呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

アンソニー・マン の検索結果:

最前線

2016/10/2鑑賞 監督:アンソニー・マン 独特の斜面に、歩兵たちがへばりついて動かないところをゆっくり白煙だけが移動していって、カメラがそれについていく。わくわくするオープニングである。 歩兵ものの有名作ということで、実際、視線はとても低くて全体の状況は最後までわからない。お金はそこまでかからなさそうだ。見えない敵といえばハワード・ホークスの『永遠の戦場』だなあと思い出しながら見ていた。ミニマルな戦争映画の撮り方として、一つの理想形ではないかと思う。

雷鳴の湾

…/1/8鑑賞 監督:アンソニー・マン 石油採掘事業の話で、出資をとりつけるところから始まるので実質ベンチャー企業物語なところはある。石油採掘よりも、むしろ沿岸でエビ漁をやっている住民との確執や、その町娘とのメロドラマにスポットが当たり、ストーリーがめくるめく展開される。 縦長の石油プラットフォームはシネスコの横長画面と相性が悪そうだが、最後に青空をバックに石油が噴出する場面の仰角といい、顔が切れるクロースアップとの切り返しといい、歪みつつもかえって迫力を画面に与えている。凄ま…

西部の人

…2/29鑑賞 監督:アンソニー・マン 大傑作。美しい。シネマスコープを存分に生かした空間造形に痺れた。 手前になめるように人物を配置し、奥からロングショットで人物を出現させる、というシネマスコープではむしろ基本的なショットを高頻度で使い、適切に距離感を演出する。ただそれだけなのに、「基本」の水準が超絶的に高いので、もはやそれだけで映画になっている。 クライマックスの三つ巴の銃撃戦も、常に位置関係を適切に捉え続けていて、アクションが完全に繋がっている(つまり、カット間に飛躍がな…

高い標的

…9/16鑑賞 監督:アンソニー・マン リンカーンやピンカートンといった固有名詞にまつわる歴史はあまり反映されず、地味な列車サスペンスが展開される。この路線だと『その女を殺せ』と比べてしまうな。 境界を置いて、その両側の人間を撮ってバレるかバレないかのサスペンスが頻発する。 強い「覗き」のショットが2箇所あり、窓に文字を書く『バルカン超特急』の変奏もある。 主人公に冒頭で警官バッジを捨てさせるけど、それが途中やたらと活かされる脚本だった。身分証明書を求められる場面を挿入させるの…

遠い国

…1/28鑑賞 監督:アンソニー・マン 面白かった。ルース・ローマンにガイドとして雇われる場面で、初めて夜の画面になり、また珍しくクローズアップが使われる。後々の伏線になる場面でもあるので、その意味で強調しているのかもしれないが、視覚的にもサプライズとなっている。 いつもながら斜面を活かした演出のおかげであちこちが面白い。画面の奥まで人の群れが続いているし、頂上付近から敵がやってくるときにこの演出は極めて効果的だ。酒場で出来合いの保安官と悪党が対峙する場面も並々ならぬ緊迫感があ…

悲情城市

…が使われている。ぶっちゃけ中国語のバリエーションなんて聞き取れないんだけど、日本語だけは分かるので猥雑さはやや実感できる。外省人(在台の大陸出身中国人)を狩り出すときに日本語が分かるかどうかという方法が採られるシーンもある。 国民国家とは言語の問題なのだなと思うが、映画でよくここまで扱えたなと思った。 ロケで印象的なのは、あのどうも斜面に立ってるらしい歓楽街を、高い方から見下ろすように撮っているところ。斜面が複雑な奥になっている、という意味ではアンソニー・マンを連想したけど。