呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

婚期

2016.9.5鑑賞

  • 監督:吉村公三郎
  • 行き遅れた妹たちが、小姑として兄嫁と熾烈な嫌味合戦を繰り広げるホームドラマで、若尾文子高峰三枝子野添ひとみ京マチ子が丁々発止の会話劇を繰り広げる。
  • 造形性から言えば傑作。「歯医者で口を開いている人物のカットに、BGMとしてオペラを流す」ようなユーモアが印象的で、粘っこく被写体に張りつくようなショットも撮れるし、叩きつけるように瞬間的なショットも撮れる(卵が割れるとことか)、どちらもできる感じ。こういうの見ると増村にはストレートボールしか投げられないのが実感される。
  • 撮影は宮川一夫で、好き嫌いが分かれそう。自分は、宮川一夫の撮影がそんなに好きではないのかもしれない。すごいけど。
  • キャラクターが漫画的で跳ねまくってる。眼鏡をかけて兄嫁をいびる若尾文子もそうだし、男言葉が出る野添ひとみも可愛い。「うるせえババアはだまってろ」の衝撃たるや。北林谷栄演じる「ばあや」は漫画的完成度であまりにも作り物っぽく笑える。
  • 題材が「兄嫁をいびる三姉妹」というせいもあって下品さは避けられないし、衣装と美術の組み合わせとか、特に色合いとかは好きになれない。あの若尾文子の眼鏡と、緑の着物の相性は最悪だと思った。確かに若尾文子が行き遅れの眼鏡女性というかお局に見えるのだが、視覚的には見ていたくない組み合わせだ。
  • わざわざ女性の労働・身支度・間食をいくつも撮るし、かしましくしゃべらせ、風呂であくびさせ、だらしのない身振りを取り入れる。もちろん題材的に下品になるのは仕方がない。