呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#★★★★☆

『ゴジラS.P』第1話「はるかなるいえじ」

2021/3/26鑑賞 監督:高橋敦史 脚本・SF考証・シリーズ構成:円城塔 興奮して書きなぐっているから、多分見た人にしか何言っているのかわからないだろうと思う。 情報量が『四畳半神話大系』並みに多くてとても面白かったが、結構タメが長くて他の人がどう見…

斬る

2014/2/12鑑賞 監督:三隅研次 人間が縦に真っ二つになる場面がある。 1時間ちょっとで男の一生を語っているためか、説話がとても奇妙なものに感じられる。 三隅研次らしい前衛的なオープニングで始まったかと思いきや、前半は馬鹿みたいなホームコメディが…

突然の花婿

2016/5/18鑑賞 監督:ダグラス・サーク なんというバカ結婚喜劇! 『ぼくの彼女はどこ?』のママをパワーアップさせて、図々しい居候を15倍に増やしたら『突然の花婿』になると思う。軍隊から休暇を貰ったら、新妻と暮らすはずの実家が妻のママとその15人…

10番街の殺人

2016/1/8鑑賞 監督:リチャード・フライシャー リチャード・アッテンボロー扮する「絞殺魔」と、その犠牲となった若夫婦のお話が基本的な本筋。『絞殺魔』とか『静かについて来い』とか、こういうの好きよねフライシャーって。 なお、女性を横たえようとする…

イグジステンズ

2013/12/23鑑賞 監督:デヴィッド・クローネンバーグ 脊髄にバイオポートという穴を開け、生体ケーブルを挿しこみ、ゲームポッドと人体を直接つないでプレイするヴァーチャルリアリティーゲームが流行している未来で、アンテナ・リサーチ社から発売される、…

私の名前はジュリア・ロス

2018/12/18鑑賞 監督:ジョセフ・H・ルイス 家賃を滞納する下宿人ジュリア・ロスは、あるとき職業紹介所で待遇のいい秘書の求人が出ていることを発見する。面接を受けると話はとんとん拍子に進み、その日のうちに荷物を持って家に来るように言われそのとお…

暗黒街の弾痕

2013/11/11鑑賞 監督:フリッツ・ラング いわゆるボニーとクライドもののひとつ。アマンダ・サイフリッドは本作のシルヴィア・シドニーにそっくりだということを発見し、彼女がシネフィル気質の映画監督から愛される理由を知った気がする。 なんといっても二…

殺しの烙印

2018/1/19鑑賞 監督:鈴木清順 映画前半は、ラフに撮られたカットと、人工的にきっちり決めたカットが混在していて楽しい。同じようなカットを使わないためにひたすらアイデアを尽くしているところもいい。次のカットがとにかく読めなくて、例えば、スピンし…

アメリカの影

2014/1/14鑑賞 監督:ジョン・カサヴェテス 即興的な作品には見えるものの、後年のような前衛的な作風ではなく、普通に滑らかに見られる。 マンハッタンを舞台にした映画で、とんでもなく瑞々しく、そして面白かった。役者の顔だけで目が奪われる。 とにかく…

ワン、ツー、スリー/ラブハント作戦

2019/01/27鑑賞 監督:ビリー・ワイルダー コカ・コーラ西ベルリン支社長(ジェームズ・キャグニー)は驚愕する。社長から預かったアバズレ娘が東ドイツのコミュニストと結婚していたことが判明したからである。しかもコカコーラ社長夫妻がそこにやってくる…

ジャンゴ 繋がれざる者

2013/3/1鑑賞 監督:クェンティン・タランティーノ 「ジャンゴ」とあるからにはマカロニ・ウエスタンなのだろうと思って見ると、実際にはそこまで関係がなく、むしろサム・ペキンパーとの共通点の方が多くある。 また蓮實重彦がどこかで「西部劇だと思わなけ…

ゾディアック

2016/09/16鑑賞 監督:デヴィッド・フィンチャー 1960年代終わりから1970年代に実際に起きた「ゾディアック事件」の関係者の顛末を年代記的に語った実録犯罪映画で、ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニーJrが出演する。 要するに、…

恐怖女子高校 女暴力教室

2016/09/29鑑賞 監督:鈴木則文 OPからかっこいい。めいめいが異なる不良を働いている教室のカタログ的な場面、放課後に狭い縦構図の公衆トイレで着替える女子高生たち、そこにかぶさる赤いクレジット。 起きていることは下品そのものだが、音楽は途中で断…

スリーピング ビューティー 禁断の悦び

2016/12/22鑑賞 監督:ジュリア・リー 光がいい。エミリー・ブラウニングの肌がまばゆいほど白い。そのためか美術・調度品の贅沢さも無駄にならない。 時折現れる和風要素に困惑しながら見ていたが、原作が川端康成「眠れる美女」らしい。

ANON アノン

2020/06/11鑑賞 監督:アンドリュー・ニコル 映画において、拳銃は視線を可視化する小道具で、本作でもそれは殺人犯のPOVショットにはっきりと現れている。 だからこそ、終盤になって、視線とまったく違う方向を撃つクライヴ・オーウェンが新鮮に映る。あと…

