呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

成瀬巳喜男 の検索結果:

あに いもうと

…7/25鑑賞 監督:成瀬巳喜男 これが映画史に残る兄妹喧嘩というやつか。それにしても面白かった。 妹のほうが寝転がって猪木アリ状態になるんだけど、それ以前もこの兄妹はどっちかが寝転がっていて、どっちかが立っているという場面がほとんどで……そういう所作や位置関係、視線の対比によって人間関係が即物的な意味で実際に目に見えるように演出されている……のでジャンルとしては「人間ドラマ」に分類されるんだろうけど、まるでアクション映画を見ているときのように面白い。 プロットのところどころに…

女の中にいる他人

…6/29鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の撮った人殺しの映画。 ぽつんと都市部の車道沿いを歩くスーツ姿の男がタバコをくわえると、カッティングインアクションでどこかのダイナーに飛んで環境音が消えるが、男はまったく同じように生気がない。つまり、外部環境が男になにも影響を与えておらず、この男が閉じ込められていることがわかる、かっこいいカットである。 前半と後半で気象条件がまったく違っていて、前半はずっと雨が降っている。後半はずっと晴れている。雨が降っているけど窓は開けられていて、つまり…

驟雨

…/2/6鑑賞 監督:成瀬巳喜男 『めし』同様、子供のいない倦怠期の夫婦(しかも貧しい)のながーい夫婦喧嘩を、近所付き合いなどを交えてドラマにしたという感じ。妻が原節子で、夫が佐野周二。タイトルは、途中で一度、突然の大雨が降って場面転換が起きるからか。 非常に透明な映画で、どこかが突出しているというわけでなく全体が調和して完成度が高い。流石、円熟期の成瀬巳喜男という感じ。 ただ、倦怠期にある夫婦のやりとりがリアルで辛いので、何でこんな嫌な話を見なきゃいけないんだ......と終…

乱れ雲

…3/26鑑賞 監督:成瀬巳喜男 成瀬の遺作。 『ひき逃げ』と同じく、交通事故がひとつのキーになっている。 葬式で司葉子と初めて会ったあと、出ていこうとする加山雄三に追いすがり睨み付ける司葉子。あるいは、夫との関係は続けられないということでカーテンを閉めてカメラを正面から見つめる浜美枝。単純なシンメトリーのクローズアップが異様に抽象的な場面であるかのように感じてしまうショットだ。 また、終盤で二人が乗るタクシーを見ていると、黒沢清が言ったように車中シーンって本当にヘンだなという…

ひき逃げ

…3/11鑑賞 監督:成瀬巳喜男 子供をひき逃げしたが、夫に説得されてその事実を隠蔽した女性(司葉子)と、それを暴くために家政婦として潜入する子供の母親(高峰秀子)の対決?を描いた映画。 高峰秀子が 酔っぱらって踊る場面での大きく揺れるカメラ。ジェットコースターからの主観ショット。自動車の行きかう道路を横断するという、ただそれだけなのに恐ろしいサスペンス。子供を橋やジェットコースターから落とす妄想。『女の中にいる他人』と共通したネガポジ反転。普通、成瀬がやるとは思われていないよ…