呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

白鯨との闘い

2016.1.25

  • 監督:ロン・ハワード
  • メルヴィルが『白鯨』を書くに当たって参照したという捕鯨船エセックス号の事故が題材となっている。
  • あの破天荒な『白鯨』を踏まえると、どうしてもこの地味な実話では肩透かし感が強い。いや、これなら玉砕覚悟で『白鯨』をやってくれよと思いたくなるほどシナリオが盛り上がらないのだ。クリス・ヘムズワースロン・ハワードのペアがなまじ良いだけに残念でならない。
  • 白鯨の巨大さ表現はギャレゴジに大きく水を離されている。でも、初登場シーンはかっこよかったな。あそこには演出という現象があった。捕鯨シーンのロープを使ったサスペンスもよかった。序盤はそれこそ、海洋冒険映画ってこんなに面白かったんだなと思っていたが。水しぶきをガンガンカメラにぶっ掛けていくスタイル。
  • ロン・ハワードなので、あの『コクーン』のような海の場面を期待して見て、それについては満足できた。『ラッシュ/プライドと友情』にも見られた、カメラを手前の物や地面に超接近させる『セコンド』的なパラノイア映像も用いられているが、終盤になってパラノイアそのものが描くべき対象になってくると流石に食傷気味だと感じる。音楽はうるさい。白鯨登場シーンや捕鯨のロープサスペンスの手腕は確かだし、テンションの高さでどうにでもしてしまうあたりは流石である。
  • 鯨を殺すと潮を吹くところから血を噴き出すので、捕鯨の人々が血の霧に真っ赤になるとか、鯨の油を獲るために頭部に入っていくとか、そういう鯨的細部は面白かった