてドラマにしたという感じ。妻が原節子で、夫が佐野周二。タイトルは、途中で一度、突然の大雨が降って場面転換が起き…

アナベル 死霊館の人形

2015/3/1鑑賞 監督:ジョン・R・レオネッティ アナベル人形はそこにいるだけで怖いし、アナベルという名前の女優が出てるところとか嫌だなと思ったけど、演出や映像というよりは効果音で驚かされたという鑑賞感が残った。怖いけど面白くはない。 ホラーは手…

死霊館

2013/10/20鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 前半はよくある古風なホラーかと思っていたら、後半から二つの家族が結束して悪魔と戦うアメリカ映画お得意の流れに乗っかってきて、ホラーというよりは家族の映画、チームの映画として燃える展開になる。 最初バラバ…

インシディアス 第2章

2014/1/13鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 糸電話の使い方には感動した。 解決編のせいか脚本がやや理屈っぽく、前作ほど面白くはない。 アクションはある。もっとも、ヤカン投げたりとアクション自体は地味だが、建物の構造は事前にそれなりに提示されるし、動…

インシディアス

2014/1/13鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 初見時には、アメリカンホラーが上手くJホラーの成果を飲み込んだのだと感じた(具体的にはどこが?と訊かれてもわからないが)。 いずれにせよ、ジェームズ・ワンなしに2010年代のホラー映画は考えられない。 音…

狼の死刑宣告

2013/12/15鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 傑作。まず台詞が少ない。 最初の14分で復讐のお膳立てを済ませる手際の良さにもう「あ、巧い」と呟いてしまう。 ギャングの乗る車のショットがかっこよくて、それだけでもう「たぶん傑作だな」と思ってしまう。 冒…

ソウ

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン パッケージの印象で勝手に「白い」映画だと思っていたが、バスルームは念入りに汚されており不快なほどだ。さらに、写真家の作業場や、医者が浚われる駐車場もまた徹底的に汚されている。 21世紀にあんなスイッチで照…

デッド・サイレンス

2014/1/4鑑賞 監督:ジェームズ・ワン 父の館だの、人形劇の劇場だのがカメラに真正面から捉えられて「どーん」と出てくる場面に、これは怪奇映画だということを強く印象付けられる。 人間人形といい、湖上の劇場といい、朽ち果てた劇場の内装といい、100…

トールマン

2013/12/9鑑賞 監督:パスカル・ロジェ 面白い。ジェシカ・ビールが冒頭でお岩さんのように傷だらけになっていて、作中でもやっぱり傷を負うんだけど、何度傷を負っても冒頭の怪我になかなかたどり着かないという焦らしで引っ張る。工夫されたシナリオでも引…

暗黒街の顔役

2013/12/9鑑賞 監督:ハワード・ホークス ちょっとサイレント映画を引き摺っているようなオーバーアクトが目につくものの、すこぶるかっこいい。 妹と喧嘩する場面でのレースカーテン越しの斑の陰影、襲撃されて床屋で電話する際の真っ黒に塗りつぶされた身…

死霊のはらわた

2013/11/7鑑賞 監督:サム・ライミ ロバート・キャンベルの濃い顔が本作を支えている(と言えば多分サム・ライミの多くの映画がその過剰さに見合った顔の俳優に支えられているのかもしれないが)。 ただ本作の過剰な多視点と妙な構図からは、映画小僧として…

しとやかな獣

2013/9/15鑑賞 監督: 川島雄三 (ほぼ)全員悪人。守銭奴一家の住まう団地で繰り広げられる、金と性との暗黒喜劇。 尋常ではない構図、尋常ではないパンフォーカス、尋常ではないフィルムの発色。 どうして面白い構図になるかと言えば、基本的に手狭な中で…

