呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

増村保造 の検索結果:

ルドガー・ハウアー/危険な愛

…を見た印象は「まるで増村保造の映画みたいだ」というものだった。 冒頭でルドガー・ハウアーがハメる女どもとのやりとりには淫乱なアイデアが詰め込まれており、キリスト教関係の仕事で蛆虫を這わせ、自分の男性器を象った絵をそのへんでハメた女に渡し、汚い乳房の女に脱ぐなと指示して陰毛を切り取って口と鼻の隙間に挟んだあとブックレットにコレクションし、インテリ眼鏡女とセックスしていると赤ん坊が泣くので上下運動をしながら揺り篭を手にもってあえぐと赤ん坊が泣き止むのである。運命の相手とのカーセッ…

セックス・チェック 第二の性

…/3/7鑑賞 監督:増村保造 一流のスプリンターにするために、お前を男にしてやる。明日から髭を剃れ!そしたら生えてくる! ⇒ セックスチェックに引っかかっただと。なら、お前を女にしてやる!毎晩お前を抱いてやる! こんな滅茶苦茶な話を極めて真面目に全力投球するのがザ・増村って感じで大好きですね。 友人の妻をレイプしたあと逃げ去っていく緒形拳のフォームが完璧なんだが、やっぱスプリンターだからな。 増村は人工的な演出・構図の監督だけど、役者の肉体にアプローチするという側面もあって、…

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開されるので、見ていると異様な感覚になってくる。 脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』を思い出した(単なる動物実験繋がり)。 若尾文子と高峰秀子が視線を交差させる場面では、一人だけお辞儀をさせないことで若尾の反抗心(個人主義)を演出している。 増村の映画の中では、画面の強度はそれほど高くない。

女体

…1/12鑑賞 監督:増村保造 スーパーメンヘラ劇場だった。浅丘ルリ子がファーストショットでいきなり机に爪を立ててガリガリ! 角をかじってガジガジ! 人工的でポップな役者たちがいい。マジで目先の欲望にしか関心がなくて、徹底的に自分の欲望のまま動く浅丘ルリ子と、それに惚れてしまった堅物真面目人間の岡田英次、という組み合わせが可笑しいが、増村は馬鹿みたいに真面目なので、恐らく真剣に自由について考えているのではないか。 『痴人の愛』の同工異曲という印象(あちらの方が、画面のレイアウト…

くちづけ

…1/15鑑賞 監督:増村保造 川口浩がひねくれた正直者で、野添ひとみが素直な正直者。親が牢にぶちこまれているのだが、それでも湿っぽくならないキャラクターである。一本調子でドライな演出がこの頃からすでにあった。 お冷を貰うために川口の方にコップを突き出す野添の腕を押し返す川口など、『青空娘』ほどではないにしろ、デートという最低限の文脈を用意して、唐突で躍動感のある動きを画面に入れ込んでくるので意味より動きが浮かんでくる(そしてその動きの結果として構図が生じる)。 ローラースケー…

美貌に罪あり

2016/8/5鑑賞 監督:増村保造 杉村春子、山本富士子、若尾文子、川口浩、野添ひとみが出演している大映のオールスターキャスト映画で、美術、衣装、照明、俳優、構図、編集がどれも高い水準でまとまった超傑作。 いい映画だ~文句のつけようがない。 杉村春子の舞いがかっこいい。しびれた。

闇を横切れ

…/9/4鑑賞 監督:増村保造 新聞記者がストリッパー殺しをきっかけに政治家と街のボスの汚職を挙げる社会派エンタメ。熱血漢の新人ブン屋を川口浩、秘密を握る女を叶順子、一見理想の上司に見えるが何か裏がありそうな人物を山村聰がやっている。かなりベタなキャラクターと筋立てをそろえ、かつて汚職に染まっていた者まで反旗を翻す痛快な内容。 いわゆる増村的な演出・構図よりもオーソドックスな方法論が通されている。 『映画監督 増村保造の世界』によると、本人は「人間正しいことばかりはできない。悪…

赤い天使

…/7/6鑑賞 監督:増村保造 優しいがために股が緩くなってしまう若尾文子による変態プレイ集。 川津祐介は腕がなく、芦田伸介は縛られる。足を股に挟み、軍服を着てブーツを履かせる。男女が逆転すると、腕ではなく足がメインになるということか。この映画の上下関係逆転プレイに影響を受け、京大SF研版『艦これトリビュート』に寄稿した短編の一挿話に使った。 若尾文子の衣装は真っ黒か真っ白のいずれかで、背景が黒か白かによってある程度使い分けている印象。 血や土に汚れた病院はギリギリまで黒と白が…

昼顔

…心中』(1978年、増村保造)の梶芽衣子のように、伊藤歩がもう完全に「死」しか見ておらず、それを強く印象づけるために運転をさせるという感覚がいい。 ホテルでのやりとりのように、役者の身体的距離が近すぎると映画にならない。 傷口を鋭く(白く)光らせるというのは白黒映画の『赤い天使』(1966年、増村保造)でもあったけど、それをあんな風に使ってしまうとは驚きだ。とにかく、今時ここまでロジカルに演出で勝負する映画を撮れるのは日本では西谷弘くらいではないだろうか(あと濱口竜介か)。 …

氾濫

2015/1/8鑑賞 監督:増村保造 好色で金にがめついのに、見え見えの嘘をつき、悪人らしく笑い、基本的にあっさりと浅ましい内面を正直に告白する、ある意味、とても好感の持てる人間ばかり出てくる。 「君には娘は養えないだろ(要約)」「まるで不可能です!」

足にさわった女

2016/2/5鑑賞 監督:増村保造 なんなんだろうな、この出鱈目な脚本。原作は何回も映像化されているらしい。あえて言うなら刑事と掏摸のスクリューボールコメディかな。 足にこだわるのは最初と最後だけ。両足に手錠をかけたりする、最後のかけあいなんかはとても好きなんだけど、いかんせんよく分からん人間がこれといって魅力のない会話主体のドタバタ劇をやるという感じで惹かれるところがない。

華岡青洲の妻

2017/5/1鑑賞 監督:増村保造 見ていると異様な感覚になってくる。姑と嫁が、医者の旦那の麻酔薬人体実験の被験体になろうとする謎バトルが展開される。脳を麻酔に侵された猫が四肢を悶えさせるところもやばい。動物実験パートはワイズマンの『霊長類』を思い出した(単なる動物実験繋がりだが)。 若尾文子と高峰秀子が視線を交差させる場面では、若尾が一人だけお辞儀をしない。増村流のエゴイストである。

清作の妻

…/9/6鑑賞 監督:増村保造 増村は大好きな映画監督だし、世評の高い映画ではあるけど、これは嫌い。 抑揚・間のある増村らしくない演技が頻発し、常に辛気臭い音楽が鳴り続けている。白と黒のコントラストは微妙だが、構図はそれなりの水準。 増村の映画には本音を正直に述べるエゴイストが出てくるのだが、本作は清作も妻もほとんど耐えるばかりでエゴイストにしては霞みたいだ。むしろ周囲の人間の方があけすけな本音を語るのだけど、それではいつもと逆の構図ではないか。 いよいよ五寸釘を刺すってところ…