呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

ザ・タウン

2011/8/16鑑賞、2018/4/22 2回目

 

  • 監督:ベン・アフレック
  • 内容としてはマイケル・マンの名作『ヒート』から警察側の私生活をばっさりと切り、視点を犯罪者側に寄せて内面を掘り下げた上で、ラストの展開を変えたような映画で、概ねこのジャンルの典型的なシナリオをなぞるのだがベン・アフレックの演出力は卓越しており、また俳優の魅力が存分に引き出されている。

  • 武装強盗の過程で、襲撃犯の男と、被害者の女がシチュエーションに似つかわしくないエロチックな触れ合いをもつことをあえて演出している。『夜に生きる』では靴下を口につめる行為で。本作では、ダイヤルを回す手に手を添える行為で。
  • レベッカ・ホールが手入れする畑の荒れ方は、内面の荒廃の象徴というよりもむしろ、素人園芸にありがちな様相としてかなりリアルだ。
  • 誰もが指摘するように本作のMVPはジェレミー・レナーだ。破滅的な悪党であると同時に少年のように儚い雰囲気を放つその存在感は、どこか『彼奴は顔役だ!』や『白熱』に出たジェームズ・キャグニーを彷彿とさせる。役自体がキャグニー的なのだが、ここにレナーの身体的な特徴や演技も効いてくる。つまり、不良っぽくテキパキとした口調と、軽くて高い声質、終始落ち着かない挙動、それほど高くない身長などがキャグニー的な役をやるにあたって完全にはまっているのだ。とりわけ声がいい。
  • 冒頭の銀行強盗のち、人質のレベッカ・ホールが目隠しのまま浜辺を歩く場面にカットが跳んで、そのあとすぐタイトルが出る……ここは韻文的な素晴らしい省略で、かっこいい。
  • 捜査官役であるジョン・ハムの衣装が野暮ったい点がとても良いし、なにより暑苦しすぎる眉が素晴らしい。ベンアフにこれでもかと罵詈雑言をぶちまけるところも最高。