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

2018/11/29 鑑賞 監督:ジョン・リー・ハンコック 監督は『しあわせの隠れ場所』や『ウォルト・ディズニーの約束』で手腕を発揮してきたジョン・リー・ハンコック。前作でディズニー創立者の光と闇の一代記を撮り切った実績からも、マクドナルド創立者のきな…

最後の追跡

2019/01/08鑑賞 監督:デヴィッド・マッケンジー 「44年働いているがステーキとポテト以外を頼んだ客はいない」というセリフが出てくるが、まさにそういう映画だった。定食屋で出てくるいつもの定食。 こういう話がまだ通用しそうなテキサスっていったいど…

魂のゆくえ

2020/02/26鑑賞 監督:ポール・シュレイダー 自暴自棄になる環境保護活動家を救うことに失敗した牧師が、やはり自暴自棄になっていく話。ほぼ自殺についての映画という感じだが... 厳格でシンプルなレイアウトを用いて、役者のアドリブを許さない、抑制され…

エレクション 死の報復

2020/04/11鑑賞 監督:ジョニー・トー 鈍器と刃物だけで構成された凄惨なヤクザ映画。毒々しい緑と、深い黒も映画の凄惨さによく似合っている。 ほとんど説明なく展開して、息が詰まるような緊張感がずっと続く。その中でニック・チョンとルイス・クーの関係…

カルロス 第2部

2013/11/24鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス オープニングの不協和音とノイズの嵐に、オリヴィエ・アサイヤスの映画を観ているという実感が得られる。 OPEC本部占拠・各国石油相人質事件をじっくり描いてくれる第二部は、いささか早足気味だった第一部に比…

カルロス 第1部

2013/5/8鑑賞 監督:オリヴィエ・アサイヤス 実在したイリイチ・ラミレス・サンチェスという極左テロリストの半生を題材にとったテレビ映画を劇場版に組みなおした、その第1部。 ひたむきな労働の映画、という印象がある。青春として撮っているかもしれない…

世界の終り

2013/9/26鑑賞 監督:ジョン・カーペンター 見た人間を発狂させる幻のフィルムを追うというストーリー。 とても面白かったが、どうしてなのかが分からない。とんでもないことが起こっており、しかもそれが映画の嘘だということは分かりきっているにも関わら…

ノスフェラトゥ

2013/9/26鑑賞 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 人間の顔を白く浮かび上がらせる極端な照明が、古典映画の表現への懐古というだけでなく審美的に、長回しの中でも崩れることなく映画を支え切っている。 イザベル・アジャーニは鏡に映らず入ってきた吸血鬼を…

突破口!

2013/7/24鑑賞 監督:ドン・シーゲル 傑作。冒頭の銀行強盗シーンでいきなり引き込まれる。 何やら牧歌的で、太陽の逆光を多用する審美的なショットから始まったかと思えば、看板を映すカメラがクレーン移動して、自動車が入って来るなり銀行強盗シーンが始…

テレフォン

2013/5/31鑑賞 監督:ドン・シーゲル 電話で怪しげな詩を聞かされた一般市民が、催眠術にかけられたように軍事施設に攻撃をしかける事件が連続する。調査すると彼らはソ連に留学した経験があった......という冷戦時代らしい内容のアクション、サスペンス映画…

幌馬車

2013/5/20鑑賞 監督:ジョン・フォード ジョン・フォードの中でも非常に好きな映画のひとつ。 二人いる主人公が二人とも、落下してくる女性を受け止め、その娘と恋に落ちる。 子供が老人から譲り受けた拳銃一丁で、最後瞬く間に数的不利を挽回する銃撃戦もお…

トレイン・ミッション

2018/3/31鑑賞 監督:ジャウム・コレット=セラ コレット=セラとリーアム・ニーソンのタッグ4作目で、面白かった。特に最初に出てくる死体にはびっくりした。 列車という物体を扱う際、ポン・ジュノだったら縦に細長い空間を縦に動くのだが(その例外とし…

幸福の設計

2016/4/9鑑賞 監督:ジャック・ベッケル いわゆる宝くじ映画なんだけど、ほんとに大したことはなにも起こらない。若い夫婦が宝くじに当たる→なくす→落ち込む→見つかる→ハッピーエンド。あとは妻に言い寄る男との筋くらい。本筋が弱いから脇役がプロットに大…

フランシス・ハ

2016/5/24鑑賞 監督:ノア・バームバック フランシス、女、27歳、大柄、ダンサー実習生、親友とは喧嘩、住所不確定、金なし、彼氏ナシ、職なし、みたいな映画であった。モノクロ映画でジャンプカットを使い、都市部の野性的な男女の日常風景撮るのでいかに…

パリのランデブー

2015/12/16鑑賞 監督:エリック・ロメール パリでの野外デートをオムニバス形式で三話分まとめたのが本作。ドキュメンタリーに近い撮り方をしている。隠し撮りはしてないらしいけど(ロメール談)、わざとコントロールが難しいような雑踏を選んで撮ったりして…