呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

#★★★★★

早春

2018/8/23鑑賞 監督:小津安二郎 凄かった。あの蓮實重彦の「映画は見つめ合う瞳を映せない」とか何とやらといった言葉と、小津の真正面からの切り返しの関係性を初めて心から体感した。 終盤、浮気騒動で仲たがいした夫婦が地方にやって来て和解する場面。…

心のともしび

2017/02/13鑑賞 監督:ダグラス・サーク めちゃくちゃよかった。ラストシーンでは、単純な切り返しが、視力を取り戻した彼女のPOVショットにしか見えなくなる。 メロドラマといっても画面が深刻になるところは少なく、基本的に享楽的な明るい画面作りがなさ…

ルルドの泉で

2017/8/29鑑賞 監督:ジェシカ・ハウスナー 病気のせいで車椅子生活をしており、世話をしてもらわなければ食事をすることも、ベッドに寝ることも一人ではできないクリスティーヌという女性が、聖地ルルドにやってきて聖地巡礼ツアーに参加する。それほど熱心…

赤ちゃん教育

2013/9/5鑑賞 監督:ハワード・ホークス 軽い気持ちで見始めたら、いつの間にか最後まで見てしまっている。ホークスはクラシック映画の中でも一番見やすいし、誰でも楽しめると思う。 ハントを軸にとことんホークス的な要素が入り乱れる圧巻のコメディ。その…

青い青い海

2016/12/11鑑賞 監督:ボリス・バルネット 言わずと知れた傑作で、野外で撮影されたとは信じられないほど奇跡的に美しいショットばかり出てくる。 液体でできた鏡のごとき海。ほとばしる陽光。涙のようにこぼれる真珠。

ヴィジット

2016/9/13鑑賞 監督:M・ナイト・シャマラン 要素要素は平凡なんだけど、それぞれ微妙にズレていて異様なバランスになっている。ロジックが見えないし、才能がないと撮れないなと思わされる。 日常、美しさ、キモさ、狂気、恐怖、ベタなメロドラマなどが渾然…

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択

2017/9/10鑑賞 監督:ケリー・ライヒャルト オムニバス形式の映画で、主演はローラ・ダーンとクリステン・スチュワート。 素晴らしかった。ダウナーな雰囲気のなか癒されていくといった感じで、3話目の女弁護士と牧場の女性の密会は特に画面に力が込められ…

ひき逃げ

2018/3/11鑑賞 監督:成瀬巳喜男 子供をひき逃げしたが、夫に説得されてその事実を隠蔽した女性(司葉子)と、それを暴くために家政婦として潜入する子供の母親(高峰秀子)の対決?を描いた映画。 高峰秀子が 酔っぱらって踊る場面での大きく揺れるカメラ。…

恐怖省

2018/1/8鑑賞 監督:フリッツ・ラング 凄まじい傑作。ほぼ全編にわたってみなぎる霊気というか、いまにも幽霊が出そうな感じがやばかった。扉が出てくるシーンはすべてもうただ事ではない。 どの場面も照明による影のつけかたやレイアウトが漫画のように完璧…

素敵な歌と舟はゆく

2017/1/24鑑賞 監督:オタール・イオセリアーニ 超絶気持ちいいフレーミング。人間を歩かせるだけでなく、自転車やバイクを走らせ、船を走らせる。鳥も飛ばすし、犬がわんさか出てくる。電車の模型がくるくると動き回る。特に、予測しにくい鳥の動きがあらか…

サンキュー・スモーキング

2016/6/14鑑賞 監督:ジェイソン・ライトマン アーロン・エッカートが胡散臭いたばこ業界のロビイストを演じており、銃器業界のロビイスト、アルコール業界のロビイストなどが友達として出てくる。 面白かった。プロットだけ王道のまま、主人公としてタバコ…

肉体の冠

2016/6/14鑑賞 監督:ジャック・ベッケル 全編を通じてドアと窓の使い方が大胆かつドラマチックで圧倒される。出会いの場面ですでに特徴的な視線劇が展開されているが、脱走シーンやルカの殺害シーンなどでも、動線と距離が明確でアクションが盛り上がるのだ…

三十九夜

2012/12/24鑑賞 監督:アルフレッド・ヒッチコック 傑作。 ヒッチコックお得意の巻き込まれ映画で、主人公が追われるためにありとあらゆる理不尽が逆算で配置されていく。その視点の制御の完璧さに息を呑んだ。サスペンスとは、窓を通して誰かを盗み視ること…

座頭市喧嘩太鼓

2015.3.17鑑賞 監督:三隅研次 大映最後の座頭市であり、実験的な演出が連発される、正真正銘の傑作。 戸口を踏み越えて屋内に入る瞬間、段々と暗くなっていった勝新の身体が、完全にシルエットになると同時に居合斬りをする場面が凄かった。ちゃんと抜刀の…

奈緒子

2016.12.26鑑賞 監督:古厩智之 大傑作。すーっと動く船と並行して走る少年にカメラが寄っていく冒頭に心掴まれ、曇天模様のなかで上野樹里や三浦春馬が走る姿をとてもいい光、風、ピントが捉えていく。特に最初の給水シーンのスローモーションが素晴らしい!…

ドラッグ・ウォー 毒戦

2014/9/2鑑賞 監督:ジョニー・トー 見た中ではジョニー・トーのベスト。 ファーストショットからして、中国本土の大気汚染を存分に利用した煙の映画であることは分かる。煙があるということは風もまた見えるということで、港にはためく赤い旗の群れや、遠く…

月曜日に乾杯!

2016.9.22鑑賞 監督:オタール・イオセリアーニ 素晴らしい。 前半は画面で常に面白いことが起きているか、起きつつあるかであり、それが複数同時展開する。ひとつひとつのアイデアやアクションが意外性をもっていて、かつ小規模に炸裂しては次々と繋がって…

白い足

2016.2.3鑑賞 監督:ジャン・グレミヨン 人々が分不相応なものを夢見ることで、やがて、ろくでもないことを引き起こす舞台装置がかちかちと配置されていく。 魚臭い主人にのしかかられてふと白痴のように固まる情婦。あるいは、城の跡取りに贈られたオルゴー…