呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

三隅研次 の検索結果:

…/2/7鑑賞 監督:三隅研次 原作が三島由紀夫で、主演が市川雷蔵。三島らしく実よりも美学を取るストーリーと、どんな脚本でも美にこだわる三隈研次という感じで相性が良さそう。 一言でいえば、日本の狂った体育会系(剣道部)がひたすらに怖いという映画なんだけど、それ以上に、いかにも三島っぽい狂い方してる剣道部主将が怖い。 三隅の白黒映画に出てくる人間はブロンズ像みたいで、身体パーツがひたすらにオブジェとして審美的に撮影されている。なので、死体があまりにも「物」っぽい。 また終盤、余白…

斬る

…2/12鑑賞 監督:三隅研次 人間が縦に真っ二つになる場面がある。 1時間ちょっとで男の一生を語っているためか、説話がとても奇妙なものに感じられる。 三隅研次らしい前衛的なオープニングで始まったかと思いきや、前半は馬鹿みたいなホームコメディが展開される。 貧乏侍の一人息子が2年の旅に出ると申し出る理由が「なんとなく」で済まされたかと思いきや、その旅から帰ってきた息子がどういうわけか邪剣を披露し、すると旅立つときには何も言わなかった妹が「わたし実はそんな気がしてたのよ」と今更事…

大菩薩峠

…/6/9鑑賞 監督:三隅研次 繰り返し映画化されているが、これはいわゆる「大映版」。 闇討ちの場面で、市川雷蔵が刀を抜くと身体はシルエットになり、代わりに刀が光る。見たとおりの邪剣。 また、霧とセットが物凄いが、セットを見せるための広い構図や三部作らしい長尺の物語にはA級的なかったるさも感じる。 座頭市で採用されていた斬る瞬間の「ピュッ」というSEはなく、そのため少し殺陣が作り物っぽく見える。 室内で刀を振り回し始めて、やがて外に出るという組み立ての殺陣が第二部を含めて繰り返…

座頭市血煙り街道

…/6/4鑑賞 監督:三隅研次 勝新の殺陣の荒唐無稽さがよくわかる一本。段差に転げながら斬る、柵越しに斬る。 ラストの近衛十四郎との殺陣の途中に、木の骨組みに引っ掛かって一回転後ろにひっくり返ったかと思えば、刀の先から血が流れてきて、近衛十四郎の苦悶の顔が映る。 OPで、逆光の勝新の背中に映る白文字の「監督 三隅研次」もかっこいい。 登場人物が悲しい気持ちの時には、役者に悲しい表情をさせるだけでなく、作り笑顔と悲しい表情、無表情といった変化をつけて、そこを無軌道に行き来する方が…

新選組始末記

…1/13鑑賞 監督:三隅研次 まことに贅沢ながら、三隅のベストラインから比較すると陰影や人工性など、ショットが弱いと感じてしまう。けど、面白かった。三隅で実録ものって新鮮だな。 容易に男女を見つめ合わせたくないという演出方針が見える。最初の見つめあいでは、男女それぞれの視線のカットの中間に、回想をまるまる挟むことで「カメラを切り返しているのに、まったく切り返しているようには見えない」というシーンにしてしまっている。切断的編集。 2回目は、男女が話している途中に殺し合いがはじま…

御用牙

…0.25鑑賞 監督:三隅研次 オープニングはスプリットスクリーンから始まる。実験好きな人なのでこういうことをやるのに違和感はないけど、初めて見るような気がする。他でやったことはあるのだろうか。 オープニングのつづき。画面右から左へざっざっと歩いていく同心たちが、幾何学的に配置される。手前と奥、左・中央・右、均等に並べられて歩いていくので人工的な印象を受ける。そこに同心規則を読み上げる声がかぶさってくる。 いよいよ北町奉行書の室内、同心規則への指印が押される場面。刀を抜いて指を…

眠狂四郎無頼剣

…3.10鑑賞 監督:三隅研次 シリーズ第8作目。市川雷蔵VS天知茂で、かつ円月殺法VS円月殺法という豪華な仕立てだけど、いかんせんシナリオが複雑すぎてついて行く気が失せる。画面で起きてないことをセリフに詰め込んでる場面が多過ぎないか? 刀は宙を飛び、市川雷蔵が黒っぽい服なら、敵役の天知茂は白装束。かっこいいことはかっこいい。間接的でわかりにくい(だからこそかっこいい)描写が多い。ついたてに隠れた雷蔵と、暖簾の向こうにいる藤村志保が、一間を挟んで対峙する場面の緊張感。 三隅のパ…

座頭市喧嘩太鼓

…3.17鑑賞 監督:三隅研次 大映最後の座頭市であり、実験的な演出が連発される、正真正銘の傑作。 戸口を踏み越えて屋内に入る瞬間、段々と暗くなっていった勝新の身体が、完全にシルエットになると同時に居合斬りをする場面が凄かった。ちゃんと抜刀のときに刀身に光を当てて反射させている。マジで漫画みたいな精度でコントロールされた画面。 雪の降らし方も凄い。 「ドめくらって三度言っちゃいけませんですよ」と言いながら、画面を覆う勝新の背後で人が倒れる。この殺陣で床近くに配置されている間接照…