呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

トマホーク ガンマンvs食人族

2020.1.12鑑賞

  • 監督:S・クレイグ・ザラー
  • ゴアホラー寄りの、無慈悲な西部劇。なかなか面白かったけど、得意不得意がはっきりしている。
  • 馬に乗った人を風景に収めるのは得意らしく、美しい。自然風景だけのショットも同様。ロングショットもまあ見れる。しかし近景になると途端に崩れるというタイプだ。特に室内や、複数人物の会話になると、構図のない、手持ちカメラでラフに撮った無策の絵面がつづくのでうんざりする。多分、近景で人物を撮るだけの方法論がない。これが前半の推進力を弱める原因にもなっていると思う。
  • 対して白眉は、食人族による静かな襲撃シーンで、あっけらかんとした唐突な暴力はかなりの見もの。気がついたらもう飛んできている弓矢や、一切の静止なく事態が悪化し、エスカレートしていく様、白い岩壁にあわせて身体を白く塗った食人族がふつーに出てくる感じ、いずれも嫌なことが「起きてしまった」という印象を造形するのに成功している。あの笛の音も不気味で、80年代を経て消臭されてしまっていた蛮族の怖さを復権している。
  • シナリオは、慈悲なく登場人物を困難に陥れて、同じ出来事に対する反応の差をつかってキャラクターを描写していくという教科書的なもの。これから惨殺されるのに泣き言をいわず、報告を優先する部下はよかった。
  • 120分を越えていることは無視できない欠点で、痛みを強調したり、別れの場面を引き伸ばしたりする傾向があって、理解はするけどもっと挿話やセリフを削ってもいいのではないかと思わせた。次作以降をみると、どんどん長尺化しているみたいだが……