民衆の敵

2013/9/4鑑賞 監督:ウィリアム・A・ウェルマン 現代劇としてのギャング映画というものをどういう気分で当時の観客が見たのか気になる。 野獣的な怒りと女性的な美を一身に宿しているキャグニーは稀有な俳優だ。拳で相手の頭に触れる仕草が癖になる。仇敵を…

崖っぷちの男

2013/8/15鑑賞 監督:アスガー・レス 発想の勝利と言うべきか、脚本の勝利と言うべきか、これはどう撮っても面白くなるだろう。ワンシチュエーションもので、リアリティやもっともらしさについてはある程度割り切っていて、それが功を奏しているように見える…

エンジェル ウォーズ

2013/6/6鑑賞 監督:ザック・スナイダー 冒頭5分の導入部は申し分無かった。しかしそれ以降は、良くも悪くもエミリー・ブラウニングという役者を好きになれるかどうかにかかっていると思う。 彼女はアビー・コーニッシュと役柄を変わるべきだったんじゃない…

リング

2013/6/6鑑賞 監督:中田秀夫 脚本の高橋洋本人も認めている通り、最後の貞子登場シーンは完全に失敗している。あれは照明がダメだろう。なにより怖くない。あれなら冒頭で死んでいた女の子の方が怖いんじゃないか。 一方で、ビデオの方は成功していると思っ…

女優霊

2013/1/10鑑賞 監督:中田秀夫 とにかく、ラッシュを観る場面が悉く怖い。霊の来歴を調べても、そもそも出自からして架空の存在で、いるはずのない女だというのが怖いし、未現像フィルムの映像は彼が最後に観る光景だったという凄まじさ。 あとは、ホラー映…

L.A.ギャングストーリー

2013/12/108鑑賞 監督:ルーベン・フライシャー 一夜漬けのギャング映画知識で撮ったかのような軽さ。ライアン・ゴズリングの軽薄さ。コミックキャラのようにペラペラなキャラクターたち。あのスローモーションは、スタイリッシュではない。重力から解放され…

イーグル・アイ

2013/12/22鑑賞 監督: D・J・カルーソー (今回は製作総指揮だが)スピルバーグの大好きなヒッチコック流巻き込まれ映画。この監督は『ディスタービア』でもヒッチコックをやっていた。 荒唐無稽なマクガフィンを撒き散らして、ミッドポイントで謎を明かし…

恐喝(ゆすり)

2014/1/22鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック アニー・オンドラがヒッチコック女優の中でもトップクラスに美しい。 ヒッチコックはサイレント時代から音に溢れているが、トーキー第一作だけあって音に対する目配せが至る所にある。 ピアノ、口笛、鼻歌、…

男の敵

2014/2/11鑑賞 監督:ジョン・フォード 霧の街で繰り広げられる一夜の映画として、まずは単純に美しかった。 マーゴット・グラハムがブロンドの髪を露わにする瞬間とか、その髪が風に揺れる様とか、その彼女の顔にタバコの煙が吹きかけられるところとか。 ウ…

2014/4/9鑑賞 監督:ルイス・マイルストン 鮮烈。のっけから凄い。雨中の行軍シーンに至るまでの執拗な畳みかけ。雨雲と砂浜、井戸、葉に叩き付けられる雨粒がモンタージュされる。 南国の家屋の奥から子供が走り出してくるだけで心躍らずにいられないのはな…

去年マリエンバートで

2014/3/24鑑賞 監督:アラン・レネ ある男が、ある女に「去年会いませんでしたか」と持ちかける。それが捏造されたものなのか、見たくない過去だから忘却しただけなのか、あるいはその両方なのか。 モブや、時には主演の二人さえ自動人形のように見えるのは…

TAKESHIS'

2015/6/25鑑賞 監督:北野武 劇中劇の銃撃戦に見られるように、静から動に移る居合じみた編集は相変わらずカッコいい。 『去年マリエンバートで』みたいに違う時間軸の映像が現在を貫いて出てくるような編集も最初はよかった。 美輪明宏とすれ違うところの複…