呉衣の映画トンネル

映画の感想(ネタバレ有)を置きます

リチャード・ジュエル

2018/9/15

  • 監督:クリント・イーストウッド
  • アトランタ五輪で警備員を務めるリチャード・ジュエルがベンチ下に置かれている爆弾を発見する。早期発見によって避難できた人間も多いが、それでも2人の死者と100人以上の負傷者を出す大惨事となった。この英雄的な行為で一躍ヒーローとなったリチャード・ジュエルだが、FBIが彼を容疑者として見ていることを報道した地元新聞紙の記事を皮切りに、マスコミの標的になってしまう。旧知の弁護士を頼って容疑を晴らそうとするリチャードだが、法執行官に憧れ権威に従順な彼はFBIに積極的に協力し、自らに不利な行動を幾度もとってしまうのだった。
  • 毀誉褒貶のある作品だけど、私は結構楽しめた。非常に地味な映画だが、職人技が振るわれている。
  • 序盤、リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)と弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)の交流が描かれており、好人物だが不審者っぽいリチャード・ジュエルと、不良弁護士のワトソン・ブライアントが職場のパーテーションやスニッカーズといった小道具で巧みに演出されている。
  • 家の中でも常に背中に「SECURITY」と書かれた制服を着ているリチャード・ジュエルが、ラストシーンで警察官の制服を着ている。ただそれだけで大きな変化を感じる。これぞ『15時17分、パリ行き』とも共通するイーストウッドのコスチュームプレイの妙だろう。
  • 女性記者の描写については、もしあの取材方法が事実と違うのであれば、批判も当然だと思った。イーストウッドの映画では割とはっきりと悪役が出てくるのでそんなに違和感はなかったが、実在の人物ともなればそうもいかないだろう。それほど時間の経っていない史実をネタにするから、そういう非難も受けるのだ。