呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

コズモポリス

2016/3/27鑑賞

  • 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 2回見た。原作はドン・デリーロの同名の小説。同年の『ホーリー・モーターズ』とリムジン映画として不思議な一致を見せたことも印象深い。
  • 若き大富豪であるエリック(ロバート・パティンソン)は、リムジンに乗ったまま床屋に行こうとするが、NYには大統領が来ているので大渋滞が起きており、それに一日かかってしまう。その間に色々な人物がリムジンに乗って来てエリックと様々なことを喋る。
  • クローネンバーグなので画面は相変わらず、理知的で頭痛がするほど厳格に制御されており、不安定なアングルからカメラが顔に接近している。会話シーンではアドリブをまったく許さずに、役者は読まされているかのようなセリフを淡々と口にする。また、環境音がほとんどまったく入ってこないリムジンで会話をするし、それは妻エリーゼのためにエリックが外に出ていったところで変わらない(ダイナーで周囲に人がいるのに環境音がかなり小さく調整されている)。そしてリムジンの窓を介して見える風景はあまりに嘘っぽいので、映画全体がものすごく人工的な造形を施されている。
  • 若き大富豪エリックがロバート・パティンソン、妻エリーズ・シフリンがサラ・ガドン、警備主任トーヴァルがケヴィン・デュランド
  • 一方で、歳を重ねて腐ったようなジュリエット・ビノシュとのセックスといい、医者に前立腺をまさぐられながら、汗だくのランニング女と会話するところといい、警備の女とセックスをしたりテーザー銃を向けられたりするなど、裸がこれでもかと出てきて映画の人工性を腐らせようとするが、それらの肉体が誇示されるほどに、一枚も脱がないサラ・ガドンのプラスチックなエロスが際立っていく。
  • つまり、ヒッチコックによく似たエロスへの欲望がここにはあるので、なぜ私がヒッチコックとクローネンバーグを好むのかがよく分かったような気がする。ヒッチコックは役者の肉体を信頼しておらず脱がせないことでエロスを掻き立てるのだが、本作のクローネンバーグは積極的に脱がせるにも関わらずそれを映すカメラがあまりに冷たいので結果的に似たようなエロスが醸成されるのではないか。あまりに膨大で衒学的なセリフの応酬は、映画の理知的な印象を増すために意図的にやりすぎているようにも思えるが、まあいくら何でもやりすぎで、ちょっと退屈してしまう。

  • 感想はほぼ本体ブログからの引き写し。あらすじは本体ブログに置いたまま引き継いでいない。

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